バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなバイク関連のキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回はエンジンオイルの種類や効能の話。“エンジンオイルは「鉱物油」よりも『化学合成油』の方がいい!”なんてことをよく耳にするけどいったいどういうことなんだろう? 今回は「FanFunミーティング in 那須モータースポーツランド」にブース出展していたelfオイルでお馴染みのトタルエナジーズ・ルブリカンツジャパンさんにそのあたりを伺ってきたぞ!!

そもそも『化学合成油』のエンジンオイルとは?

ひと口に『化学合成油』と言っても実は3つのランクがあり、最上級の「エステル(Group5)」、二番目の「PAO(Group4)」、そして「VHVI(Group3)」。このうち「PAO」と「VHVI」が原油を精製する段階で得られる成分をベースとしているが、最上級の「エステル」の『化学合成油』は植物由来で原料が原油ではないのだとか。

トタルエナジーズ・ルブリカンツブランドの乗用車用オイルで言えば、左の青い缶が「鉱物油」のHTX COLLECTIONで、右の赤い缶が『化学合成油』であるHTX CHRONO。同じオイルだけど価格は「鉱物油」と『化学合成油』でずいぶん違う。

トタルエナジーズ・ルブリカンツブランドの乗用車用オイルで言えば、左の青い缶が「鉱物油」のHTX COLLECTIONで、右の赤い缶が『化学合成油』であるHTX CHRONO。

 

いきなり難しい話になってしまったが、そもそもの話をすればベースオイル(主成分)の種類によってエンジンオイルは“Group”分けされている。ランクの低いGroup1&2はいわゆる原油から作った「鉱物油」であり、今回紹介する『化学合成油』はGroup3~5に該当。ちなみにGroup1と2の「鉱物油」オイルも原油から作られるため、Group4以下はすべて原油、もしくは原油由来の成分。最上級のGroup5であるエステル系『化学合成油』だけが原油以外の成分で作られていることになる。

このほか、エンジンオイルのなかには「部分化学合成油」なんてものがあるが、これは「鉱物油」と『化学合成油』をブレンドしたもの。当然、フルセンシティックとか100%『化学合成油』なんて表現が使われるエンジンオイルの方が性能がよく、区別する意味で「部分化学合成油」と100%『化学合成油』の表現が使われる。

 

ただ『化学合成油』って「鉱物油」に比べて価格がものすごく高いんだよね。同じエンジンオイルなのにそこまで価格が変わるのはなんでだろう? 定期的に交換するものだし、安ければ安いにこしたことはないんだけど、「鉱物油」と『化学合成油』でいったいナニが変わるんだろうか?

『化学合成油』はなにがすごいの?

『化学合成油』は熱を受けても性能が変わらず、油膜切れを起こしにくい!

……ということだ。世の中にある大抵のものは、温まると柔らかくなり冷やされると硬化する。エンジンオイルも同じで、なかでも「鉱物油」は熱の変化に弱い。温度が下がれば粘度が増して硬くなり潤滑性能が低下、逆に温度が高くても粘度が下がり、シャバシャバになってオイルとしての性能が著しく下がってしまうという性質を持っている。

一方の『化学合成油』。昭和世代には、「バナナで釘が打てるようなマイナス40°の環境でも100%『化学合成油』の“Mobil1”なら潤滑性を保ちます!」。「エンジン内部がたとえ300°に達しても100%『化学合成油』の“Mobil1”ならエンジンを守ります!」。なんてMobil1のキャッチフレーズを引き合い出したほうがわかりやすいだろう。つまりはエンジン内部の温度変化に対して圧倒的に高い性能を保てるのが『化学合成油』なのだ。

4バルブ化やDOHC化など、エンジンが高性能化するとともに発熱量も増えたことで生み出されたより性能のいいエンジンオイルが『化学合成油』というわけだ。エンジンの中でもより高回転側を多用するバイクのエンジン。レーシングマシンやスポーツバイクともなれば10000rpm以上まで回るエンジンも普通にある。なんだか愛車のためには『化学合成油』を使った方がいい気がしてきたね(笑)。

『化学合成油』は燃料希釈の影響を受けにくい

エンジンオイルは鉱物油にせよ『化学合成油』にせよ主成分である“ベースオイル”と“添加剤”の2つで構成されている。「鉱物油」はベースオイルの基礎体力(質)が低いのでどうしても“性能を上げる添加剤”の比率が6:4といった具合に多くなってしまう。100%『化学合成油』(フルシンセティック)など、ベースオイルの質がよくなればなるほど“添加剤”の比率が9:1ぐらいととても少なくて済むのだとか。

添加剤の比率が低いと何がいいのか? トタルエナジーズ・ルブリカンツジャパンさんによれば、難しい言葉で“せん断性”が強くなるという。例えば、オイルにガソリンが回ってしまうことで起こる燃料希釈が起きたような場合にもオイルの質が変質しにくく、シャバシャバになりにくいのが『化学合成油』なのだ。

バイクのソレなにがスゴイの!? Vol.76 『化学合成油』 ~バイク専門用語をわかりやすく解説!

燃料希釈が起こると「鉱物油」の場合、“ベースオイル”と“添加剤”が分離してしまう“せん断”が発生し粘度が著しく低下してしまう。ところが『化学合成油』の場合、燃料希釈が起きても粘度低下が起きにくいとのこと。

『化学合成油』は油膜切れが起きにくくドライスタートが防止できる

「鉱物油」よりも『化学合成油』が優れる特性として“ドライスタートも起きにくい”ということも挙げられるという。ドライスタートとは、エンジンを止めて放置した際に“摺動部分からオイルが落ちきってしまい油膜切れを起こした状態”でエンジンをスタートさせてしまうことで、当然ながらエンジンにあまりよろしくない。

「鉱物油」の場合、エンジン停止後8時間でドライスタートの可能性が出てくるのに対し、『化学合成油』の場合はGroupでの差はあるものの、最低でも3日~5日くらいの放置で油膜切れが起きることはないという。ちなみに最上級のエステルベースの『化学合成油』の場合、2週間くらいはドライスタートを起こす心配がないとのこと。『化学合成油』ならエンジン停止後も長時間にわたって各パーツにオイルが付着し続けるのでドライスタートが起きにくいというわけだ。

旧車のエンジンオイルに『化学合成油』は良くないってホント?

「とにかくエンジンオイルは定期的に変えてください!」と語るトタルエナジーズ・ルブリカンツジャパンさん。

「エンジンの性能維持のために、とにかくエンジンオイルは定期的に換えてください!」と語るトタルエナジーズ・ルブリカンツジャパンさん。

 

『化学合成油』にまつわる話でよく聞くのが、“旧車とよばれるような古いバイクのエンジンに『化学合成油』を入れるとガスケットからオイル漏れを起こすから「鉱物油」の方がいい”という話。これにも実は理由があるとのこと。Group4の「PAO」を主成分とする『化学合成油』を旧車のエンジンオイルに使用するとエンジンのガスケット(シール)を縮ませてしまい、結果としてオイル滲みやオイル漏れが発生する可能性が出てくるといいう。

ちなみにガスケットに対する攻撃性に関しては、Group1&2の鉱物油なら良くも悪くも変化がなく、最上級のエステル系の『化学合成油』もガスケットに対する攻撃性はないとのことだ。

 

というわけで今回は、『化学合成油』についてトタルエナジーズ・ルブリカンツジャパンさんに色々お聞きしてみたが、『化学合成油』のエンジンオイルにも色々なランクがあることがわかった。またバイクのようなエンジンオイルへの負担が大きな乗り物なら「鉱物油」よりも『化学合成油』の方が利点が多く、スポーツ走行などより過酷な条件で使用するならエステルベースの100%『化学合成油』だと最大のパフォーマンスが得られるということになりそうだ。

 

 

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