バイク雑誌のインプレッションはもちろん、趣味でも未舗装林道やオフロードコースを走ることが多い僕。そんな時に困るのがタイヤの空気圧調整だ。みなさん知っての通り、バイクにはバイクメーカーが推奨する“車両指定空気圧”というものがあり、一人乗りで走る場合と、二人乗りや高速道路で走る場合に“前後タイヤの空気圧はこの値にしてくださいね”という数値が決まっている。
オフロード走行など空気圧調整に便利なレシン『スマートポンプ P5』
ただ、この車両指定空気圧の数値はあくまで条件のいい舗装路を走る場合に限った話。ジャリなど路面状況のよくない未舗装路を走る場合は話がずいぶん違ってくる。凸凹があり、滑りやすい未舗装路を走るには、規定の空気圧だとタイヤが硬すぎて路面にグリップしにくくスリップを誘発。要は車両指定空気圧だと不安定で走りにくいのだ。
どうして未舗装路を走る場合にタイヤの空気圧を落とした方がいいのか? その答えは“滑らなくなるから”だ。つまり、タイヤの空気を抜いてより柔らかく変形するようになれば段差などでショックを受けた時にもボヨンと変形してショックを逃すようになる。またタイヤが変形しながら路面に押し付けられることでグリップ力もアップして安定化。空気圧が高い時に比べていきなりズリっと滑るようなことが少なくなるのだ。
では実際、オフロード走行ではどれくらいまで空気圧を下げればいいのか? これはあくまで僕の場合だけど、チューブタイヤのオフロードバイクで未舗装路の林道に入る際には、まず前後の空気圧を1.5kgf/cm2(147.1kPa)くらいにする。それで走ってみて“ちょっと砂利が深めでグリップが足りないな……”なんて場合には前後の空気圧を1.2kgf/cm2(117.68kPa)くらいまで落とす。さらに“ヌタヌタのマディや深砂利でとにかく滑る……”なんて場合には1.0kgf/cm2(98.06kPa)とか、0.8kgf/cm2(78.45kPa)まで下げることもある。ただ、これはあくまでビードストッパーを入れた250ccのオフロードバイクの話で、最近のアドベンチャーバイクによくあるチューブレスタイヤのオフロードタイヤの場合は、空気圧を下げすぎてビードが落ちてしまったらめんどくさいことになるので1.0kgf/cm2までにしているって感じだ。
まぁ、空気圧に関しての数値は体重や乗り方によっても変わるところだけど、下げれば下げるほど路面へのタイヤのグリップは良くなるのは事実。コレは、凸凹の大きなオフロードタイヤはもちろんだけど、ロードタイヤでダートセクションを走らなければいけない場合も有効なので、「どうしてもロードバイクでダートを走らなければいけない状況になった!!」なんて時のために覚えておくといいだろう。
ただ空気圧を下げすぎた状態(僕の感覚だと1kgf/cm2以下)で速度を出したときに運悪く、大きな水切りの段差や岩などにガツンッとハイスピードで突っ込むと、リムを打って歪んだり、パンクのリスクが高まるのでどこまで空気圧を下げるかは自己責任ってことでよろしく!
そんなわけでダートセクションを楽しく走るために空気圧を落とすわけだが、困るのはダートセクションが終わった時だ。0.8kgf/cm2など極端に低い状態で舗装路を走ると……、まぁ“抜けている”つもりでソロソロと走る分にはそれほど心配ないのだが、うっかり空気圧を大きく下げている状態でいつものような速度でコーナーへ侵入すると大変なことになる。応力に負けてタイヤがグニャリと腰砕け、一瞬で転倒することになる。なので林道走行後は必ず規定値まで空気圧を上げてやる必要があるのだ。
一昔前は小さな手動ポンプで汗水たらしながら空気を入れていたんだけど、近年は色々なメーカーからモバイルタイプの電動エアポンプなるものが登場。僕は仕事柄アドベンチャーバイクの試乗インプレッションで空気圧を下げる機会が多く、“コレは便利!”とノーブランド品を月1〜2回くらいの頻度で使っていたのだが、3年もするとイマイチバッテリーのもちが悪くなり、劣化でエア漏れしているのかエアの入りも悪くなってきた……。そんな買い替え時に知ったのが5000mAhという大きなバッテリー容量を持つ LEXIN(レシン)の『Smart Pump P5』の存在だ。
エア入れが体感3倍早い!? レシン『スマートポンプ P5』
実際に使ってみてびっくりしたのがレシン『Smart Pump P5』の空気を送り込むスピードだ。感覚的に僕がこれまで使っていたヤレ気味の電動エアポンプの3倍早い印象。オフロードバイクの21インチフロントタイヤの場合、5秒数える間に0.1kgf/cm2ずつ空気圧が上がっていくのだ。
正直コレまで使っていた電動エアポンプの場合は、作動させたらしばらく放置。手持ち無沙汰の時間に着替えたり、別の作業をしたりして時間を潰していたんだけど、レシン『Smart Pump P5』なら、エアが入れ終わるまで放置するヒマがないくらいの速度ですぐに空気が入っていく。これにはちょっとびっくりしてしまった。
またバッテリー容量も5000mAhと一般的な携帯用電動エアポンプに比べるとかなり多く、旅先で電力残量を気にせず気になった時にバンバン空気圧調整できるのがいい。
その一方でちょっと残念だったのは空気圧の数値を見ながら空気を抜く機能がないこと。エア抜きのボタンがあれば、空気圧を下げるときにも数値を確認しながら抜けて便利なのだが、空気を抜く機能がないので一度エアを多めに抜いて空気を入れながら好みの空気圧に調整するという作業が必要になる。ただこれも販売元によれば、なんと『Smart Pump P5』はチューブレスタイヤのビードが上がるくらいの高い空気圧がかけられるとのこと(なんと最大10.5kgf/cm2!)。エア抜きのボタンなどの追加機能は高圧縮やコンパクトさとのトレードオフになるなら致し方なしといったところ。
レシンの『Smart Pump P5』を実際に使ってみた感想としては、とにかくオフロード走行後の空気調整の時間を短縮したいというライダーや、バッテリー容量の大きくて使用回数に余裕がある電動エアポンプを探していたという方にぜひオススメしたいところ。特に既存の電動エアポンプを使っていて、なかなか空気圧が上がらずストレスを感じているせっかちなライダーは、まずこの『Smart Pump P5』を試してみて欲しい。
LEXIN Smart Pump P5
●価格:1万980円(税込)
●バッテリー容量:5000mAh ●バッテリーパワー:18.5Wh/7.4V ●本体サイズ: 162.5×68×38mm ●重量:500g ●Input:USB-C(5V/2A) ●Output:USB-A(5V/2A) ●吐出し空気量:30L/min ●最高圧力:カスタムモードにて150psi(10.5kgf/cm2) ●作業温度:−10〜45℃