サイドカーに興味はあるけど、乗る機会がないライダーが多いのでは? 筆者もその一人だったが、初めて試乗して独自の面白さに目覚めた!
エッ! ハンドルを手で切って曲がるんですか?
私にとって側車付きバイク、いわゆるサイドカーは、「旅情を掻き立てられる大人の乗り物」といったイメージがあり、昔からロマンを感じていた。ところが、一度も乗ったことがない……。取材でお邪魔した那須モータースポーツランドで試乗できると聞き、急遽トライしてみた。
まず外観が圧巻。試乗したゴールドウイングのサイドカーはとにかくデカイ。ゴールドウイングだけでも巨体だが、カー付きだと車幅はクルマのクラウン(1800mm)以上ある。ビビっていると、「サイドカーはある程度、車重があった方が挙動が穏やかで乗りやすい」とのこと。
乗り方をレクチャーしてもらいながら走り始めたのだが、サイドカーはバイクと違う特性がいろいろあって、まさに目からウロコ状態!
中でも驚いたのが、ハンドルを手で動かして曲がる点だ。バイクは、腕の力を抜いてフロントタイヤの動きを妨げないのが基本だが、サイドカーではコーナリングや方向転換など、どんな場合もハンドルのグリップを前方に押す操作が必要となる。
発進では左、減速では右に進むんです
発進すると、ハンドルがブレるのでしっかり抑える。これもサイドカー特有の現象で、低速走行時(20~40km/h)や減速時にハンドルが振られることがある。ヒジを脇につけてブレを抑えることが重要らしい。
さらにカーのある左側に引っ張られるように、左へ左へ進もうとするので、これも左グリップを押し当てて対処(カーが右側の場合は逆)。ある程度、速度が出れば直進安定性が高まってくる。
続いて減速。カー側が慣性で前に進もうとするため、右に行こうとする。これもハンドル操作で解決だ。ちなみにサイドカーは車両側とカー側のリヤブレーキが連動しているので、リヤを効果的に使うことが重要。フロントブレーキがメインだと前輪1本に荷重がかかって不安定になりがちだ。
重さに逆らわず、“慣性の法則”を攻略せよ
コーナリングも新感覚だ!
右回りではスロットルを閉じ、左回りは逆にスロットルを少しずつ開けながら通過するとスムーズ。これは左カーの場合で、前述のとおり減速すると本体は右側に進み、加速すると左に進もうとする特性を活かしたものだ。
当初は左右で「加速だっけ減速だっけ?」と戸惑ったけど、ゲーム感覚で目の前に現れるコーナーを攻略するカンジ。車両の動きに逆らわないように上手く走らせるのがオモシロイ。
何周かコースを走ったらかなり慣れてきた。
車重がヘビーなのでコントロールに気をつかうが、あまり飛ばさずに、制動距離を長めに取るなどすればほぼ問題ないようだ。
それにしても、巨大な車両を操るせいか雄大な気分になれる。一般道では車幅を考慮して走る必要があるだろうが、サイドカーでツーリングしたら楽しいだろうなぁ。
リビング感覚でくつろげるパッセンジャー
続いて、側車にも乗せてもらった。ライダーは那須MSLのスタッフさん。座席は座り心地がよく、広々としており、足が伸ばせるので非常にラクちんだ。いざ走行すれば、路面との距離が近く、スピード感がスゴイ。感覚としてはゴーカートに近い。その一方で防風性が素晴らしく、景色が変わる部屋でくつろいでいる(?)ような不思議な感覚だ。
なお、競技ではパッセンジャーも体重移動を行うが、一般走行では特にアクションは不要とのことだ。
運転しても、側車に乗っても楽しいサイドカー。立ちゴケする心配がない上にキャンプ道具などの大荷物を積めるのもいい。バイクの楽しさがありながら、全く違う魅力を備えた乗り物と実感できた。その魅力は「クセ」と言い換えることもでき、楽しむには大らかさや好奇心が必要かも知れない。だが、ブルーチーズのような他に代えがたい、病み付きになる味わいを感じた。
少しでも興味がある人は、ぜひ一度トライしてほしい!
那須MSLではサイドカーのほか、トライク(3輪バイク)もあり。安全な環境で独自の特性を体験したい人に最適だ。走行料金は2000円~、レンタル料金は1000円~(1クール20分)。
愛知県のライディングスクール岡崎でも教習用サイドカーと専属インストラクターによるライディングスクールを実施中だ(1枠50分3500円~)。
興味を持った人は那須MSLまたはライディングスクール岡崎まで。
サイドカー特設サイトも要チェックです。