ツーリングライダーにとって憧れの聖地のひとつ、長野県の「ビーナスライン」でボランティア活動や地域活性化に取り組む「SKY ROAD OF VENUS(略称:SROV)」という組織がある。ビーナスラインの人気スポット、エアコンのブランド名でも知られる霧ヶ峰(きりがみね)に移り住んだ山田裕作さんにお話を伺った。
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ビーナスラインの来訪者が減っている?
田中:最盛期に比べて、ビーナスラインへの来訪者が減っているというのは本当ですか?
山田:2012年に関越自動車道で高速ツアーバス居眠り事故がありました。その対策として法改正があり、ワンマンバスだと夜間で400km、昼間で500kmという規制が入りました。それ以上の距離を走るには交代の運転手が必要になり、出発地にもよりますが都内からビーナスラインに来ることが難しくなりました。また、2019年には霧ヶ峰インターチェンジの最大施設であったドライブイン霧ヶ峰の運営業者さんが撤退されました。こうした中で、僕らも「何かしないといけない」とクラブ活動を始めて、山間部の方々にも後押しを頂いているのが現状です。
「みんなとつながりたい」とSROVを設立
田中:霧ヶ峰インターチェンジの売店に勤めている山田さんがクラブを作ったんですよね?
山田:僕がツイッターで霧ヶ峰のリアルタイム情報をツイートするようになって、フォロワーさんや仲間が増えました。バイクのミーティングの相談も受けましたし、そうした中で「もっとみんなとつながれないかな」と思ったんです。全国から来訪頂いたライダーと地元のライダーで一緒に走るとか…。ビーナスラインを訪れるライダーが増えて、沿線の地域活性化につながってくれれば嬉しいなと。
それで、仲の良い地元(諏訪市)のライダー3人と2019年5月にSROVを立ち上げました。みんな、僕の想いに共感してくれたんです。その年の8月には下桑原牧野農業協同組合と霧ヶ峰商業会の協力のもと霧ヶ峰インターチェンジの駐車場にバイク専用の区画を作って頂きました。
アンケートで見えたビーナスライン
山田:手始めにと、約400人のライダーにビーナスラインについてのアンケートを取りました。良い所は「景色がキレイ」「空気が澄んでいる」「四季を感じられる」など、悪い所はやっぱり「道の悪さ」が大多数で、その次が「来訪者のマナー」でした。道の悪さは、ビーナスラインが無料化(全線は2002年から)してからダンプやトラックの通行量が増えたことの影響もあるようです。
マナーに関しては、写真愛好家に多くて、カーブの途中でクルマやバイクが停まってるとか…。来訪者に安全運転を啓発していきたいというのもクラブの願いです。また、来訪回数を聞いた回答では「初めて~5回」が多かったので、もっとリピーターを増やしたいですね。
田中:北海道や阿蘇に並ぶ、ツーリングの聖地ですよね。
山田:出会ったライダーの声やモトブログなんかを見ていても「念願の… ビーナス!」という言葉を聞きます。でも、一回きりではなく何度でも来てもらいたいんです。沿線の食事処やガソリンスタンドなどを利用してもらえれば地域活性化にもつながります。そうすることで、地元の方がもっとライダーに目を向けてくれて、ライダーにフレンドリーなビーナスラインに変えていけるんじゃないかと思うんです。
沿線自治体からの関心も高めたい
田中:そういえば、聖地と言われますけど、沿線の自治体からはライダーへの関心はあまり感じませんね。
山田:霧ヶ峰は諏訪市に位置します。市は霧ヶ峰を観光地としては捉えていますが、諏訪湖周辺に住んでいる大多数の市民の関心はとても低いんです。諏訪大社、上諏訪温泉、御柱祭といった観光資源があるので「諏訪湖があれば客が来る」という観念もあるようです。信州ビーナスライン連携協議会という行政による団体もありますが、ビーナスラインは管轄の端のほうなので、関心は高くありません。ビーナスラインが二輪専門誌やツーリング誌のベストロードランキングで常に上位であることにも気づいていないようです。
ボランティアほかファンイベントも開催
田中:ボランティアなど個々の活動について教えてください。
山田:「自分たちが走るところを綺麗にしよう」ということです。元々は地元のライダーの方々が行っていたゴミ拾いを僕らが清掃活動として引き継がせてもらっています。4月から11月にかけて、毎月1~2回実施しています。霧ヶ峰インターチェンジ周辺のほか車山肩に出かけることもあります。
タバコの吸い殻が多かったので、JT(日本たばこ産業)さんにも協力いただいて灰皿を設置したらポイ捨てはずいぶん減りました。また、ビーナスラインバイク祭りや霧ヶ峰コーヒーブレイクミーティングといったライダー向けのファンイベントも行います。
今後の活動について
田中:今後の活動について教えてください。
山田:通行量調査をして「ライダーがこんなにいる」ことを示して、沿線自治体の行政や市民の意識を変えていきたいと思います。また、バイクに限らずビーナスラインのガイドブックを作りたいです。僕らの活動への協賛企業も現在は17社ですけど、今後はもっと多くの企業さんにご参加いただけそうですし、冊子の中でも協力店の紹介などさせて頂きたいです。あと、ビーナスラインは事故も多いので、データを警察署に頂くなどしてマップの中にも記載する予定です。バイク用品メーカーやバイクメーカーといった企業さんにも協力をお願いしていきたいですね。
●SKY ROAD OF VENUS公式サイト:https://www.skyroadofvenus.com/
●SKY ROAD OF VENUS公式twitterアカウント:@RoadVenus