’21年末、東京都が「総合的な駐車対策のあり方(案)」について都民に意見(パブリックコメント)を募集した。クルマ中心からヒト中心へとシフトする2040年代に向け、人が歩きやすい街づくりを実現するための様々な取り組みについて、駐車対策という視点から施策案をまとめ、意見を求めたのだ。前編に引き続き、都内バイク駐車環境の現状と、東京都の街づくり計画案の中でバイクの駐車環境がどのように考えられているのかについて紹介する。

●文:ヤングマシン編集部(田中淳磨)

東京都の柔軟な駐車対策に期待!

まずはバイク駐車対策の現状について。都内では、届出駐車場*の増加、自転車等駐車場への自動二輪車の受け入れ増加(江東区は条例改正を実施)により、自動二輪車の駐車台数は増加傾向にある(図3)。また、歩道橋の下のデッドスペースを活用するなど、地区ごとの交通実態に応じた自動二輪車限定の規制緩和施策も各所で実施されている。自動二輪車駐車場の附置義務条例(商業施設等の規模により駐車施設の設置を義務付け)を定めている区市町村は都内にはないが、まちづくり計画等の中で独自に整備を進めている自治体もある。しかし、駅前や繁華街を中心に一定量の路上駐車は依然として発生しているのが現状だ(図1/図2)。自工会が’20年に実施した「二輪車駐車場の利用ニーズに関する調査」でも、都内の6割以上のユーザーは依然として「駐車場所にとても不満を感じている」状況であり、抜本的な対策が求められている。(* 都市計画区域内で自動車の駐車面積が500㎡以上で有料のもの)

【図1:自動二輪車の路上駐車分布】警視庁の資料を元に東京都が作成した、東京都心部での自動二輪車および原付バイクの路上駐車分布図。色の濃いところが路上駐車の多い場所で、渋谷/新宿/池袋などの駅前や繁華街での路上駐車が目立つ。新宿は都庁のある西口よりも歌舞伎町など大きな繁華街のある東口に集中していることがわかる。1㎢あたりのバイク保有台数が東京都でもっとも多い板橋区でも、大山駅周辺で色が濃くなっている。※「総合的な駐車対策のあり方」18/19ページより引用(東京都/’22年3月)。以下同

【図2:自動二輪車/原動機付自転車の路上駐車台数(都内)】警視庁の資料を基に東京都が作成。年々減少傾向にある。なお、上の数字にはパーキングチケットでの合法駐車も含まれている。

【図3:東京都における自動二輪車駐車場の整備状況】原付一種の登録台数減少を鑑みて図2と比べると、停められない状況に保有が耐えきれない状況か。

地区ごとのニーズに応じ拡充

本案では、足りていないバイク用駐車場に対して、その課題を「自動二輪車や原付バイクのニーズに応じた拡充が求められる」と捉えている。闇雲に駐車場を増やすのではなく、自転車や新たな電動モビリティも含めて、ニーズや利用実態を考慮した上で駐車スペースの確保に柔軟に取り組む姿勢だ。また、自動二輪車の駐車需要が高い地区では、区市による附置義務条例の制定によるバイク駐車場確保も推進する意向。前編でも紹介したように、路上(公有地)の活用拡大のほか、地区ごとという括りで交通実態に合った駐車対策を実施していく方針だ。

(1)駐車対策の対象施設の拡大
・カーブサイドなど車道空間の活用
・車道/歩道など路上活用の拡大
(2)稼働率の低い四輪駐車場の転用
・四輪用駐車スペースをバイク用に
(3)区市による地域ルール策定の促進
・四輪附置義務台数の緩和、駐車施設集約によるバイク用スペースの整備
(4)DX推進/MaaS**活用
・満空情報の発信やオンライン予約/決済等
(5)法制度の改正など検討
・新たなモビリティの駐車検討
(6)地区マネジメントの実施
・既存施設の運営、活用/維持/管理

** MaaS=Mobility as a Service:ICT(情報通信技術)を活用して交通をクラウド化し、公共交通か否か、またその運営主体にかかわらず、自家用車以外のすべての交通手段による移動をひとつのサービスとして捉えてシームレスに繋ぐ、新たな『移動』の概念。(Wikipediaより)

本案では、ZEV(ゼロエミッションビークル)や多様な電動モビリティを活用するための駐車対策案もいろいろと提示されている。危険物に該当するガソリンを使う内燃機関よりは安全性が高いと言われる電動バイクについては、路上の公有地のほか、既存の地下/立体駐車場へのインセンティブ(優先駐車)などもぜひ検討してほしい。

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