バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなバイク関連のキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回はバイクのマフラーに取り付けることでエンジンの出力特性を変化させられる『排気デバイス』をピックアップ。

そもそも『排気デバイス』とは?

『排気デバイス』というからには、エキゾーストパイプやサイレンサーといったマフラーまわりのパーツであることはなんとなく予想できると思うけど、下の写真のようにエキゾーストパイプの途中に取り付けられたバルブ(弁/絞り)状のパーツが『排気デバイス』だ。この『排気デバイス』は“可変排気バルブ”とも呼ばれ、長年『排気デバイス』に取り組んでいるヤマハはEXUP(エグザップ)と呼称している。

写真は2004年モデルのYZF-R1に搭載された『排気デバイス』EXUP。エキパイの内部にバルブを設けてモーターで駆動。

写真は2004年モデルのヤマハ・YZF-R1に搭載された『排気デバイス』EXUP。エキパイの内部に板状のバルブを設け、モーターでワイヤーを引いて開閉している。

『排気デバイス』は排気ガスが通るエキゾーストパイプの途中にあり、低回転時と高回転時で排気ガスの流れを絞ったり、開放したりしている。

『排気デバイス』は排気ガスが通るエキゾーストパイプの途中にあり、低回転時と高回転時で排気ガスの流れを絞ったり、開放したりして排気ガスの“抜け具合”をコントロールしている。

 

この『排気デバイス』には、『インジェクション』で説明したバタフライバルブのような開閉弁機構があり、選択しているギヤ、エンジン回転数、車速、スロットルの開け具合などの情報により開き具合を調整。エキゾーストパイプの中を流れる排気ガスの量を細く絞ったり、たくさん流したり、内部の圧力(排気脈動)をコントロールすることで、エンジンの出力特性を変化させている。

『排気デバイス』に力を入れているのは今も昔もヤマハ。1987年登場のFZR400Rに初搭載して以降、4ストロークエンジンを搭載する高性能モデルに『排気デバイス』を搭載。ヤマハではこの『排気デバイス』をEXUP(エグザップ/Exhaust Ultimate Power Valve)と呼んでいる。

『排気デバイス』に力を入れているのは今も昔もヤマハ。1987年登場のFZR400Rに初搭載して以降、4ストロークエンジンの高性能モデルに『排気デバイス』を採用。ヤマハではこの『排気デバイス』をEXUP(エグザップ/Exhaust Ultimate Power Valve)と呼んでいる。

『排気デバイス』のなにがすごいの?

低回転域から高回転域までエンジン特性がワイドレンジにできる!

……ということだ。『4バルブ』、『DOHC』のコーナーでも説明してきたけど、エンジンの進化は高回転化&高出力化の歴史である。ただ、エンジン特性をあまりに高回転重視に特化してしまうと、今度は低回転域でのトルクが希薄になる。発進などでエンストしやすい、いわゆる“下のトルクがないエンジン”になってしまうのだ。

そんな常用回転域での力強さ(低速トルク)と、高回転側の伸び(最高出力)を両立するために吸排気バルブの動き具合を変える『可変バルブ』が登場した。吸気側と排気側という違いはあれど、今回紹介する『排気デバイス』も“エンジンの全域性能を求める”という根本的な考え方はこの『可変バルブ』と全く同じ。

『排気デバイス』はエキゾーストパイプの中を流れる排気ガスの流量をコントロールしており、低回転時には流路を絞って排気ガスを流れにくくすることで混合気の吹き抜けを防止。一方、高回転側ではバルブを開放すること排気効率がアップ。よりたくさんの排気ガスを通して抜けを良くすることでエンジン回転の伸びを阻害しないような仕様になるというわけ。

HONDA CB1000HORNET SP。SP仕様には『排気デバイス』が搭載されており、『排気デバイス』を持たないスタンダード仕様に対して、6PSもピークパワーが高く設定されている。

HONDA CB1000HORNET SP。SP仕様には『排気デバイス』が搭載されており、『排気デバイス』を持たないスタンダード仕様に対して、6馬力もピークパワーが高く設定されている。

 

では、『排気デバイス』の有無によってどのくらい性能や乗り味が変わるのか? この効果が非常にわかりやすかったのが2025年に国内販売が開始されたホンダのCB1000ホーネットシリーズだ。最高出力152PS/11000rpmのスタンダードモデルに対し、『排気デバイス』付きのSP仕様(他にも足回りなどに違いがある)は、+6馬力の最高出力158PS/11000rpmを発揮。つまり同じシリーズで“『排気デバイス』付き”と“『排気デバイス』なし”がある。

CB1000ホーネットSPの『排気デバイス』。サイレンサーと一体になっており、マフラー交換すると『排気デバイス』の効能は失われてしまう。

CB1000ホーネットSPの『排気デバイス』。サイレンサーと一体構造になっており、安易にマフラー交換すると『排気デバイス』の効能は失われてしまう。

 

筆者は、このCB1000ホーネットの“スタンダード仕様”も“SP仕様”にも乗ったことがあるが、『排気デバイス』の有無によるエンジン特性の違いをはっきり体感することができた。試乗する前は、よりパワーの出ている“SP仕様”の方が扱いにくく感じるだろうと思っていたのだが、いざ試乗してみると印象が全く逆。『排気デバイス』のある“SP仕様”の方が、発進などの低速域や街中での常用する低中回転域においてスタンダード仕様よりも扱いやすく感じたのだ。

実はこれこそが『排気デバイス』の効用。最高出力で+6馬力も上乗せしている“SP仕様”は、当然そのままの状態では中低回転域のトルクが希薄になってしまうことは安易に予想できる。そうならないよう、高回転側の出力アップを図る一方で『排気デバイス』を取り付けることで低中回転域のトルクも確保して扱いやすくしている。

つまり『排気デバイス』とは、1つのマフラーでありながら、“トルク重視の低回転用マフラー”と“抜け重視の高回転用のマフラー”を付け替えているような効果が得られる装置というわけだ。

CB1000ホーネットSPの『排気デバイス』の構造図。内部にバタフライバルブがあり流速をコントロールしており、イラストは高回転側の全開で最も排気ガスの抜けが良い状態。

CB1000ホーネットSPの『排気デバイス』の構造図。エキゾーストパイプ内部にバタフライバルブがあり排気ガスの圧力をコントロール。イラストは高回転側の全開で最も排気ガスの抜けが良い状態。

 

 

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