タンクが空になってしまったら悲惨……

「オレ、ガソリンのツンとした匂いが嫌いなんだよねぇ~。だから愛車には絶対にガソリンを入れないんだ!」というライダーはいないはずです(笑)。

ごくごく一部の電動バイク&スクーターやディーゼルエンジン搭載車を除き、バイクはガソリンを燃料にして走るもの。燃料タンクが空になってしまったら、さっきまで峠を蝶のごとく走り、自分と大量の荷物とを100km/h以上で高速移動させてくれていた頼もしき相棒も、ただのクソ重たい鉄とアルミと樹脂とゴムのカタマリになってしまうのです。

ガス欠イメージイラスト

●スクーターならまだしも、GSを探してビッグバイクを当てもなく押し歩くなんて考えたくもありません。筆者は昔、カワサキKDX125SRでガス欠してしまい「軽いバイクだからいってみるか!」と10㎞ほど押した経験があるのですが、冗談抜きで気を失いそうになりました……

海の上にあるオイルロードが日本の生命線!?

そんなガソリンは地底深くから苦労して取り出した太古の生物の慣れの果ててある“原油”から作られている……ことは前回述べたとおり。

残念ながら我が国での産出量は微々たるものですので、現在は主に中東地域の国々から主に購入し、載貨重量30万トンクラス!という超巨大なタンカーを何隻も使って日々粛々と運び込んでいるのです。

タンカー写真

三井E&S造船株式会社が2019年に完成させた最新のVLCC(大型石油タンカー)「エイシャンプログレス シックス」。狭い海峡を通過できるサイズでありつつ最大限の載荷重量と高度なエコ性能を両立させた次世代エコシップ!

 

アラビア湾を出たあとホルムズ海峡やマラッカ海峡といった難所をくぐり抜け、約1万2000kmにも及ぶ海の“オイルロード”経た原油は北海道から九州まで全国21カ所にある製油所で常圧蒸留されていきます。

オイルロードイメージ

●インド洋と東シナ海を結ぶマラッカ・シンガポール海峡は、狭く浅いことで有名な難所。そのような場所をくぐり抜けることで原油は日本へやってくるのです(図版出典:石油情報センター)

 

その能力は合計で345万7800バレル/日(2020年10月末現在。石油連盟HPより)。ちなみに「バレル」とは原油や石油類を計量する容積の単位で1バレルは約158.9ℓですので、この数値を我々になじみの深いリットルで換算すると、日本にある全製油所では1日当たり原油を54億9444万4200ℓ処理することが可能だということ。……途方もない量なので逆にワケが分からなくなってしまいました(笑)。

蒸留……理科の実験を思い出してみてください

と、いってもガソリンだけが1日約55億ℓ生み出されているわけではありません。先ほどサラリと「常圧蒸留」という言葉を挟み入れましたが、そうなのです。原油は製油所の加熱炉で350℃以上という高温にあたためられ、高さ50mにもなる「常圧蒸留装置」という塔へと送られます。

すると沸点の低い、揮発性の高い物質ほど塔の上のところで取り出されるという仕組み。大まかに言って塔の天井からはLPガスが、35~180℃ラインにある棚には我らがガソリンやナフサが……。

製油所のイメージ

●ウイスキー、焼酎、ジン、ウオッカ、ラム、テキーラ……。「蒸留」と聞くとお酒を思い出してしまう紳士淑女の方々も多いと思われますが、ガソリンも蒸留によって作られているのです(図版出典:石油情報センター)

 

以下、170~250℃ゾーンから灯油やジェット燃料、240~350℃の部分から軽油が抽出され、高温でも気化しないドロドロの部分から重油やアスファルトを回収するという具合。そこからまた様々な装置で硫黄などの不純物を取り除いていかなければならないため、我々がよくテレビなどで目にする製油所の風景には、複雑怪奇に入り組んだパイプや複数の塔、大小のタンクたちが映り込んでいるというわけです。

製油所イメージ

●必然が生み出す機能美……。どこか人間くささも感じさせる製油所の風景はツーリングの目的地としても面白いかもしれません。特に夜間、周囲の工業コンビナートとともに無数のライトがきらめく姿は“映え”るので、インスタグラムなどに投稿する方も多数……。もちろん、撮影を行うときは合法的にマナー良く!

レギュラーとハイオクの違いとは?

なお、日本で売られているガソリンにはレギュラーとハイオクの2種類があり、国産車でもスーパースポーツモデルなどはハイオク指定されることが増えてきました。

かくいう2つのガソリンの区別は「オクタン価」によって決められています。実のところ常圧蒸留装置で取り出したばかりのピュアなガソリンは非常に燃えたがりで、仮にそのままエンジンに使うとピストンの上昇によって燃焼室内の圧力が高まるだけで、スパークプラグによる点火を待たず勝手に発火してしまい異常燃焼を誘発……俗に言う「ノッキング現象」と起こしてしまうのです。

「カリカリ」や「カラカラ」というドアをノックするような金属音が聞こえてくる状態はエンジンに大変な負荷がかかり、最悪の場合には壊れてしまうこともあります。

ノッキングイメージ

●ノッキングとは扉をコツコツたたくことを意味する言葉。この写真は牧歌的ですが、ことエンジンにとってノッキングは大敵。混合気の勝手な着火&燃焼によってピストンが想定外の動きをするわけですから……。実際、筆者はとあるバイクを高圧縮比化カスタムしたとき、ケチってレギュラーガソリンばかり入れていたら見事に壊れました……。アホですね

 

それを防ぐための添加剤がガソリンには加えられており、オクタン価とは異常燃焼の起こしにくさを示す値のことで、レギュラーはオクタン価89以上、ハイオクはオクタン価96以上であることが日本工業規格(JIS)で定められています。なお、多くのオーナーにとって気になる疑問、「ハイオク指定車にレギュラーを入れたらどうなる?」またその逆パターンについても、次回にお話することにいたしましょう。

愛車を動かすエネルギーに満ちた液体

誤解されている方もいるかもしれませんが(筆者も以前は……)、ハイオクはレギュラーより“よく燃える”のではなく、逆に“燃えにくい”ガソリンなのです。燃えにくい、つまり混合気になったときギュギュギュギュ~ッと小さく押し込められても異常燃焼を起こさないからこそ、ハイパワーを生み出すために高い圧縮比となっているスーパースポーツモデルなどにも対応できるというわけです。

GSX-R1000エンジン

●写真はスズキGSX-R1000R ABSの燃焼室カットモデル。999㏄の直4エンジンが197馬力を生み出すには高圧縮比化による熱効率向上が絶対条件で同車の圧縮比は13.2にもなります

 

大気と適切な割合で混ぜられることで,アナタが駆るエンジンのパワーを生み出してくれるガソリン。

自分のバイクやクルマに入れるとき、遠路はるばるやってきて沸騰させられ様々な処理や添加物注入を受けてきた艱難辛苦ぶりに少しは思いを馳せてみてください!

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