北海道には本土の端っこがふたつあります。ひとつは最北端の宗谷岬。そしてもうひとつが最東端の納沙布(のさっぷ)岬。
ライダーというものは端っこが好きな生き物。筆者もそのうちの一人なので、いつかは必ず行きたい場所として意識していました。

そして2022年8月、クロスカブで出かけた北海道ツーリング。目的地は…念願の本土最東端の地、納沙布岬です!
前回の記事では釧路からスタートし、道東の街、厚岸(あっけし)町のセイコーマートにて一番人気のカツ丼をいただきました。

霧多布で海沿いを走る

北海道にはアイヌ語由来の地名がたくさんあります。霧多布(きりたっぷ)もその一つで、「茅・を刈る・ところ」という意味を持ち、きりたっぷと読みます。
かつては「きーたっぷ」と呼ばれていたため漢字は後付けのようですが、実際に霧が多い地域。ダブルミーニングなのかもしれませんね。

東へと向けて別海厚岸線・北太平洋シーサイドラインを走ると、潮と霧で少し霞んだ幻想的な景色が続きました。
左側の草原では馬が群れを作って走る様子が、右側の海沿いでは砂利の干場で昆布を干す人々の姿が見られ、昔から続いてきたこの地の日常を少しだけ覗き見ることができたような気がします。
道路には矢印の標識が続いています。夏の今はまったく想像ができないけれど、きっと冬は雪で覆われるのでしょう。

途中の琵琶瀬展望台では霧多布湿原を一望できます。

私たちにとって湿原は珍しく貴重なものですが、住民の方たちにとっては(大切でありつつも)生活の中の一部なんですね。明確な境目がなく湿原の中に浜中町の街が広がっていく様子は、外の人間から見ると不思議な光景でした。

ルパン三世の故郷に寄り道

浜中町はルパン三世の作者、モンキー・パンチ先生のふるさと。つまり、ルパン三世の故郷と言っても良いのではないでしょうか。
町内には『ルパン三世通り』という観光地があり、入り口では漁師の服を着たルパンが出迎えてくれました。


通りには次元がオーナー(?)のバーがあります。


が、こちらのお店、実際は営業していないダミー店舗。
「設定上」と言ったら怒られるかもしれませんが、次元はルパンが起こした事件に巻き込まれてお店を一時休業していました。

もしも次元のバーが本当に存在したなら、世界各地から集めたボトルが並ぶ大人の隠れ家的なお店なのでしょうね。

すぐ近くには不二子ちゃんのパブも発見!
こちらは「ルパン以外お断り」というコメントと共にシャッターが閉まっていました。

期間限定でもいいので、いつか本当にオープンしてくれたら嬉しいのに…!

周辺には他にも居酒屋五ェ門、霧多布坐(映画館)などの仮想店舗や、浜中町総合文化センターでのモンキー・パンチ・コレクションの展示があったりとルパン三世だらけ!
浜中町内でしか手に入らないオリジナルアイテムやお土産品の販売もあるそうで、ファンにはたまらないスポットでした。

フレシマ湿原で見る “ありのままの北海道”

根室市内に入ると、野鳥に関連するスポットが多くなってきました。
筆者が立ち寄ったのは、太平洋沿いに位置するフレシマ湿原。日本野鳥の会が保有する野鳥保護区のひとつです。

道中は3km近くも未舗装路が続きます。見晴らしはあまり良いとは言えず、スマホの電波も圏外。
たまにチラッと見える原っぱではエゾシカが草を食べていて、人間の気配がまったく感じられません。進むごとにどんどん心細くなっていきました。

実を言うとクロスカブのタイヤの溝がかなり減っていたので、「コケてなるものか!」と緊張の走行でもありました。

10分ちょっと走ったころでしょうか。左右の木々がなくなって急に視界が開けたと思ったら、目の前には湿原が広がっていました。

真ん中に1本の道が通っているだけで、あとは手つかずの土地。おそらく何百年も前からほとんど変わらない北海道のありのままの風景なのでしょう。
季節違いということもあってこの日は見かけませんでしたが、フレシマ湿原では1970年代からタンチョウが繁殖しているのだそう。よく見ると草むらの中には小さな鳥たちが羽を休めていました。

ここまで広大な原っぱは本州ではなかなか見かけません。足を踏み入れてみたいという気持ちがないと言えば嘘になりますが、外部の人間の侵入によって環境が変わり、草木や動物が病気になってしまう可能性は大いにあります。
砂利道の上から目を細めて景色を堪能するにとどまりました。あぁ、双眼鏡でも持って来ればよかったなぁ!

ついに到着 納沙布岬!

雲行きが怪しくなってきましたが、引き続き納沙布岬を目指して走ります。
途中の道道35号線では日本最東端のコンビニエンスストア、セイコーマートうちやま歯舞(はぼまい)店で買い物をしたり…


本土最東端の酒屋、板垣商店でオリジナル『本土最東端ガラナ』を購入したりと東の果てを堪能しました。

ちなみにガラナとはコーラに似た甘い炭酸飲料で、北海道ではコンビニやスーパーなどどこでも手に入ります。
もともとは1950年代、コカ・コーラに対抗して全国で製造・販売していたところ、北海道だけに根付いたんだとか。いろんなメーカーがオリジナルで作っているので、飲み比べるのも面白いローカルドリンクです。


そして15時。なんとか雨が降る前に本土最東端の地、納沙布岬に到着できました!
筆者と同じく “端っこ” を求めて走ってきた人が多いのでしょうか。それまでほとんど観光客を見かけなかったにもかかわらず、駐車場にはたくさんの車やバイクが停まっていることに驚かされました。

写真には写っていませんが、右側には10台ほどのバイクが停まっているのです。



目の前に広がる海の向こうにはうっすらと島のようなものが見えます。
これらは北方領土、歯舞群島の島々。第二次世界大戦末期の1945年から70年以上が経つ2022年現在でも、ロシアとの間で領土問題が残っている場所です。

その影響でしょうか。宗谷岬(本土最北端)や大間崎(本州最北端)のようなお祭り感はありません。
展示物やモニュメントも平和をテーマにしたものが多く、厳かな雰囲気を感じました。

最東端で心を盗まれちゃった!

人々の願いがこもった数々のモニュメントを前に、筆者も自然と祈るような心持ちになっていたところ…
「ニャーン」という声と共にどこからともなく現れたのは、白黒のネコちゃんでした。夫の足に身体を擦りつけて甘えたあと、ついて来いというばかりに歩いていきます。

「一体なにがあるんだろう?」

到着したのは、お土産物屋さんの玄関。ちょうどご飯の時間だったらしく、ご主人がお皿を持ってお店から出てきました。

ネコちゃんは夢中でキャットフードを頬張ったあと、用事は済んだとばかりに散歩へ行ってしまいます。
取り残された筆者は、そのままの流れで店内に入ってお土産やTシャツなどを購入。最東端の記念品を手に入れました。

あとから観察してみたところ、ネコちゃんはたびたびお店と駐車場を往復してお客さんを店に誘い込んでいるようです。

さては納沙布イチの凄腕営業マンに違いありません。
日本の東の果てで、ルパン三世ではなくまさかのネコちゃんに心を盗まれてしまったのでした。


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