中編までのあらすじ>
VTR250に「チョークレバーが動かない」というトラブル。レッドバロン狛江に見てもらったら、チョークバルブ(スターターバルブ)の中でサビているのだろうという見立て。廃番だったチョークケーブルも、レッドバロンのパーツ保証制度のおかげでリパーツ(再生パーツ)が手に入って一安心。分解したらやっぱり原因はバルブ内のサビだった。

だがしかし、ここで問題発生! バルブ内のプランジャーが固着してキャブレターから抜けないのだ!? マイガッ! ど~するよ、どうなっちゃうのよ、コレ!?

最大の試練!? 固着したプランジャーを抜け!

プランジャーはガッツリ固着していた。ピックツールで引っ掛けて抜こうとしてもダメだった。細川工場長はキャブコンディショナーを吹き入れてみたが、うんともすんとも動かない。
次に試したのは、お湯の中に浸けてみるという作戦。しばらくそのままにしておいて、またキャブコンディショナーを吹き入れて、かき出そうと試みる。これを何度か繰り返したが、マジで強烈に固着していて抜けない。血圧上がってきた…。
細川工場長はついに最終手段とも言えるドリリング(穴あけ加工)を決断した。悩んだ末の決断というのではなく、あれこれ工程通りに試してきて、いよいよドリリングに行きついた感じ。ドリリングとは、完全にナメてしまったり途中で折れてしまったボルトを抜く時のアレである。
プランジャーのお尻にドリルを突っ込んで下穴を開け、次に逆タップをボルトに噛みこませて、タップを回して外すのだ。まずは、ちゅいーん…。
きゅりきゅり…。
すぽんっ!きらーん!!
この作戦は見事に成功! バルブポートからプランジャーを摘出することができた。ドリリングは特殊作業ということで別料金(税抜2,250円)がかかってしまったが、そんなこと言ってる場合ではない! マジで助かったよ~。

キャブレターをオーバーホールして、一気に組み上げ!

難関を突破した後は、内部洗浄などキャブレターのオーバーホールをしてもらう。フロートの劣化はなく、ニードルも正常、ポート内にワニスなどのこびりつきも少ない。全てのジェット類はしばらく漬け置き洗浄してもらった。
ここからは細川工場長がフィルムを巻き戻すかのように猛烈なスピードでキャブレターを組み上げていく。注文しておいたガスケット類やフューエルホースなども新品に交換されていく。
キャブレターが組みあがると、続いてすぐに車体への装着が始まる。テキパキしていて迷いがない。「頭にサービスマニュアル入ってるのかな?」なんて思いながら見させてもらった。
チョークケーブルも無事に接続され、次はタンクかなと思っていたところで、キャブレターから伸びているフューエルホースに何やら怪しげなホースがジョイントされた。ぬっと覗き込んでいたら…。
「あ、これガソリンです」

と疑問に答えてもらうやいなや、キュルドルルンとエンジンはすこぶる良い音で始動した。チョーク機能も問題なく使えることを確認。いやぁ、チョークレバーを使ってのエンジン始動、久々に見たわぁ(冬場は毎回押しがけしていた)。
自分でメンテ中に無くしていたタンクの固定ボルトも注文していたので装着。久々に左右で揃った。うんうん、やっぱりこうでなくちゃね。
どうでもいい所で満足して、にんまりしている間に車体は組みあがっていた。

一杯いっとけ! ついでにオイル交換も実施

次は、待ってましたのオイル交換だ。せっかくオイルリザーブシステムに加入しているんだから、こういう時にはやっておかないとね。しっかしまぁ、速いこと速いこと! トレーに古いオイルを流してると思ったら次の瞬間にはオイルガンであっという間に新しいオイルが流し込まれていた。この間、5分かかってないと思う。
オイルガン、1回やってみたいわ~。絶対楽しいやつ。

キレイなキャブで「レッツゴーACIDM(アシダム)!」

オイル交換もしてリフレッシュできたVTR250を今度はコンピュータ総合診断機ACIDM(アシダム)へと移動する。キャブレターのオーバーホールとオイル交換をやったのだ。エンジンの状態を見るにはアシダムでのパワーチェックが一番! ローラーの上に固定されたVTR250のエンジンを始動し、1速ギヤから徐々に6速ギヤへ。スロットルを全開にするから、マフラーからは普段は聞けないような轟音が鳴り響く。んごーーーーっ!!
ACIDMによるパワーチェックもあっという間に終わった。パワーカーブを見る限り、エンジンは問題なく絶好調! 結果を出力した紙はもらえるので、保存しておけるのも嬉しいね。

第三者による完成検査で、抜かりのない整備

話しの流れで飛ばしていたが、実はキャブレターを装着した時点で、他のサービスマンによる第三者チェックが行われていた。「細川工場長は大ベテランなのに下の子(伊東さん)がやるんだ…」なんて、つい思ったけど、よく考えたらそりゃそうだよな、でないと第三者チェックにならないわなと納得。

また、バイクが自分に引き渡される直前にも、さらに別のサービスマン(長田(おさだ)さん)による完成検査が行われた。各部のボルトの締め具合やケーブルの取り回し、保安部品の作動など細かな所もチェックされている。
工場長はサービスマンの現場トップだけど、その工場長が行った作業を下のサービスマンが点検するということは、実はとても重要なんじゃないかな。ベテランからの学びの場でもあるし、自身のチェック能力が試される場でもあるよな、なんてちょっと考えた。

いずれにせよ、レッドバロンでは完成検査は必ず2人体制で行うというルールがあるそうで、それは工場長が作業した車両でも同じだ。いやぁ、まかせたほうからすると、ほんと安心だよね。

チョークレバー復活! 完璧な仕上がりに大満足!!

すっかり直ったよー! チョークレバーが引けるようになったので、冬場のエンジン始動もこれで安心。もう押しがけをすることはあるまい…。リパーツのチョークケーブルはさすがに純正品! ケーブルの取り回しも新車時同様に美しい。
今回の修理では、オイル交換(オイルリザーブシステムに加入しているのでオイル代はかからず0円)とACIDMでのパワーチェック(税込5,500円)を含めて合計44,340円(税込)がかかったけど、20年以上前のバイクがこんなに快調かつ安心して乗れるなら安いものだよ。

現代のバイクは電子制御化が進み、燃料噴射系もインジェクションが主流となっている。それ自体は便利で良いことだが、一方でキャブレターのオーバーホールや修理ができない販売店やサービスマンも増えていると聞く。そんな中でレッドバロンの修理技術は、想像以上のクオリティだったし、レッドバロンの中古車はやっぱり安心だった! もう手に入らない廃番部品もパーツ保証制度のおかげでキレイなリパーツを供給してもらえた。ほんと、古いバイクはケーブル1本が手に入らないだけで乗れなくなっちゃうからね。快調なバイクにまたがって「走り続けられる」ありがたみを噛みしめながら家路に着いたのだった。

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