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行き先は子供まかせ、小一時間のショートトリップ
関東甲信が梅雨入りして一週間、ライダーにとってはストレスの溜まる日々が続いている。そんな中、この日曜は朝のうちに雨が止む予報が出ており、子供(19歳女)とバイクで走りに行くことにした。
娘が普通二輪免許を取ったのは昨年の夏休み、高校3年生の時だった。私にとっては予想外の行動で、それまでタンデムで出かけたり「バイクに乗りなよ」などと言ったことはなかったのだ。同級生の影響とも考えられないので、バイク雑誌の編集長をしていた私の責任であるのは明白。免許を取った以上はとにかく事故らないようにせねばと、一緒に走るようにしている。
最初のツーリングは、千葉県いすみ市に住む友人のランツァを借りて「勝浦タンタンメン」を食べに行ったのが始まりだが、公道を走るのも初なら2ストに乗るのも初。何度もエンストしながら無事にランツァを返却できた時の安堵感といったらなかった。
それから約10ヶ月。娘にはバイク仲間もできて、今ではあちこち好き勝手に走り回っている。なので、今回のツーリングでは、“調子に乗ってないか”を見極めたいというのも目的のひとつ。このことは内緒にしつつ行き先を聞いたら、相模原の「オギノパンに行こう!」となった。私の住む江東区から約1時間、娘の脱初心者ぶりも分かるだろう。
西に向かうにつれ晴天に!初夏のツーリングを満喫
オギノパンへは、首都高→中央道→圏央道という西へ向かうルート。東に流れる雨雲の動きと逆に向かうので晴れることは分かっていたが、実際青空が見えてくるとテンションが高まる。路面も完全に乾いてくれて、次第に暑さも感じられようになると完全に初夏のツーリング日和になった。
首都高は、環状線が最初の難関。この時はまだ路面も濡れていたので、娘には慎重に走るようにインカムで伝えたが、特に問題なく環状線から4号線に接続。中央道に入ると徐々にペースが上がる。そのきっかけとなったのは、ZX-25Rに追い越されたこと。同じ4気筒で対抗心があるのか、しばらく25Rを追いかけることになった。自分にもそんな頃があったので、苦笑せざるを得なかった。
そんな25Rとは、ETCゲートで離されてさよならをすると、圏央道から相模原インターへ。降りて10分ほどで「オギノパン」にあっさりと到着した。なんとそこはライダーだらけで、みんな宮ヶ瀬湖や道志みちへの道すがらに寄るのだとか。オススメの「あげぱん」は、神奈川フードバトルinあつぎで2年連続の金賞受賞というB級グルメの雄。他にも直売店で気になったものを買って宮ヶ瀬湖へ向かった。
あげぱんの味はまさに給食の味。ライダーに愛されるご当地グルメ
して、あげぱんのお味は、給食のなつかしい味と、揚げたて&新鮮なコッペパンによるもちもち感がやみつきになりそうな食感だ。ぱっと寄ってすぐ買える、その場で食べてすぐ出かけられるツーリンググルメとして、ライダーの間で定着するのは当然だろうなと思った。例えるなら第三京浜保土ケ谷パーキングエリアの「じゃがベーくん」(古い!)といえば分かりやすいだろうか? 叶うならまた食べたい。
だが、私らはその場で食べずに宮ヶ瀬湖の道の駅に向かい、湖畔で食べることしていた。少しワインディングを走りたかったのと、コーヒーを入れて朝食にするためだ。道の駅にもたくさんのライダーが集まっていて、すれ違うライダーたちはかなりの割合でヤエーをしてくれた。
素晴らしい天気と景色、焼きたてのパンとコーヒー。なんだろう、この幸せな空間は。真のデジタルネイティブであるZ世代の娘にとっても、バイクを通じて得られる開放感を特別なものと捉えているのがよく分かる。そして、この感覚を共有している者同士の“ヤエー”は、初心者がバイクをより好きになるきっかけとなるはずだ。
乗るというのなら、乗り方を覚えさせるしかない
余談になるが、子供がバイクに乗りたいと言ってきた時にどうするべきだろうか? 私は迷わず反対した。だが、本気で乗ろうという子供を止めることはできないのも、自分の経験で分かる。だから結局は認めるしかない、というのが実際のところだ。
以前、『ヤングマシン』でケニー・ロバーツ氏にインタビューした時、氏は「まずはバイクという乗り物の基本的な概念を学ぶべきだ。標識がどうとかは、後回しでいい。乗り方をキッチリ理解してから、公道に出るべきだと思う」と語っていた。この教えは私のなかで強く印象に残っていた。子供がバイクの免許を取った以上は乗り方を教えるしかないと思い、私なりに実践してきたのだ。
最初のランツァからもうすぐ1年。オフロードやサーキット走行も経て、今回のツーリングで娘が初心者を脱しつつある様子が見て取れた。だが、これからも色々な角度から乗り方を理解できる機会を用意したいと考えている。