2021年10月1日から、「バイクのABSが義務化」されました。今まで2018年の新型車から段階的に適用されてきましたが、ついに全面適用に!
いったい何が変わったのか? ABSがないバイクは今までどおりでいいのか?
その辺をまとめて解説していきましょう。

適用日以降のバイクが対象、でも作動しないとNG!

強くブレーキをかけてもタイヤがロックするのを防ぎ、車体が安定したままブレーキングできるABS(Anti-lock Brake System)。クルマに比べ、バイクは導入が遅れていましたが、ついに全面的に義務化となりました。

まず最も気になるのは、「今乗っているバイクにはABSがないけど違法になるの?」という疑問でしょう。
結論は、下記の適用時期以前の車両なら「問題なし」。後付けしてABSを装着する必要はありません。
ただし適用時期を問わず、ABS付きのバイクでABS警告灯が点灯している状態だと「NG」です。

2輪ABS義務化 適用時期
2018年10月1日以降生産の新型車
2021年10月1日以降生産の継続生産車、並行輸入車

※対象は51cc以上。ただし51~125cc(原付2種)は前後連動ブレーキでもOK

まず原則として「義務化」と言っても、適用時期以前の既に所有しているバイクにまでさかのぼって適用されることはありません。また適用時期以降の車両には、あらかじめノーマルでABSが装着されています。メーカー側はABS付きでないと販売できないからです。
それまではノンABSとABS付きの2タイプをラインナップしていたモデルでも、現在では「ABS付き」のみになっているハズです(そのぶんノンABSの車両価格が安いモデルを選べなくなりましたが)。

なお、上表の「新型車」は、モデルチェンジで型式が変わった場合を含みます。「継続生産車」とは、“大変更がなく、引き続き生産された車両”の意。現在では国内販売される51cc以上の全ての新車にABS(または前後連動ブレーキ)が装着されています。
いずれにせよ、ノーマルの状態でABSが非採用のバイクは気にしなくて大丈夫です。
前後連動ブレーキは、「CBS」(Combined Brake System)や「コンビブレーキ」とも呼ばれ、どちらかのブレーキをかけると、前後とも同時にブレーキが働くシステムです。

ちなみに、WEBなどで「10月1日以降、店頭販売される新車はABS付きじゃないと売ってはダメ」と勘違いしている人もいたようですが、実際は「生産日」で区別されます。つまり、「2021年9月30日生産分までの継続生産車」であれば、新車であってもABSなしで販売して何ら問題がありません。もちろん中古車も販売できます。

↑'21モデルで生産終了したSR400とセロー250は、ともにABS非装備の継続生産車。'21年10月1日に迫るABS全面義務化が殿堂入りの理由のひとつと言われています。

前輪のみABSや一部例外のモデルもアリ

適用時期以降のバイクでも、一定条件を満たした競技向けのオフロード車、トライアル車はABS義務化から除外されます。これは、ABSがあると後輪をロックさせて行うリアスライドができなくなったり、不整地ではABSがあるとかえって制動距離が伸びてしまう、などの理由があるからです。
またABSの機能をオン・オフに切り替えできるスイッチも開発されていますが、これも適用時期以降は原則的に禁止されています。 

ただしフロントだけでもABSがあれば今後も販売できます。
モンキー125のほか、PCXやADV150などは、フロントのみの1チャンネルABSを採用しています。
さらに、CRF1100LアフリカツインやCRF250L、テネレ700などのように、モード変更あるいはスイッチで任意に後輪のみABSがキャンセル可能な車両もあります。ABSを完全にオフにするのではなく、前輪にABSの機能があるので合法という考え方なのでしょう。これにより、一部のオフ車やトライアル車がABS義務化から除外されたように、不整地でスポーティな走りが可能です。

なお、サーキット走行のためにABSをキャンセルしたい人もいるかと思われますが、適用時期以降でもクローズドコースしか走らない場合はABSをカットしても問題ありません。

↑排気量が小さい125クラスではモンキー125やPCXのように、フロントのみABSの車種が多い。

 

↑オフロードを意識したモデルは、リアのABSキャンセル機構を持つ場合も。CRF250ラリー(写真左)、テネレ700ABS(右)はともにスイッチで後輪のみABSをオフにすることが可能です。

「ABSキャンセル」は不正改造、50万円以下の罰金の場合も!

このようにABSの義務化は、メーカー側(売る側)の制度だと言えます。ただし前述したように「ABS警告灯が点灯した状態はNG」。例えば、ユーザーが適用時期以降に生産されたモデルのABSをキャンセルしたり、取り外すなどして作動しない状態にしてしまうのは違法です。
道路運送車両の保安基準に適合せず、「不正改造」となるため、車検に通りません。街頭検査で違反が発覚した場合、「整備命令」が下され、15日以内に必要な整備を行う必要があります。従わない場合、50万円以下の罰金が課されるなど重い罰が科されます。
また、故意ではなく、故障などでABSが作動しない状態で走行した場合は「整備不良」となり、違反点数と反則金の対象となる恐れがあります。
なお街頭検査や車検では、ABSの効き具合を検査するわけではなく、ABS警告灯の点灯で作動の有無を調べます。

ABS警告灯

↑ABS警告灯が点灯した状態。走り出して消えれば正常ですが、点灯したままの場合、ABSシステムの異常が考えられます。


ここで注意したいのは、適用時期以前のバイクでもABS警告灯が点灯していると整備不良と見なされたり、車検に通らないということです。
以前はABS警告灯が点灯していてもパスできたケースもあったようですが、2017年2月以降、基準が変更されABS警告灯が点灯したままでは車検に通らなくなりました。
適用時期以前のバイクでABS付きの場合、義務化されていないため、厳密にはABSをキャンセルしても正常にブレーキが作動するなら問題はないと思われますが、ABS警告灯が点灯しているとNGになるのです。

違反になるケースをまとめてみました。
・'18年10月1日以降生産の新型車でABSを解除している
・'21年10月1日以降生産の継続生産車&並行輸入車でABSを解除している
・(上記の適用時期以前に生産された車両でも)ABS警告灯が点灯している場合

警告灯が点灯したら早めにショップへ!

近頃のバイクは電子制御が複雑化し、バンク角などに応じてABSの前後配分などを行うモデルも存在します。ABSをカットしてしまうと不正改造になってしまうのはもちろんですが、安易なキャンセルは思わぬ不具合が発生するケースもままあるでしょう。
ブレーキは生命にかかわるパーツ。無闇な改造は厳禁です。
また、ABS警告灯が消えない場合は、ABSのコントロールユニットが何らかの異常を感知した状態です。ユニット自体や、ヒューズ、ホイールスピードセンサーなどの不具合が考えられるので、早めにショップへ持ち込みましょう!

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