二輪媒体に関わる仕事柄、北海道はツーリング取材やニューモデルの試乗会などで何度となく走っているものの、自走での北海道ツーリングとなると約30年ぶりとなる筆者。ヤマハのトレーサー9 GT+Y-AMTを相棒に北上し、青森ー函館航路のフェリーにすんなり乗れてしまったのはいいのだが、随分時間に余裕ができてしまった。そこで思いついたのが30年前のお礼参りツーリングだ。
ごく個人的な話に付き合わせてしまって申し訳ないのだが、30年前に行なった北海道ツーリングの最後の最後、函館まであともう少しというところでバイクが故障。当時からレッドバロン会員だった僕はレッドバロン函館にロードサービスをお願いすることでなんとか旅を続けることができた……なんてことがあった。

まずはお世話になったレッドバロン函館に立ち寄る。お店の場所は当時からは移転しているそうだが、旅人に優しいのは相変わらず。突然の訪問にもかかわらず、スタッフや店長が丁寧に対応してくれた。
いつだかForRに書いた記事を要約すれば、大沼から時計回りに海沿いを南下。南東に突き出た亀田半島を恵山経由で函館を目指す途中。波打ち際の洞門をいくつか越えたところでプラグに雨水が回ってエンジンストール。3ヶ月分の荷物を積んだ重たいSRXを押してなんとか次の集落までたどり着いて、「YAMAHA」のロゴを掲げたお店を見つけるもバイクではなくマリンの方でがっかり。当時の僕は携帯電話なんてものは持っておらず、見つけた公衆電話からレッドバロン函館に連絡してロードサービスでの引き上げをお願いしたのだ。
レース競技のように明確な勝ち負けの概念がないツーリングだが、唯一“負け”があるとすれば事故やマシントラブルによる旅の続行断念や途中リタイヤがそれだ。事故やケガによるリタイヤよりははるかに状況はマシではあるが、“自分の不注意でマシンを壊して旅を断念する”ことは負けも大負け。まぁ、幸いレッドバロンのロードサービスのおかげで整備が受けられそのまま旅を続けることができたものの、それでも相当悔しい思いをした。わずかな距離とはいえ自分で走ってない区間があり、それがずっと心残りだったのだ。
今回、ようやくリベンジの機会を得たというわけだが、さっそくレッドバロン函館から国道278号線で恵山(えさん)方面へ走り出す。さすがにどこでバイクが故障したのかまでは正確には覚えていないものの、最悪、274号線と道々635号線の分岐点まで40kmほどの区間を往復すれば、間違いなく30年前の空白区間を走り切ったことになる。

レッドバロン函館で見つけた『北海道ツーリングキャンペーン2025』のポスター。レッドバロンでは8月31日まで北海道を旅するレッドバロン会員を対象にキャンペーンを実施中。道内13拠点での整備&ロードサービスはもちろん、帯広と稚内のバイクステーションを7月1日から9月30日まで営業したりして北海道ツーリングを走るライダーをバックアップしている。このキャンペーンに応募するとオリジナルのステッカーがもらえるぞ!
“波打ち際のいくつかの洞門”、“小さな集落”、“「YAMAHA」看板”、“公衆電話”……といった断片的な記憶を頼りに海沿いの国道278号線を進む。ただ面白いもので走っていると目の前の景色と記憶の中の景色がところどころで合焦しはじめる。
それらしい国道沿いの公衆電話に、海にへばりつくような集落、さらに進めば何本もの洞門が続く区間も見つけた。ツーリングマップルで位置を確認してみればエンコしたのはどうやらこのあたりで間違いない。状況を整理すれば“日浦洞門(旧道)あたりでバイクのエンジンが止まり”、“戸井の集落で「YAMAHA」の看板に絶望し”、“さらに進んだ先の公衆電話でロードサービスを呼んだ”……という流れ。折り返して立地を確認しながら戸井の集落へ旧道をたどってみれば……

「YAMAHA」のロゴを掲げた看板を発見! 当時と同じ店なのかはもやは確認するすべがないが、重いバイクを押しながら「YAMAHA」の看板を見つけた時には九死に一生を得た気分だった。
ようやく、長年刺さり続けていた小さなトゲが抜けた。30年前の北海道ツーリングを完結させることができたのだ。ただ今回、改めて足跡をたどってみてびっくりしたのは当時の僕がバイクを押して歩いた距離だ。日浦洞門から「YAMAHA」の看板のある集落まで約5km。そこから公衆電話までさらに6kmもあるから合計11km。さすがに公衆電話関しては、30年前にはもう少し数があったと思うので別の場所かもしれないが、それにしても荷物満載のバイクを押して少なくとも5、6kmは歩いていることになる。30年前の僕は僕なりに頑張っており、努力した末のロードサービス要請だったようだ。
しかも、今回逆ルートで辿ってみて分かったのだが、公衆電話から先は次の集落への巻道で、かなり長い上り坂が続く。“いい判断だったと思うよ”と、ロードサービスを待つ30年前の僕に声をかけてやりたくなった。

バイクを押して歩いた道はこんなかんじの海っぺリ。寒空の下、肘にかけたヘルメットがなんだか重かったのを覚えている。
さて、お次はやっぱり以前もお世話になった函館のライダーハウス「ライムライト」へ。予約した際、「宿泊費はガレージなしなら1泊1500円、ガレージ付きなら500円プラスで2000円ですがどうします?」なんて電話口で言われて即決できなかったのだが、いったいどういうことなのか? 今から楽しみでしょうがない。では、みなさんも良い旅を!!
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その① 青森ー函館間のフェリーは行き当たりばったりで乗れんのか?
その② 海鮮物が揃う函館朝市で旬のスルメイカを堪能!
その③ 30年前の空白区間を埋めに行く