自分でバイクのメンテナンスを行なったり、DIYを趣味とする人であれば、一度は経験したことがあるはずの「ネジをナメる」という失敗。無理にそのまま回そうとするとさらにナメてしまい、最悪の場合緩めることさえできなくなることもある。そんなときのために、バイクメンテナンス系ユーチューバー・DIY道楽テツ氏が「特殊工具がなくてもできる、ナメたネジの応急処置」方法を解説する。

●文:ヤングマシン編集部(DIY道楽テツ)

【YouTubeクリエイター:DIY道楽テツ】バイク雑誌の編集に携わったのち、20年以上の溶接の経験を活かしてDIYに勤しむYouTubeクリエイター。「バイクを元気にしたい!」というコンセプトで定期的に動画を配信している。最近では徒歩旅に目覚めたという。’76年生まれの2児の父。

ネジを”ナメる”という危機的状況…。誰しもが一度は通る道

バイクのメンテナンスやDIYの経験のある人なら、一度は「ナメる」をやってしまったことがあるのではないでしょうか?(舌でベロベロ舐めるのではありません。念のため) ネジの頭のへこみ(プラスやマイナス、はたまた六角など)が壊れてしまって、ドライバーやスパナが利かなくなってしまうことを言います。

ちなみに、なぜ「ナメる」と表現するのでしょうか? その答えを探してみると諸説あるようですが、昔の人が「かむ(噛む)」の対義語として選んだという話が有力なようです。

話を戻しましょう。

ネジをナメてしまう要因はいくつかあり、たとえばドライバーのサイズが適合していなかったり、回す際の押し付ける力が足りなかったりすると、想定外の負荷が掛かってネジ頭の金属が歪んでしまいます。正しい道具選びをしたり、正しい使い方を学んだりと日頃から心がけていたとしても、そこはやっぱり人間ですから、ちょっとしたはずみで「ヌルッ」っとやっちゃったりするわけです。

ハンドツールを使っているかぎり、1回ナメただけで完全にネジがダメになってしまうことは滅多にありません。しかし掛けられる力=トルクが著しく低下するので、ネジを回すことが困難になり、そこで焦ってしまうとさらに悪化。最悪の場合、ネジを外すことができなくなってしまうことがあります。

ナメてしまったらあせらず落ち着いて”応急処置”を

そこで今回は、ナメかけたネジをそのまま回そうとするのではなくて、きちんとトルクをかけられるようにネジ穴を応急処置する方法をシェアしたいと思います。あくまでその場しのぎではありますが、成功率は個人的に8割以上。それでは、早速やってみましょう!!

ここにナメかけたボルトがあります。元々こうだったのではなくて、今まさに私が小さいドライバーで焦って回そうとして、「グニャッ」とやっちゃいました…。すいません、私が犯人です。

健全なネジ頭と並べてみるとその状態は一目瞭然。プラス型の溝がめくれあがってしまって、このままだと思うように力を掛けることができません。もうこうなったら”完全にナメてしまう一歩手前”です。とても危険な状態ですね…。

左が普通のネジ、右がナメてしまったネジです。なかなか厳しい状況に見えますが、この状態ならまだ応急処置が間に合います!
このまま焦って回そうとして完全にナメてしまう前に、ここはひとつ、コーヒーでも飲んで心を落ち着けて、きちんとボルトに真正面から向き合い、ビシッとカッコよく外してみたいと思います。

用意するのは「先端が丸まった丈夫な丸棒」

使うのは何でもいいのですが、今回は手持ちの10mmのT型レンチ…の柄の部分を使います。本来の工具の使用法からは外れてしまうため、ホントはこのように使うのはご法度なのですが、緊急事態ということでご了承ください。

言い訳させてもらうと、この形状がネジ穴修正にぴったりなんですよ。丸棒で、ボルトくらいの太さがあって、先端は真っ平よりも少し丸みがあるのが理想。このT型レンチの取っ手部分は、まさにこのためと言ってもいいような形状をしているんです。そういうわけで、使わせてもらいます(言い訳、おわり)!

ホントはご法度ですが…この形状が今回の応急処置のために作ったかのようにぴったりなのです!

実際の作業はカンタン。ネジ頭を狙って…叩く!

丸棒の先端を、めくれあがっているネジ頭にそっと当てまして…。ねじの頭が平らになるまで、お尻をハンマーで叩きます! 力加減はちょっと強いくらいでOK。弱いと狙った位置からズレてしまうので、勢いをつけてカンカン叩いちゃってください。

そうすると、めくれ上がってしまった金属が内側に押し込まれて、ちょっと潰れたような状態になります。もし部分的にめくれが残っている場合は、今度はその部分だけ狙って、またカンカンと叩いてやってください。

ハンマーで叩いていくと、めくれ上がっていたネジ頭が押し込まれてある程度元に戻り、ドライバーが噛み合いやすくなります。

最後の仕上げとして、ネジのサイズに適合するドライバーをネジ頭に当て、お尻をハンマーで叩き込んでしっかり噛み合わせます。理想はもちろん貫通ドライバー、またはショックドライバーを使うことですが、もし手元になくてもあくまで緊急事態ということで、通常のドライバーでもなんとかなったりします。

これで、ねじ頭がおおむねドライバーに合った形状になったはずです。あとは普段通りにきちんとトルクを掛けてネジを回しましょう。ちなみに、ここまでの工程でネジ頭はガンガンコンコンと叩かれているため、ほとんどの場合ボルトの固着が緩んでおり、意外とすんなり回ってしまうと思います。

ハンマーを使ってドライバーをしっかり叩き込み、ていねいにトルクを掛けて回していきます。貫通ドライバーを使うとハンマーを叩き込む力が直接伝わるので、より強く噛み合わせることができます。

もしここまでやってもネジがビクともしない場合は、無理に回そうとせずに、ネジ回し剤の手配やショックドライバーの用意など、次の手段を考えたほうが無難です。また、あくまで応急処置なので、修正したボルトは外した後は必ず新品に交換するようにしてくださいね。

というわけで、応急処置完了! 今回はこのまま外すことができました!

動画解説はこちら↓

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