前回は、70歳を過ぎてから普通二輪免許を取得した、ある男性ライダーの話を紹介しました。
今回紹介するのは、取材時、まだ15歳の女子高校生です。
当然、普通二輪免許はまだ持っていません。しかし、すでにバイクを購入していたのです!
「本気出せば、バイク買えるんじゃない?」
彼女がバイクに興味を持ったのは、中学生のころでした。
なんとなくバイクのことを検索しているうちに目に留まったのが、アメリカンタイプのバイク。低く構えた車体、大きなエンジン、堂々としたスタイル。そのカッコよさに気づいてしまったのだそうです。
高校入学後、アルバイトを始めた彼女は、ふと思いました。
「アルバイトで本気出せば、バイクが買えるんじゃない?」
そこから彼女のハートに火がつきました。高校入学後、二つの飲食店のアルバイトを掛け持ち。学校へ通いながら働いて、お金を貯める。
数カ月かけて用意した頭金は、50万円。
社会人にとっても50万円は大きなお金。まして、働ける時間も、もらえる給料も限られている高校生です。いったい何時間働いたのだろう? どれだけ欲しいものを我慢したのだろう?
免許より先に、バイクを買った
お金を貯めた彼女が購入したのはホンダ・シャドウ クラシック400。
愛知県内のレッドバロンを巡り、運命の一台と出会いました。
ただし、この時点で彼女は15歳。まだ普通二輪免許を取得できる年齢ではありません。
(教習所によっては、卒業検定時に16歳以上となることを条件に、15歳から入校できる場合もあります。チャレンジしたい人は、近隣の教習所にお問い合わせください)
つまり、買ってもすぐに乗れません。それでも、先に愛車を手に入れました。
「まだ運転したことないけど、最高に満足しています!」
ピカピカに磨かれた愛車の横で笑う彼女を見ていると、本当に嬉しいんだろうな、とこちらまで笑顔になりました。
そして、ここで思い出したのが、前回紹介した70代の男性です。彼もまた、普通二輪免許を取得する前にバイクを購入していました。半世紀以上も年齢が離れた二人が、まったく同じことをしていたのです。
「免許を取れたら、バイクを買おう」ではなく、先にバイクを買う。
「いつか乗れたらいいな」ではなく、
「このバイクに乗るんだ!」
と。
夢は、もっと大きなバイクへ
さて、彼女には、シャドウのさらに先に、もう一台憧れているバイクがあります。
ホンダ・ワルキューレ。水平対向6気筒エンジンを搭載した、ホンダが誇る大型クルーザー。

「大型二輪免許を取ったら乗りたい!」
そう話してくれました。
まだ普通二輪免許も持っていない15歳が、その先の大型二輪免許まで見据えている。
彼女なら、18歳になったらすぐに達成してしまうのではないかと感じました。
「もう遅い」も「まだ早い」も関係ない

前回紹介した男性は、70歳を過ぎてから普通二輪免許に挑戦しました。
今回紹介した15歳の高校生は、普通二輪免許を取れる年齢になる前から、自分のバイクを手に入れました。
一人は「もう遅い」と言われてもおかしくない年齢。
もう一人は「まだ早い」と言われてもおかしくない年齢。
でも、二人には共通していることがあります。「バイクに乗りたい!」と思ったあと、自らすぐに動いたことです。
70代の男性は、教習を受け入れてくれる場所を探し続けました。
15歳の高校生は、学校へ通いながら二つのアルバイトを掛け持ちし、50万円を貯めました。
そして二人とも、免許より先にバイクを手に入れました。
年齢はまったく違います。それでも二人を取材していると、好きなことに向かって動き出す人の表情は、どこか似ているように感じます。
周りが「もう遅い」と言うのか。
「まだ早い」と言うのか。
そんなことより、自分はどうしたいのか。結局、人生においてそこが一番大切なことなのだと思います。
取材の最後に「バイクに乗って人生が変わりましたか?」という質問をしました。
彼女は、こう答えました。
「まだ乗ってないけど、もうすでに変わりました! 毎日、幸せな気持ちでいられます。そして『バイクのために』って考えると、なんでもガマンはできるようになりましたね」
彼女のバイクライフは、走り出す前から始まっていたのです。
今ごろ、彼女はもうシャドウに乗って走り始めていることでしょう。
そして、いつの日か。
憧れのワルキューレに乗る日が来たら――そのときは、また、彼女に話を聞いてみたいと思います。
