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スキルアップのことだけ考える休日を
那須MSL(モータースポーツランド) ライディングカレッジの開催時間は朝9時から夕方4時。
ですが、準備や車両の検査があるため朝8時30分までには会場入りしてもらうことが前提になっています。
関東首都圏から那須MSLまでは距離にして200km+αコースですので、そのエリアに住むライダーが日帰りで受講するとすれば朝4時台起きの5時台出発が望ましいところ。かつ、帰り道で渋滞でもハマろうものなら自宅への到着時刻は夜の8時か9時か……。
しかし、今回筆者が話を聞いた受講生の皆さんは例外なく、そのような旅程すら承知の上で参加を決めていました。
「“ライディングスクール”を受講してとても有益だったので迷うことなく……」。「ステップアップ試乗会で何度となく来ていますから、もう慣れっこ(笑)。こちらでのイベントは往復400㎞以上走っても来る価値がありますよ」。
中には、「関西で行われたライテク講習に参加したとき、そちらでも指南役だった中井直道さんに『キミにぴったりなイベントが那須MSLであるよ』と誘われたので近畿地方からやってきました」という猛者まで(!)。
確かに保守点検の行き届いた全長1.2㎞のバイク専用コースをフル活用した一流講師陣によるカリキュラムが一般でも1万円、レッドバロン会員なら9000円で経験できるというのは非常にリーズナブル。
今回、筆者も受講をしてみて、そのカリキュラム内容の濃さ、練習できる時間の長さ、インストラクター諸氏との質疑応答のしやすさなどに深く感銘を受けました。
全集中して自らのライディングテクニックとゆったり真摯に向き合う経験が、以降のバイクライフに大きな影響を与えることは間違いありません。
美味しい昼食は場内の売店で購入可
さて、急変する天候に翻弄されつつも非常に濃い午前中のカリキュラム……ロング8の字、直列スラローム、そしてオフセットスラロームを終え、再びコース全体を走行したあとピットへ戻れば、12時から1時間の昼休憩です。
スラローム練習の終盤に得ることができたセルフステア“アハ体験”の余韻に浸りつつ、場内にある売店で500円のドライカレーを購入し、ドリンクはもちろんレッドバロンが誇る!?基本的にオール50円(一部ペットボトル飲料は110円)の自動販売機にてGET。
舌鼓を打っているうちに雨は止んで太陽も再び顔を出すようになり、コースの路面もみるみる乾いていったのには、やはりホッとしました。
制動力を制するものは峠道も制覇
午後1時。参加者全員が第2ピットに集合して中井氏のレクチャーを聞くことから後半の部が始まります。
学んでいく課題は、①ブレーキング&ブレーキングからのコーナリング ②ライン取り&フォームの検証です。フルコースを2分割してピット側では①を、奥の複合コーナーで②を、AとBのグループで分かれて練習を行ない、約40分後に場所ごと入れ替わるという段取りです。
私が属しているBグループは①を先に実施することになりました。
「最初に行うブレーキングの練習では、ストレートで60㎞/hまで速度を出し、目印のパイロンを通過したら完全停止するまでフロントだけで制動してもらいます。
注意してほしいのは“一度ブレーキレバーへ入力を始めたら完全に止まるまで一定の力で握り続ける”こと。これにより制動における物理法則……というか、どんなバイクでも当たり前に起こる自然現象を体感します。
その後は“フロントブレーキを掛けながらコーナーへ入っていく”練習です。コツを習得して上手にできるようになれば、とても気持ちいいコーナリングが構築できますよ」という中井氏の言葉にモチベーションもアゲアゲに。
考えたこともなかったブレーキ特性
どこかで聞いたことはある、しかし、普段の走行では全く活用していなかったブレーキ本来の制動特性。会場では分かりやすい図を使って説明されました(下写真)。
入力を一定にしたとき、赤い線がブレーキの効いていく強さで、黄色い線が速度の落ち方です。スピードはブレーキを掛けた瞬間にガクンと落ちるのではなく、「あれ? 止まらない,止まらない、止まらない……(急に)止まった!」という具合に最後の最後でギュゥッ!と制動力が立ち上がり、速度も急激にダウンしていくものなのです。それを理解して常に再現できるようになれば、狙ったところへ最短・最速で止まれる(もしくは減速できる)ようになるということ。
さっそく練習を重ねてみても、長年骨の髄まで堆積してきた“なんとなく減速”がどうしても払拭できません。以前、握りゴケを経験した恐怖心もあるのか、初期の入力は恐る恐るといった感じでムラのあるものとなり、それでもごまかしながら操作していくと制動力は急速に立ち上がってくれるのですが、フロントフォークがグググッと沈み込む領域になると右手レバーへの力を思わず緩めてしまうのです。
午前中のフルロック体験で舞い上がった気分はどこへやら。正直、60㎞/hからのブレーキング練習では追い求める理想の半分にも到達できなかった悔しさが残りました。しかし、落ち込んでいる間もなく次の課題、「ブレーキングからのコーナリング」の練習がスタートです。 (つづく)
【参加者インタビュー④】 安住彰子さん
【参加者インタビュー⑤】 宇島恒光さん 48歳
>「ワンランク上のライダーへ!」 ライディングカレッジ体験記〈その1〉
>「飽きるほど(!?)に反復練習」 ライディングカレッジ体験記〈その2〉