バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉なんだけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそも何がどう凄いの? なんでいいの? そのメリットは!?」なんて今更聞けないし…。そんなキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回はエンジンの冷却方式を表す用語の『水冷』をピックアップ。
そもそも『水冷エンジン』とは?
バイクのエンジンはガソリンと空気を混ぜた混合気を燃やしてその膨張力を動力として利用している。スロットルを開けると混合気の供給量が増えて、それに応じてエンジンの回転数が上昇。その分バイクの速度が上がる。ただこの混合気が燃える際には当然ながら熱が発生する。この熱を冷却水を使って冷ましているのがいわゆる水冷エンジンだ。
どうやって冷ましているかというと、水冷エンジンには、燃焼が起こるシリンダーや燃焼室の周囲にウォータージャケットと呼ばれる水路が設けられている。このウォータージャケットにポンプで冷却水を循環させることでエンジンの熱を冷却水に移すことでシリンダー付近の熱を下げている。100℃近くに熱せられた冷却水はラジエターと呼ばれる冷却装置へ運ばれ、ここで走行風を受けることで放熱。再びエンジンを冷却しに戻るというサイクルを繰り返している。バイクのエンジンには水冷に似た冷却方式に油冷もあるが、こちらは冷却水ではなくエンジンオイルを冷却媒体とした液冷システムである。
『水冷エンジン』のなにがスゴイの!?
「空冷エンジンとは違い、水で冷やさなければならないほどハイパワー」
水冷エンジンはなぜすごいのか? 一言で表せばそういうことになる。もう少し言葉を足すなら、「旧式の空冷では冷却が間に合わずオーバーヒートしてしまうため、このエンジンにはより冷却力の高い水冷を採用。それほどハイパワーなのが水冷エンジン」ってことになる。エンジンの歴史は高回転化、高出力化、高効率化の歴史だ。進化の途中で空冷エンジンでは冷やしきれなくなったところに登場したより高性能なエンジンが水冷エンジンということなのだ。
なので、同一排気量で同一のエンジン形式なら空冷エンジンより、水冷エンジンの方がハイパワーというわけ。例えば空冷のセロー250が20馬力なのに対して、水冷のWR250Rは31馬力と最高出力に大きな差が生まれている。
結論:水冷≒ハイパワーってこと
概ね水冷エンジンは空冷エンジンよりもハイパワーだと思って間違いないのだが、ただちょっと最近は、水冷=ハイパワーという図式が完全には成り立たなくなりつつある。というのも水冷エンジンには高出力化への対応はもちろんだが、シリンダー付近の温度管理がしやすく環境性能に優れるという特性があるからだ。このため、それほど高出力化の必要がなくても環境性能を求めて水冷化する場合が増えてきている。一方の空冷エンジンは、水冷エンジンよりもシリンダーやピストンが高温化するために金属部分の熱膨張による変化が大きく、シリンダーとピストンの間に隙間が生まれやすい。水冷エンジンよりも密閉が保ちにくく、オイルが燃えやすいから排ガスのクリーン化がしにくい。また騒音対策の観点からも、シリンダー内部に水を層がある水冷エンジンは空冷エンジンよりも静粛性が高い。
なので最近は、年々厳しくなる排出ガス規制や騒音規制に対応するため、空冷エンジンではなく水冷エンジンを使う場合が増えている。ホンダのCRF250Lなどは水冷エンジンだが、もともとの設計において高出力化よりも“高効率化”を追求。クリーンなエンジンにしたくて水冷をチョイスしたエンジンの代表例と言える。なので最高出力も24馬力と水冷エンジンにしては低めに設定されている。
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