学業やスポーツだけでなく、ライディングも反復練習こそが上達への近道。いきなりGL1800ゴールドウイングサイドカーを割り振られた普通自動二輪免許しか持っていない初参加の人でも、安全な状況下での懇切丁寧な指導によってトライ&エラーを繰り返すと気が付けばブイブイと巨体を振り回せるように……。そしてスクールの後半では予想していなかった車両まで登場し、濃密な時間は続いていきます!

●昼休み休憩開けのちょっとした時間でゴールドウイングとハーレーサイドカー(写真)のリバース……つまり後進機構のレクチャーも行われました。人力だけでは事態が打開できないときの最後の手段。装着済みの車両を購入した暁には、多用してしまいそうですが……(汗)。とまぁ、こんなふうにサイドカーに関するあらゆるコトを知ることができる「サイドカーライディングスクール」なのです
Contents
“クセつよ”だからこそ上手に動かせたときの感動は大!
乗り始めた最初は面食らったサイドカーならではの挙動。
発進、加速、減速、旋回、再加速……と、どのフェーズでも通常のバイクとは全く異なる気の抜けない動きが出るものの、確実なニーグリップとスムーズで的確な操作をしっかり行なうことで、うまく対処することができると理解できてからは面白さが加速していきます。
なんといっても勉強になったのは8の字走行でしたね。

●ある程度のスペースとパイロン(に類するもの)が2つあれば練習できる8の字走行。1周するたびに新たな課題が出てきて「次こそは!」と思わず熱くなってしまいます。ミニバイクレース華やかりしころ、NSR50で飽きもせず空き地をグルグル回っていたことを回想しつつ、今回はサイドカー独特の挙動と格闘いたしました
これは通常のバイクでも同じなのですけれど、視線の送り方、操作の正確性、ラインの取り方などなど、ムダのない走りのために何をどうすればいいかが本当によく分かります。
自分のターンが終了し、「うーん、あそこで失敗したなぁ~」と反省しつつ交代。
他の参加者の走りを眺めつつ、次はこうしてやろう、ああしてやろうとイメトレ……しているうちにまた自分の順番がやってくるという好サイクルで、うまい具合に集中が途切れません。
なんとサイドカーだけでなく、アイツが新規加入してきた!
そして午前中最後のカリキュラムが、広いコースをフル活用した長大なパイロンスラロームでした。
ここにきて参加者全員で6台をシェアしていく方式となりましたので練習してきた車両だけでなく、用意された多彩なサイドカーにまんべんなく乗れるというわけです。

●GL1800ゴールドウイングサイドカー。全長275㎝、全幅222㎝、重量570㎏という他を圧する存在感を放つ車両……ですが自立してくれるのでビビる必要はありません。いや、かえって小さなサイドカーより動かしやすいという一面も持ちます。これはもうサイドカーライディングスクールで実際に体験していただくしかありませんね〜
……ん? 事前の情報ではスクール使用車リストにはゴールドウイング2台、ハーレー1台、カワサキとヒョースン各1台とあり、合計でサイドカー5台だったはずでは……。
と、ここで那須モータースポーツランド、竹内支配人からのアナウンス。
「車列の最後にトライクが追加されています。サイドカーと同じ3輪で、タイヤは中心線から左右対称に付きだしていますが全体の車幅自体はサイドカーより狭いです(140㎝)。操作は基本的にサイドカーと一緒。独特な走りっぷりを体感してみてください」とサプライズな車種追加が!

●ホンダGL1500ゴールドウイングの後輪部分を大改造し、スリーホイラーとした仕様。こういう一般的にトライク(前1輪+後2輪:左右対称構造:後輪駆動)と呼ばれる車両は「自動車」として取り扱われるため、公道で運転するには「普通自動車免許(以上)」が必要……さらに言えば二輪免許は不要なのです。なお、パッと見は普通のサイドカー然としているウラル社製などの“側車のタイヤにもシャフトを介して駆動を伝えている”車両も「自動車」扱いとなります。そのあたり、いろいろとややこしいので、興味を持たれた方はぜひ調べてみてください
話題が尽きないスリーホイラーの世界をさらに深く
ハーレーダビッドソンが現在でも純正でラインアップしており、日本ハム・ファイターズの新庄ビッグボスが何度となくマスコミの前で運転する姿を披露したことなどでも話題になったトライクをサイドカーと乗り比べることができるとは……。
主催者側の粋な配慮に参加者からも思わず歓声が上がります。
さっそく長大パイロンスラロームの練習が始まりました。
ここで初めて接するサイドカー(とトライク)がほとんどなので緊張……はしたのですが、あの小柄なヒョースンサイドカーで反復練習して学んだ運転のテクニックは、たとえ1800㏄のゴールドウイングサイドカーでも全く問題なく通用することがすぐに理解できましたので、ホッ。

●なんとバイクに乗ったインストラクターが先導してくれるというゴージャスなサービス付き! 適切な通過スピードとベストラインを直に教われるメリットは大きい!
ただし、側車が左に付いているのか、右に付いているのかで走らせ方を変えなければならないため、あまり時間を置かずに乗り換えると、少々こんがらがってしまったことは正直に書いておきましょう。

●「アレ? こっちに側車があるときこちらの方向へ曲がるには、スロットルを全閉じ? or 開けながら? どっちだったっけ??」とプチ混乱したのは事実です。まぁ、イラストほど顔面蒼白にはなってはいないのですが(笑)
今回のスクール使用車ではハーレーとカワサキのサイドカーが、側車をバイク部分の右側に配置した“右カー”でした。
上記のように左?右?とプチ混乱をきたしているとき、アレレレレレ?感を思い知ったのが車幅感覚です。
右カー、左カーで右カーブ、左カーブ……。シビれるぜ!?
課題をクリアすべく集中していると、どうしても自分が通常のバイクに乗っているような意識となり、それが威風堂々たるハーレーだったりすればコースの中央を走りがちになるのですよ(筆者の場合)。

●ハーレーダビッドソン FLTRロードグライドをベースとした押し出し感もたっぷりなサイドカー。この状態での全幅は185㎝(江口洋介さんの身長と同じ)ですから、3ナンバーのクルマ並みの大きさだと言えます。“右カー”は日本の公道なら路肩にキッチリ寄せやすいなどの利点もありますので、選択時には悩んでしまいそうです〜
そこで“チッ!”とパイロンと右カーが接触する音がして肝を冷やすこと3回。
“右カー”の場合、日本の公道で自分(運転手)が中央線に近寄ってしまうと、側車がセンターラインの向こう側へいってしまいかねませんので注意が必要です。
所有していつもその車両だけ乗るようになれば、かくいうウッカリはないのでしょうけれど。
トライク、ライク♡、どストライク!
そしてトライク!
スクール使用車として新たに追加されたのはGL1500ゴールドウイングがベースのもので、その強大な低速トルクにより発進は楽チンそのもの。
真っ直ぐ走るだけでもハンドルにブレを誘発させてしまう側車の存在はありませんから、シュッとした加速&減速が可能です……が、コーナリングにはやはり気を遣いました。

●車体後部に位置する極太タイヤがド迫力を醸し出すトライク。法規上は自動車扱いなのでヘルメット着用の義務はありませんが、ライダーたるもの安全装備はきっちり身にまとって乗るべきでしょう
サイドカー同様、バンクせず、セルフステアなしとなる構造なので、車両の向きを変えるときにはハンドルを意図的に“切る”ことを意識しなくてはなりません。
オーバースピードが厳禁なことも同様です。ラフなカーブへの突っ込みを行なうと、コーナー内側の後輪が浮いてしまうこともありますのでご注意のほどを……。

●車体色や置いた場所、カメラの位置などで少々分かりづらいですが、実は左のGL1500ゴールドウイングトライク(全幅140㎝)のほうが、右のGV250サイドカー(全幅145㎝)より若干スリムなのですよね、面白い。左右のググッと張り出した部分をついつい忘れてしまわないよう気をつけなければなりません(汗)
しかし、それらの諸注意部分に配慮した操縦を行なえば爽快な走行感が楽しめましたので、自分的にも超好印象でありました。
では次回は最終回。お祭り騒ぎのクライマックスを迎える「サイドカーライディングスクール」の大団円についてお伝えしましょう。(つづく)
【参加者インタビュー⑦⑧】 山内俊弘さん 山内加津代さん

●エムクラフト製のホンダ モンキー125サイドカーで颯爽と会場入りされた山内さんご夫婦。なんと、この出で立ちで分割日本一周を進行中なのだとか。「一応、東北は青森を除いてぐるっと回って、中部は2回も回って(笑)、今度は初めて西のほうへ行こうと思い、10月には四国を目指します。カミサンは島が好きなんで、いつか五島列島とかあっちのほうも巡りたいですね」と俊弘さん

●筆者は不勉強だったのですが、原付二種(51~124cc)のバイクにサイドカーを取り付けると250ccと同じ軽二輪登録になるのだとか。ですのでベース車がモンキー125でもサイドカー化すると定員は2~3人となり、高速道路の走行も可能に……ワオ! 「高速を走っていても皆さん優しいですよ。あと、有料道路やフェリーの料金所やビルの駐車場などで大騒ぎになることもよくあるのですが『やってる、やってる……』と楽しんでしまっていますね」と加津代さん

●「ちょうど今、大きくて楽しいサイドカーがあるかな?と探している最中なんですよ。モンキーは維持したまま、トルクフルでカッコいいやつをもう1台……。そのためにも運転技術を向上しなくちゃな、と思って今回初参加しました」と俊弘さん。いやいや、実に肩の力が抜けた、スムーズな走りっぷりが見事でしたよ!

●俊弘さんが非常に気に入っていたのがGL1500のサイドカー。「この車両だけフロントがアールズフォークになっていて、『あ、むっちゃくちゃ曲がりやすい、これかぁ~』って感動しました。W400はスタイリングが好み。操縦は少々難しかったけれど総じて面白かった。この2台が強く印象に残りましたね」。なお、お二人は以前、バイクでロングツーリングに出掛けていたそうですが……。「タンデムで後ろに乗っていると落ちちゃいけないって無意識のうち足に力が入るのか、1時間も走ると疲れちゃうんです。その点、モンキーのサイドカーなら何時間だって座っていられますよ」と加津代さん。なるほど! これからも良き旅を〜