絶版車を末永く乗り続け、後世に語り継ぐ。そのためにレッドバロンは、生産終了したパーツをリビルドする、独自の『加修』技術を磨き続けている。職人技と呼ぶべき数々の加修技術を紹介していきたい。

そもそも『加修』とは? 貴重な絶版パーツを復活させるのが目的

メーカー基準に沿って、パーツを修理&再生することをレッドバロンでは『加修』と呼んでいる。

一般的に車両メーカーのパーツ在庫義務は、生産終了からわずか約7年。走行に必要な部品が手に入らず、愛車に乗り続けられなくなる可能性がある。そこでレッドバロンは、35年以上前から部品供給不足に対応すべく、リサイクルパーツを収集する専属部署を開設。バイクを解体し、広大なストックヤードを備える、大規模な本社工場を2002年に設立した。

潤沢に中古パーツを確保するには、貴重な部品のストック量を減らさない循環サイクルが必要。そこでレッドバロンは本社工場で「加修」を施すことによって、入手困難な純正パーツをストックしているのだ。

レッドバロンでは最長3年間の純正パーツ供給を含む中古車の品質保証制度『5つ星品質』を導入し、優良な中古車を販売しているが、これも本社工場のリサイクルパーツ収集、そして加修技術があってこそなのだ。

↑レッドバロンではほぼ全ての中古車に安心の証である『5つ星品質』を認定。「パーツ保証」をはじめ、「アシダム検査済」「フレーム安全検査済」「リコール未実施がない」「自社工場にて整備」の5条件をクリアしている。写真のようにステッカーはフレームなどに貼付。

 

加修技術は本社工場内の各技術部門が、“職人ワザ”と呼ぶべき高度な技術を蓄積して確立。設備には109億円もの莫大な投資を行い、絶版車の好調さを維持している。中でも加修技術はパーツ供給システムの根幹であり、最も大事な要素。それゆえに本社工場は単なる倉庫ではなく、“工場”と呼ばれている。

加修は、ユーザーにとって修理費を抑えられるメリットもある。例えば、近年は部品に破損があると複数の部品で構成されたアッセンブリーを丸ごと新品に交換するため、高額な部品代が掛かってしまう。しかし、この加修技術があれば、一部修理で済むのでコストダウンも可能だ。

↑愛知県岡崎市にあるレッドバロン本社工場。ユーザーのバイクライフを守るため、パーツをストック・加修・保管しているモノづくりの拠点だ。

↑本社工場の大部分を占めるパーツパレット。3700機種以上、60万点超のパーツを納めている。

1パレット丸ごと全て1車種のパーツで満たし、「ノアの箱舟」のように見本となるノーマル車まで保管するのが特徴だ。車種はZ2やCB750Fなどの超メジャー旧車から、マイナー車、外国車まで多種多彩。

【エンジン】高度な設備と独自工具で難しい修理にも対応できる

第9工場と呼ばれる「エンジンオーバーホール専門工場」では、オーバーホールのほか難しい整備と修理を行う。エンジンはまさにバイクの心臓部にして要の部分。それだけにプロフェッショナルなスタッフが集っている。

車種は旧車から最新のスーパースポーツまで、排気量も大小を問わず、全国の店舗からエンジンが運び込まれてくる。店舗でもエンジンの修理は可能だが、効率やスピードを重視して、本社工場が担当。店舗で一度リフトに載せてしまうと修理が終わるまでリフトから下ろせなくなり、他の整備ができなくなってしまうため、本社工場にエンジン専門部署を設けている。

エンジンオーバーホール専門工場には、1/1000mm単位で加工可能なマシニングセンターを備え、磨耗や歪みが生じたシリンダーヘッド、シリンダーブロックなどの研磨が可能。ボーリングによってシリンダー内径の真円度と真直度を高めることができる。

さらにバルブシートカットも可能。低中回転域ばかり使っているとカーボンが溜まって圧縮不良を起こすが、これを除去できる。これらの設備によって、旧車にありがちなエンジン不調を解消できるのだ。

万が一、修理費用が高額になる場合は、必ず事前にユーザーと相談し、同社でストックしているエンジンへの載せ替えなどを含めて最適なプランを考慮してくれる。

↑こちらはバルブシートカッター。バルブシートカットとバルブ研磨によって、シリンダーの気密性を回復させる。エンジンの好不調に大きく影響し、特に旧車で必須の作業だ。常に一定の修理依頼があるという。

↑吸排気バルブの研磨は、適正なクリアランスやセンター出しなどデリケートな作業が必要。失敗すると圧縮不良や異音の原因になるため、とりわけ慎重に品質を管理している(写真右が修正後)。

↑シリンダー単体にまで分解してバルブクリアランスを調整。本来のパワーを取り戻し、焼き付きなどのトラブルが発生しにくくなる。

↑こちらではクランクシャフトの組み付け中。エンジン内部の精度を左右するため非常に難しい作業で、特殊工具と高い技術が必要。失敗すると異音や振動、エンジン破損につながるが、本社工場なら安心だ。

↑欠損した空冷シリンダーフィンもアルゴン溶接で美しく再生。高度な設備と技術が活きる。

↑取材当日は様々な新旧エンジンをオーバーホール中だった。その中にCBR1000RR-Rの直列4気筒も。ホンダの技術の粋を集めた最強エンジンも修理可能だ。

↑組み上げたエンジンをチェックするテスター。マフラーを逆転させているのがユニークだ。

↑詳しくはお見せできないが、効率的に作業を行うために独自開発した特殊工具がズラリ。

↑9000機ものリビルド用エンジンをストック。古今東西、多種多彩なエンジンが収納され、修理に活用される。

【キャブレター】欠損部分をリビルド、摩耗部品はオリジナル品を作製して対応

現在の燃料供給システムは、電子制御のFI(フューエルインジェクション)が主流。一方、1990年代までのバイクは空気吸入によって生じる負圧で燃料を噴射するキャブレターが使用されているが、今では不具合が生じても調整や修理ができるショップが激減している。

一部が破損した場合、アッセンブリー丸ごと交換となるのが一般的だが、現在はキャブ自体が入手困難。また、一般的に交換用の純正部品は存在しない。しかしながらレッドバロンなら破損部分を加修して再生できるのだ。

特に吸入空気量を調整するバタフライバルブが偏摩耗しやすく、すき間ができると始動性が悪くなったり、回転の落ちが悪くなったりというエンジン不調の原因になる。レッドバロンは独自にバルブを作製。素材を摩耗しやすいアルミから頑丈な真鍮に置き換えるケースもある。

↑負圧を利用して混合気を作り、霧吹きのようにエンジンの燃焼室に送り込む装置がキャブレター。本社工場には見学用に数々の加修済みキャブレターが並んでいた。

↑バタフライバルブが摩耗するのは キャブの宿命。車種ごとに口径が異なるため、修理依頼の多いモデルはあらかじめ作製してストックしてある。

↑破損しやすい樹脂製の燃料吸入口を金属製に作り替え、耐久性をアップ。

↑壊れやすい不具合品を改良するなどオリジナル品も製作する。

↑写真はカタナ250用。スターターバイパスパイプをリビルドし、壊れにくい構造に変更。純正より耐久性を上げている(左側)。

↑着脱時に折れやすいのがフロートピンの支柱。まずは折れた部分の根元を平坦に加工し、ネジ穴を開ける。続いて、独自の支柱パーツを打ち込んで再生している。写真のキャブはXJR400用。

↑交換後は気密性が保持できているか点検。ライトですきまをチェックするほか、微差圧計で測定し、密閉されているか調べる。

 

※次回では「サス、シート、電装系」について紹介。乞うご期待!

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