神奈川県西部をダラダラとツーリングするカブ+おっさん御一行。インパクトのあったレトロ自販機の聖地の次に向かったのは、この連載では珍しく(?)文化的なスポット。続いて、有名な玉子サンドの直売所に向かった!

前回はコチラ!
100台超のレアな自販機に感涙、さぁ喰いまくれ!【昭和レトロ紀行 神奈川編①】

前回と真逆(笑)、落ち着いた古民家で趣のある意匠を味わう!

スーパーカブ110で昭和レトロなスポットをグダグダと巡る当連載。私のスポークホイール+ドラムブレーキのカブ(JA44)に対し、前回合流したヤングマシン編集長の松田さんはキャストホイール+フロントディスクブレーキのJA59に乗っている。

2台のカブで向かったのは「中古タイヤ市場 相模原店」から30分ほど走ったところ。オッサン二人がキャッキャウフフとお約束のバイク交換をしてみた。JA59はやっぱり走りがスムーズで上質。今回みたいなロングツーリングでは疲れにくいだろうなぁと思う。

なんと言ってもメーターのギヤポジションは偉大(JA44には表示がない)。
「これに乗るともうギヤポジなしのカブには乗れない」と松田さんが言うように、本当に便利だ。私の愛車もいずれギヤポジ表示できるようにしてみたい。

住宅街の中に、いかにも旧家の佇まいが現れる。ここが目的地の「厚木市古民家岸邸」だ。

↑厚木市古民家岸邸 ■神奈川県厚木市 上荻野792−2 10~17時(10月1日~3月31日は15時閉館) 月曜&火曜休

 

明治24年(1891年)に建造されたと言われる歴史的建物で指定有形文化財。1998年に厚木市に寄付され、往事の生活様式を伝える貴重な文化遺産として1999年から一般公開されている。

建造されたのは明治でも昭和に大改修を行っているとのことで、「昭和レトロ」と呼んで差し支えないだろう(強引笑)。

↑既に塀からご立派! こんな風景もカブならなじむ。撮影はもちろん松田巨匠。


入口から趣があり、門をくぐると立派な木が迎えてくれる。それにしても敷地も建物も広い。家屋は木造2階建ての寄棟造瓦葺で、部屋は全部で15室。建築面積は約120坪。敷地面積は約520坪と広大だ。しかも入場無料で見学できる。

↑内部は広く、木のぬくもりが感じられる。


見学させてもらうと、職人技が光る意匠が随所に見られる。

↑窓の形も

↑雨樋も

↑天井も

↑鴨居も

↑ガラス障子もスゴイ!


しかも意匠が多種多彩。これを造るのにどれだけの手間とオカネがかかっているのか。見ているだけで溜め息がこぼれてしまう。全てがワンオフ、ということは、モトGPマシンのようなものだ!? 2回目になるが、これで入場無料。嬉しいけれど、少しはオカネを取ったら? と思ってしまう。

↑ここに住めば文豪になれそう笑


古民家は平屋が多いのに、珍しく二階もある。

↑二階へGO!

↑手すりの造形、構造も凝りまくり。

↑二階も広い!


二階で目を捉えて離さなかったのが、赤と白の硝子窓だ。

↑モダンすぎるだろ……。

↑青味を帯びた漆喰も美しい。こんなの見たことない。

↑2階からの眺望。庭に池があったが、昔は大きな鯉が泳いでいたのかもしれない。


2階には洋間もある。大正末期から昭和初期にかけて増改築されたという。

↑ドアの窓はハート形! ここだけカワイイ。

↑外から見ると紅白の硝子窓は何ら違和感なし。

↑建築当初はこんなカンジだった模様。畑に囲まれ、敷地もさらに広かったようだ。

古くから養蚕が盛んだった相模原

管理人と思しき方に話しかけてみる。受付や掃除を任されているそうで、本来の持ち主は隣の家に住んでらっしゃるという。

「維持が大変なのではないですか」と質問すると「湿気がこもらないよう、いつも窓や扉は開けています」という。また、修繕もこまめにされているようだ。今では映画のロケや結婚式でも使われるらしい。

そもそもは養蚕で財を成したという。相模原は約300年前から養蚕が盛んで、特に明治以降はより巨額の富が生まれた。岸邸は、いかにも相模原の歴史が凝縮した家なのだ。

――こうして古民家を後にしたわけだが、二人とも感心するコトしきりで「おぉー」「ほぉー」ばっかり言っていた。

出るやいなや二人で笑い合う。
「なんだろう昭和レトロ紀行らしからぬ上品なスポットだった」と松田さん。
「さっきとのギャップが凄すぎた」と私。
「うーん、やっぱり我々には品のない方が似合ってる」との結論が出た(笑)が、近隣まで来た際は一見の価値アリなのは間違いない。

黄色い建物が突如出現、ここが玉子サンドの聖地だ!

次の目的地は古民家からバイクで、たったの2分。またしてもJA59に乗せてもらい、いいなぁと思っているうちに着いてしまった。

その名も「玉子サンド研究所」!

↑畑の中、やけに目立つ建物が見えてきた。それが「ヤマモトヤ自販機」(玉子サンド研究所)だ。駐車場も広い。■神奈川県厚木市上荻野1270-2 24時間営業 年中無休


実はここも中古タイヤ市場と並んで行きたかった場所の一つ。確かTV番組で見たのだと思うけど、玉子サンドに特化した直売所で、1974年=昭和49年以来もう50年も営業しているという。

↑ヤマモトヤ自販機という名称だけど、マシンではなく、冷蔵庫にサンドが入っていて、箱の中にオカネを入れるタイプ。性善説的な無人販売所だ。なお「無人販売店は平和の象徴」ということで売上げの一部をウクライナ支援に寄付するという。


玉子サンドはなんと300円。ほかにもカツサンド、クリームサンドのほか、カツレツサンド、サラダサンドなどがあった。しかも24時間オープンで年中無休というのがイイ(もちろん在庫が残っていないと買えないけども)。

↑「放課後の豚サンド」というネーミングがまたグッド。

↑あちこちにポエムがあって、少しだけ、ほんの少しだけ一癖ある笑

タマゴの旨味をじっくり堪能できてたったの300円!

品出しは、6時、9時、11時、13時、15時半、17時半に行われる。私たちが着いたのは11時40分頃だったのでちょうどいいタイミングだった模様。平日の昼前だというのに、チラホラとお客さんがいらっしゃる。

↑玉子サンドは、日によっては買えなかったりするらしいが、無事ゲット~!

↑松田さんはとんかつサンドと玉子サンドをチョイス! よく喰えるな笑 テーブルやイスも黄色で統一されている。


中古タイヤ市場で食べたそばとお茶漬けがお腹に溜まっているが、気合いで食べる。ご覧のとおり、ふわふわの玉子がミッチリ詰まっている。お味は非常に素朴。決してネガな意見ではない。添加物などのケミカルな気配がなく、美味いタマゴの純粋な旨みが堪能できる。

そしてボリューミー! 300円でメッチャお腹一杯になること請け合いだ。それしても本日は季節外れの暑さ。11月末日なのに20度近い気温で、冬装備の私は汗だくになりながら玉子サンドを食べる笑

しかし、なぜ玉子サンドなのか、半世紀つくり続けて味は変わっていないのか、50年の研究成果は?etc……。興味は尽きないが、お店の人に会えなかったので仕方ない。

ちなみに両替機が見当たらなかったので100円玉を多めに用意しておくといい。もちろんオツリなしで箱にお札を突っ込むのもアリだ。

↑次へ向かう前に、せっかくだからと新旧スーパーカブ110のツーショット。カブが黄色だったらサイコーだったのだが、よしとしよう笑


考えてみると、古民家岸邸にまだ人が住んでいた頃、すぐ近くで、この玉子サンド研究所が営業していたのだと思うと、そのギャップに頭がおかしくなってくる笑。同じ昭和とはいえ、本当に様々な側面を持っているのだなぁ、と玉子サンドを食べながら思った。

さて、そろそろ次に向かおう。その前に・・・・・・中古タイヤ市場でウンコに行った松田さんに続いて、私の番……と思いきや、どうやらトイレがないみたい。

まぁいい笑 ところで、次の目的地はいつになくシリアス。第二次大戦時の「負の昭和遺産」というべきスポットに向かうのだった。

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