埼玉県から延々と国道4号を北上し、「昭和レトロ」を巡るツーリングに出発した筆者。三つ目の目的地は栃木県大田原市にあるオートパーラーだ。妖しい自販機がたくさんあって味わい深い!

昭和40年代! 年季が入った看板がお出迎え

さびれた雰囲気がタマラナイ。タバコで煤けた室内に、時代を感じさせる看板、パチスロ機、そしてアダルトな自動販売機の数々。

――国道4号沿いにある「ゲーム24SAITO石上店」(栃木県大田原市上石上1765-2)は、なんとも昭和レトロ感が濃い。

この辺の国道4号はバイパス風ではなく、片側1車線でややひっそりとしている。「ゲーム24SAITO石上店」の周囲は緑に囲まれ、道に沿うように立地しているので国道4号からダイレクトにアクセス可能だ。

↑「ゲーム24SAITO石上店」。店の前のスペースにクルマ2台ぐらい停められそう。営業時間は、無人なので恐らく24時間営業と思われるが、HPや連絡先もわからないので詳細は不明。


屋根はキレイだけど、建物はいかにも古めかしい。その雰囲気を盛り上げているのが、外にある昭和な看板だ。

↑昭和40年(1965年)に生まれたオロナミンC。このホーロー看板は昔よく見たが、今となっては珍しい。「元気ハツラツ!」で一世を風靡した大村崑さんと「天才バカボン」のコラボで、よく見るとフタが王冠になっている。バカボンのアニメが昭和46年(1971年)~47年(1972年)放映らしいので、その頃のブツか?

↑ハイアースが登場したのが昭和45年(1970年)。昭和34年(1959年)に「黒い花びら」で第1回日本レコード大賞歌手の水原弘さんがイメージキャラクターだ。昭和40年代後半に製作された模様。

 

↑たばこの看板もナツカシイ。一方で、信号機(?)やド派手なガラス窓の配色がエキセントリックだ。

内部に潜入、アダルトグッズと乾パンをなぜ混ぜる!?

まずは店の右側から見ていこう。ここは妙に細く、何もない。以前は自販機が置かれていたのかもしれない。

↑建物の右側ブロック。中に何もないが、このアルミサッシがいい。手前は「レトロ自販機カップヌードル」ののぼりだ。

 

↑さらに進むとこんな感じ。全体的に細長いが、中央は広くなっている。手前は自販機スペースで、机といすがある。


飲料やカップヌードル自販機に並んで、アダルトグッズの自販機がある。
どういう並びなんだと思いながらよく見てみると、アダルトグッズ自販機ではコンドームやローションに混じってなぜか一緒に「乾パン」が売られている。もちろん乾いたパンツではなく、保存食の方なのは言うまでもない。個人的にはあまり「食」(しょく)と「色」(しょく)を混ぜてほしくないのだが……。

それにしても静かだ。
お客さんが一人いて、店内中央部にあるスロットゲームを回す音が妙に響く。かなりアツくなっておられる様子で、ヨシ! アァ! という声が店内にこだまする。

↑カップヌードル自販機。ノーマルじゃなくて、「あっさりタイプ」で200円という強気の価格設定。その左隣はアダルトグッズ販売機だ。

 

↑「ワクワクグッズ」「おもしろグッズ」(各1000円)。色々とヤバい。

 

↑おもしろグッズの下に乾パンの缶(500円)。なぜなんだ・・・・・・。

銀色の自販機にまつわる甘じょっぱい思い出

さらに隣は……出たぁ~、ビニ本自販機!
要はエロ本の自動販売機だ。一応説明しておくと、銀色のミラーフィルムで昼間は中が見えないようになっていて、夜になると内部からの灯りで何が売っているかわかるという仕組み。
昭和の世ではあちこちにあった代物で、1990年代もまだ生息していたけど、徐々に姿を消していった。
ちなみに「ビニ本」は、本屋で中身を見られないようにビニールを被せたエロ本の意。自販機のエロ本はビニ本とは少し違う気もするが、懐かしいので「ビニ本自販機」と呼ばせてもらいたい。

↑昼は銀色、夜はピンクになるものってな~んだ? その存在自体が何ともほの暗いオーラを放っている。左側にはアダルトな衣装の自販機も。


ミラーの中を必死に覗いたけど(不審者)、全く見えない。せっかくなので一冊買おうと思ったけど、昼間は販売しておらず夜になるまで待つ必要があるようだ……。残念。

筆者にとってビニ本自販機は思い出深い。
昭和58年(1983年)、中学1年生の夏の夜だった。ド田舎でエロ本をゲットするには、友人がどこからか調達してきたブツをもらうか、道端に捨ててあるエロ本を幸運にも拾うぐらいしか選択肢がない。

そんな中学生でも簡単に買える唯一の抜け道がビニ本自販機だった。深夜1時、親が寝静まった頃を見計らって家を抜け出し、チャリで20分の距離を駆け抜けた。真っ暗闇の中、田んぼ沿いにぽつんと明かりの灯るビニ本自販機まで買いに行ったのだ。
当時の私にとって物凄い冒険だった。自販機にお金を挿入する瞬間、手が震えていた。そして、本が出る「ガコンッ」という音が防犯ブザーのようにうるさく感じたものだ。

帰り道、Tシャツの中にビニ本を隠しながらチャリを漕いだ。帰り道が永遠と思えるほど長かった。汗をかいた肌にビニールが貼り付く感覚と、火照った顔を撫でる夜風が今も記憶に残っている(スンマセン、この段落は創作が入っています笑)。

価格は確か500円だったと思う。中身はまったく覚えていないが、「損したなぁ!」という記憶だけはある。間もなく、道端の林にそっと置いて、幸運な誰かに拾ってもらうことにした。「大人は信じちゃいけない」と子供心に思ったものだ(笑)。

いろいろとカオスながら、トイレは完備

追憶の1980年代から現代に戻ってきた。
広くなっている中央部には前述のとおりスロットゲーム機が9台。トイレや電源の入っていないアーケードゲーム機、使われていない自販機などが置いてある。

↑今も現役の演歌歌手、美桜かな子さんのポスター(サインもアリ)。昭和ではないけど、色あせて貫禄たっぷり。

 

↑トイレ。万一に備え、きちんと非常口を完備している!? いかにも民家の鏡台もイイ。

 

↑壁にかかったボードは昔あったクレー射撃ゲームの名残り。あちこちに扇風機があるが、冷房はないようだ。

 

↑中央の目立つ位置にスロット機。私以外にいる唯一のお客さんが熱中していた。「ナニワ金融道」のマンガも置いてある。

 

↑使われていない自販機も数台置いてある。手書きのアドバイスがかわいい。ガラスに愛車が映っているのは偶然。


そして左は休憩スペースと“生きた”自販機がある。たばこの自販機かと思って、よく見たらコンドームの自販機だった。全体的にアダルト系の商品が妙に充実しているが、様々な事情でネット通販を使えない人にとって、こうした店は未だに貴重なのかもしれない。

↑「0.02mm」はもちろんニコチン含有量ではない。

 

↑古いタバコの看板がまた昭和感あり(そしてまたもや美桜かな子推し)。昭和ではみんな吸っていた気がするタバコも、今では少数派になってしまった。

 

↑ところが、休憩スペースではタバコ吸い放題! 昭和だぁ! というか、この建物自体が少しヤニ臭いのだ。

後日オーナーとの接触に成功!

今まで訪れたオートパーラーにも、どこか投げやりなカンジやうらぶれた雰囲気があったが、その度合いがダントツだった。ただ、昔はトラック運転手などで栄えていたのかもしれない。
崩れ落ちそうなガケの際ギリギリというか、果物が熟れて腐りきる一歩手前で必死に踏み止まっているようなカンジとでも言おうか・・・・・・。しかし、この何でもアリで自由な溜まり場感(廃墟一歩手前感?)は、自分としては非常に味わい深かった。いい意味で気分がザラつくし、'80年代にタイムスリップできるのがイイ。この辺をツーリングした際は休憩がてら、ぜひ見物してほしい(ビニ本買うなら夜に行こう!)

――後日。壁に貼ってあった「連絡先」に電話をかけてみた。オーナーさんの連絡先では? と思ったからだ。予想は的中しており、少しお話を伺うことができた。

オーナーさんは、チャキチャキして優しい声の女性だ。
まず営業時間は、やはり24時間だった。
そして開業したのは「45年前か46年前」という。1976年か1977年(昭和51年か52年)に、旦那さんと二人で店を始めた。その直後、息子さんが生まれたとのこと。
当時は高速道路が宇都宮までしかなく、コンビニもなかったので、北へ抜ける大動脈の国道4号沿いに建つお店は大いに繁盛したそうだ。

「今はあんなになっちゃってるけど、昔はそば&うどんの自動販売機もあったんですよ」とオーナーさん。「あんな」という自覚はしっかりあったんですね、という非常に失礼なツッコミを抑えつつ、話を訊く。

「最近またレトロだなんだって、そば&うどんの自販機が流行ってるみたいだけど、あれ凄くメンテナンスに手間がかかるの。遠心力っていうんですか、回してお湯を切るから手入れが大変で。特に暑い時期はすぐ中にカビが生えちゃうの。主人も亡くなったし、手入れができないんでやめたんです」とのことだ。

実はもう一店舗オートパーラーがあるのだという。
「3.11の東日本大震災で建物が壊れて、ほとんど鉄骨だけになってしまったんです。少しだけ営業していますけど」とのこと。

最後に「また行きます、末永く続けてください」と言ったら、笑いながら「もうちょっとやってみたいと思っています」と答えてくれた。

(その四に続く!!!)

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