キャンプツーリングのマストアイテム、テント。使っているうちにフライシートの撥水性が落ちてきたり、シームテープが剥がれたり、うっかり穴をあけてしまったり。本格的にリペアするなら、プロにおまかせするのが一番ですが、お金もかかりますよね? 今回は予算をかけずに行なえる、簡単な対策をご紹介します。
撥水性はアイロンがけでも回復する
これはテントのフライシートです。居室であるインナーテントを雨から守ってくれる、外側の屋根みたいな存在。新品の時は驚くほど雨水をはじいてくれますが、使っているうちに撥水性が低下し、水滴がフライシートの生地に浸み込むように。
そうなってきたら、帰宅後、アイロンがけをしてみましょう。アイロンをかけるのは、フライシートの表面です。まずはフライシートの汚れをきれいに拭きとり、乾かします。これが終わったらフライシートを、シワにならないようにアイロン台に広げ、ハンカチや手ぬぐいなどを当て布にしながら、低温でアイロンがけ。
すると、ほらこの通り。なんと美しい! 撥水性が回復し、水をはじくように。水滴がきれいな水玉になりました。フライシートに限らず、レインウェアもそうなのですが、水をはじかなくなる理由というのは、生地の表面に整然と立ち並んでいる撥水基(撥水成分)が汚れや摩擦で倒れてしまうから。撥水基は汚れを取ってから熱を加えることによって、再び立ち上がるようになります(肉眼では見えませんが)。だからアイロンがけは効果的、ということのようです。これでも撥水しないようなら、撥水スプレーを使います。
剥がれたシームテープもアイロンで補修
これはフライシートの裏側。縫い目からの浸水を防いでくれるはずのシームテープが、長年の使用に耐えきれず、剥がれています。これでは目止めの役割を果たしません。全部はがし取り、新品のシームテープを購入して貼り直す? それが一番いいんでしょうが、今回は〈予算をかけず、簡単に〉がテーマですからね。
シームテープの剥がれた部分にアイロンをかけます。もちろんハンカチなどの当て布は必要。温度は低温〜中温。最初は低温で作業し、シームテープがうまく貼れないようなら中温に。剥がれたシームテープが縫い目からズレないように、慎重に。
アイロンがけをした部分のシームテープが、熱によって縫い目に密着しました。この要領で、剥がれた箇所はすべて密着させましょう。
インナーテントの内側に貼られているシームテープも同じ要領で密着させることができます。剥がれたシームテープの劣化がひどく、アイロンで密着させることができないようなら、そのときは市販のシームテープを購入し、全とっかえです。
補修シートは想像以上に使える
剥がれたシームテープをアイロンで密着させていたら、熱で縮み、寸足らずになってしまいました。こんなとき、どうするか。市販のシームテープを買って補修するのが一番でしょうが、シームテープはセロテープのように巻かれた状態で売られており、ひと巻き30mあったりします。テントのシームテープを全とっかえする気がないのなら、長すぎです。しかもひと巻き1000円以上したりも。
もっと手軽で、低コストなものはないかと探していたら、こんなものを発見しました。
本来は、破れやカギ裂き用に使用する、CAPTAIN88の「ナイロン補修シート」。Amazonで308円。サイズは幅7cm×30cm。ちょうどいいですね。
CAPTAIN88には「縫い目の防水テープ」という商品名のシームテープもありますが、縫い目にしか使えません。「ナイロン補修シート」ならば、縫い目だけじゃなく生地の補修にも使えますし、アイロン不要で強力密着させることができます。用途が広いほうが何かと便利かな、そう考えてこちらを購入した次第。
必要なサイズに切り、貼りつけます。角は丸く切っておくと、はがれにくくなります。CAPTAIN88の「ナイロン補修シート」は、低温になっても硬くならないポリウレタンシートを使用。実際、とても柔らかい材質でした。まあ、縫い目を塞ぐ目的ならばシームテープに軍配が上がりますが、それはそれとして。
貼り終わると、こんな感じ。表面に防水処理がしてある場合は、充分な接着力が得られない場合があるとのことで、生地の裏側に貼るのには向くのかも。透明で補修箇所が目立たないので、レインウエアにも使えそうです。カッパ姿で日々ハードなお仕事をする漁師さんたちにも愛用者が少なくないのだとか。
より強力な補修をするなら
フライシートの出入り口のファスナーを開け閉めする際、ファスナーで生地を噛んじゃって、うっかりカギ裂きに。こんなこともあろうかと、ずいぶん前にモンベルで買っておいたのが、これ。アウトドア用品用補修テープの「テネシアステープ」。ストレッチ性の高い接着剤をテント用生地に使用した補修テープで、寝袋や衣類にも使えるもの。1000円しませんでした。
補修したい箇所よりも大きめにカットし、裏紙をはがして貼りつけるだけ。これもカットする際は、角を丸くしておくと、より安心。
ただ、現在この商品は取り扱われていないようで、ネットで検索しても出てきません。モンベルでは現在、これよりも優れた補修シート「GORE-TEX パーマネントリペアシート」を販売中(サイズ20×20cm、550円)。
ゴアテックスメンブレン(フィルム)にナイロントリコットをラミネートした生地を用いた補修用シートで、補修箇所を縫製してから生地の裏側に貼り、アイロンで圧着するようです。レインウェアにも使えるので、雨でも元気に走りまわるライダーには重宝しそうですね。
テントって、けっこう高いものですので、いろいろと手をかけながら長く愛用してください。その方が経済的、というだけでなく、長く使えば使った分だけ思い出が染みついて、旅の記憶に深みが増しますから。