矢部高校の二輪車競技部がMCショーに登壇!

3月24日(金)、第50回東京モーターサイクルショーのアトリウムで行われたステージイベント「高校生の交通安全教育ステージ」に熊本県立矢部高等学校の二輪車競技部が登壇し、同校が取り組むバイクの安全運転教育や二輪車競技部の活動、今後の展開について紹介した。

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登壇したのは、二輪車競技部の部長で2年生の堂上千颯(どうのうえ ちはや)さんと1年生部員の靏田涼月(つるた りょうが)さん。来場者や多くの二輪業界関係者が見守るなか、2人はステージに投影したスライドや動画を交えながら説明した。

統廃合で変わる高校生の通学環境

▲二輪車競技部の部長で2年生の堂上千颯(どうのうえ ちはや)さん。愛車はヤマハYZF-R25だ


まず、2人が説明したのは高校生の通学環境の変化について。少子化のなか学区の撤廃や統合が進んで通学範囲が拡大し、公共交通機関が不便な地域では通学距離が片道10km以上に及ぶ生徒もいる。保護者によるマイカー送迎に頼らざるをえないなど、高校生の通学にかかる負担が小さくないことを伝えた。

一方で、バイク通学が可能な矢部高校では、通学時間の短縮や定期券などの通学費用を節約でき、高校生活において時間的、精神的なゆとりができていることをメリットに挙げた。

1年生の靏田さんも自身の通学費用について「バス通学なんですが毎月2万円くらい、通学時間も40~50分ほどかかっていて…」と大変な状況を説明すると共に、先月、原付一種の学科試験に合格したことを笑顔で報告した。

▲二輪車競技部で1年生の靏田涼月(つるた りょうが)さん。「バイク通学をする先輩の姿を見ていて、いいなと思っていました。原付免許を取ったので2年生からは自分の好きな時間で通学できます」


バイク通学が実現すればバス等の公共交通機関に比べて大幅に通学費用が安く済むし、自分の時間で登校、帰宅できるようになる。介護や出勤などで忙しい保護者にとってもマイカー送迎がなくなれば心身の負担をやわらげることができるだろう。

矢部高校の交通安全教育方針とは?

現在の社会生活において交通ルールや安全運転技術を身につけおくことは必要不可欠だ。矢部高校では「免許を取らせない指導では交通社会に適応できない」と考え、原付バイクに積極的に「乗せて指導」する方針を取っている。

さらに「交通教育は全人教育につながる」という考え方から、学校行事の中にも交通安全教育やバイクの運転講習に関するものが取り入れられている。

免許取得者向けの運転講習会やバイク通学への安全運転啓発に関する登校指導、体育祭のように各クラスで運転技術を競う原付クラスマッチなども開催し、安全運転の習得と運転技術の向上に取り組んでいる。

また、矢部高校では、長年に渡って培われてきた安全運転活動への信頼から地域の警察協力のもと原付一種免許の学科試験と免許証の交付が学校内で行われるという他に類を見ない仕組みが作られている。

矢部高校では競技部のメンバーが他の生徒に運転指導をするなど、生徒間での自主自立スタイルによる交通安全教育が確立している。競技部での日々の練習が他の生徒の交通安全にも貢献しているのだ。

二輪車競技部は地域の交通安全リーダー!

二輪車競技部の部員には、バイクの安全運転における他の生徒の模範となることだけでなく、地域の交通安全リーダーを目指すことが求められている。部員は、二輪車競技大会に向けた日々の練習や学内での指導活動だけでなく、救急救命講習の受講やゴミ拾いなどの地域ボランティアも行っている。

▲動画で披露された練習風景。堂上さんは2022年10月に開催された熊本県二輪車安全運転大会で優勝! 大型・中型・原付クラスで社会人を破って優勝した!


なんて書くと部員にとって大変なことばかりのように聞こえてしまうが、競技部による阿蘇周辺への日帰りツーリングのほか、部員になれば自動二輪車(50cc超)の免許取得も許可されるなど、日々のバイクライフをより充実したものとして楽しむこともできる。

▲矢部高校の練習場で8の字走行をする堂上さん ※2022年8月に筆者撮影

二輪車競技部の活動が他校にも展開!?

次年度に予定されている新たな活動としては、熊本県内の近隣他校への支援活動が発表された。熊本県では矢部高校の他にもバイク通学を許可している高校が数多くあり、ほとんどの高校は警察等の協力のもと教習所などで年1回程度の安全運転講習会を開催している。

しかし、山都町の近隣自治体にある高校の先生から「講習会が終わるとすぐにスピードを出して帰っていく生徒がいる。地域住民から学校に苦情が入っている」ことについて二輪車競技部に相談があり、原付講習会へのサポートを部の活動として行うことになったのだ。

生徒が生徒に教えることで、受講生徒の心に等身大の安全運転意識を芽生えさせ、バイクの運転に必要なスキルや運転の危険性などについて自分事として認識してもらうのが狙いだ。こうした取り組みが根付いていけば、模範ライダーの育成や指導者の養成にもつながっていくだろう。

▲日本二輪車普及安全協会のブースにてMCを担当した梅本まどかさんと。


安全運転指導員の不足や高齢化は一部の都市部を除き、日本全国で課題となっている。矢部高校のこうした取り組みが県内全域に広がって、さらには九州、全国へと拡大していけば、教育現場の大きな課題を改善し、教育環境にも良い影響を与えていくだろう。今後の矢部高校と二輪車競技部の活動に期待したい。

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