バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回は、バイクの灯火類で最近主流になりつつある電装系の『LED』。読み方はそのままエル・イー・ディーだ。

そもそも『LED』とは?

CRF250Lのヘッドライト

2020年にフルモデルチェンジして『LED』のヘッドライトを手に入れたCRF250L。

 

近年、家庭内の照明器具としても普及しつつある『LED』。正式には、Light-Emitting Diodeで頭文字を略して 『LED』。日本語にすると発光ダイオードとなる。

バイクの世界では、カスタムパーツのウインカーなどでいち早く導入が進んでいたものの、保安基準の厳しいヘッドライトへの導入が本格化したのは2014年あたりから。

ホンダでは、2014年のCB400/1300SUPERBOLD'OR、NM4、ゴールドウイングF6C、 PCXシリーズといった機種のモデルチェンジに合わせて『LED』ヘッドライトを順次導入。以後、ブランニューモデルに関しては、各社ともヘッドライトの『LED』化を推し進めている。

 

H4ハロゲンバルブ

従来タイプのハロゲンバルブ。内部にハロゲンガスが充填されており、通常の電球よりは長寿命を実現した。それでも約1000時間と『LED』の10分の1の寿命となっている。

 

2022年現在。ブランニューモデルに関しては、ヘッドライトの『LED』化は商品性を高めるためには必須となった感がある。理由としては、「法規制に対応する光量を確保しやすい」、「小型軽量」、「デザインの自由度が高い」といった利点があり、新型車なのに『LED』ヘッドライトでないとちょっと見劣りするような状況になっているのだ。

ただ面白いのは、ヘッドライト、ウインカー、ストップランンプなどの主要な光源は 『LED』化しているのに、ナンバー灯だけ電球を使うモデルが意外に多いということだろう。

 

CRF250Lのテールランプ

新型のCRF250L/ラリーは、ヘッドライトもウインカーはもちろん、ナンバー灯も『LED』だが、なぜかテールランプだけはバルブを使用している。

 

『LED』のここがスゴイ!

物理的な球切れがない!

『LED』の利点はいろいろあるが、やはりこれが一番の特徴である。これまでバイクのヘッドライトの光源として主流だったH4タイプのハロゲン電球は、一般的な白熱電球同様、発光体となる細い針金状のフィラメントが必要。このフィラメントが熱や振動などの外的要素を受けたり、電球そのものの寿命を迎えると切れてしまう。いわゆる電球の“球切れ”を起こすのだ。

内部にハロゲンガスが封入されたハロゲン電球は、一般的な白熱電球よりも小型化が可能で、寿命も長いため、長年バイクのヘッドライト用光源として採用されてきた。…とは言っても消耗品。2万km、3万kmと走っていればいつかは球切れするものだ。

LEDチップ

黄色い部分がLEDのチップ。青色LEDが発色し、黄色の蛍光体の中を通過。青色の光と黄色の混色効果により白色に発光する。

ヘッドライト内部のLED基板

ヘッドライト内部に基板があり、そこでLEDのチップが発光している。

 

筆者の経験を言わせてもらえれば、補給部品のガソリンやタイヤは別として、不具合を起こす交換消耗品というと、一昔前は、まずバッテリー。次いでヘッドライトなどの電球かチェーン、ケーブル・ワイヤー類といった感じのイメージがあった。それがどうだろう?  電球じゃない『LED』ならフィラメントがないので物理的に“球切れ”が起こりようがない。

どれくらい使えるのかというと、まだ『LED』のモデルに乗っていて不具合を体感できていないので僕自身の印象としてはまだ不明。ヘッドランプメーカーによれば、寿命は10000時間以上で、ハロゲンバルブの10倍以上の長寿命を実現しているとのことだ。

CRF250Lの技術説明

長寿命とともに、ヘッドライトユニットを小型軽量化できるのも『LED』の特徴。図版はホンダのCRF250Lで2020年のモデルチェンジでヘッドライトを『LED』化し小顔化。先代比でユニットが-110gの610gとなり、前後も42㎜薄い116㎜となった。

 

家電用の『LED』照明同様、長期間の使用によって若干光量が落ちてくるなんてことはあるだろうが、基盤が壊れないかぎり発光し続けるのが 『LED』。旅先で“球切れ”して、「夜間走行中に真っ暗になった!」、「昼間で“球切れ”に気づかず、警察に止められた…」なんてことがないのが『LED』というわけだ。

ハロゲンバルブ切れの応急処置

『LED』が普及すれば、「夜間走行中、H4のロー側の電球が切れたのに気づいて、ハイビームで走っていたのはいいが、迷惑なのでヘッドライトの上部をガムテープで塞いで走った…」なんて応急処置の逸話は完全に過去のものになるだろう。

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