ふと疑問に思ったことはないだろうか。レッドバロンの店舗に展示されている数多くの中古車は、どうやって好調を維持しているのだろうか、と。
以前からパーツを入手できない絶版車が増え続けており、完調を保つのが難しくなっている。また、走行に関わる機能部品が終了していると、乗り続ることを断念せざるを得ないケースもある。そんな中、一体どんな取り組みが行われているのか・・・・・・?

レッドバロンによる"絶版車を安全に乗るための取り組み”をジックリ解説していきたい!
取材協力:ヤングマシン

 外見はどちらも美麗なホーネットだけど・・・・・・

2007年型で生産終了したホンダのホーネットは「まだ新しめの絶版車」のイメージながら、既に入手できないパーツが多くなっている。

ホンダのパーツリストによるとホーネットの構成品番数は1023品番。そのうち178品番は既にメーカー絶版なのだ。

生産終了しているのは、エンジン内部パーツ(ピストン、クランクケース、クランクシャフト、ヘッド)をはじめ、点火ユニット、キャブレター、キー、タンク、シート、メーター、ホイール、フロントフォーク、リアサスなど。汎用品では代用できず、入手できないと走行できないパーツも数多い。

↑ホーネットは1996年にデビューし、2007年型まで生産された人気ネイキッド。今では貴重な250cc並列4気筒をモノショクやワイドタイヤの車体に積む。グラマラスなボディとアップマフラーによるスタイルも魅力だ。


ホーネットは中古市場で大人気の1台だが、絶版によりパーツが入手できないために、不具合のある部品を交換していない中古車が流通している可能性がある。当然これはホーネットに限った話ではない。

こうした状況を憂慮し、レッドバロンがプレス向け試乗会を実施した。それは、レッドバロンがしっかり整備した車両と、純正パーツの欠品により不具合のあるキャブレターとリアサスを直すことができないままの車両を擬似的に再現した車両を乗り比べてみるというものだ。

 まず外観を見比べてみると……違いがわからない笑(年式も色も一緒!)。

↑どちらかがNG車だけど、2台とも外観がキレイ。見ただけでは不具合がわからない。悪質なショップや個人なら、状態の悪いNG車も高値で販売していそうだ。ちなみに走行距離は約3万9000kmと約2万9000kmだった。

乗ればサスの不調はすぐわかったが、キャブはわかりにくい!

さっそく走ってみると、NG車のリアサスの不調は乗ってみてすぐわかった。スロットルを開けた際などリアに力が加わると踏ん張りが利かず、バネの力が如実に出てボヨンボヨンした乗り味。内部のサスオイルがほぼ抜けている状態で、ダンパーの効果がないのだ。

↑走行中! NG車はリアがフワフワして、特にコーナリングが走りにくい。

↑こちらはNG車両のリアサス。たまたまスプリングに汚れがあるが、不具合は外見から判別できない。

 

しかしキャブの不具合はわかりにくい。NG車も特に問題なくエンジン回転が上昇し、いい音をさせていた。しかし正常車と比べると、やはり回転が上がるのが遅く、高回転まで引っ張った際に頭打ち感がある。ただ、直接比較しないと「こんなものかな」で済ませてしまいそうだ。

↑こちらが燃料供給装置のキャブレター。内部のバキュームピストンに亀裂があり、バタフライバルブにすき間、1番のスロー詰まりなどの問題があるとのこと。

 

今回の試乗会のようにコンディションのいい車両と乗り比べできる機会などまずない。ネットの個人売買などで、こうしたNG車を知らず知らずのうちに買っている人も多いのではないか? と心配になってしまう。

一方の完調車は当然ながら文句なし。250cc4の爽快な吹け上がりとチュイーンという高回転サウンドを堪能。頭打ち感や回転上昇が鈍い、なんてことはない。さらにビッグバイク並みの180mm幅リアタイヤが生み出す安定したコーナリングも実に楽しい。リアサスもしっかり踏ん張り、安心して倒し込みやコーナー出口でのスロットルオンができた。

↑こっちは完調車。走っていて気持ちイーーッ!

末永く乗るために膨大な絶版パーツをストック

一般的に車両メーカーのパーツ在庫義務は、生産終了後からわずか7年とされている。この期間を過ぎたパーツの供給は保証されないのだ。それゆえ2007年型で殿堂入りしたホーネットも既に絶版パーツが多くなっている。

ということは、'16年頃絶版になったモデルでさえ、早くもパーツが「欠品」の場合もある。当然もっと古いバイクの状況は推して知るべし……だ。部品が入手できないために修理できないかも、と考えると絶版中古車を買うことに二の足を踏んでしまう人もいるだろう。

そこで、国内に306店舗ものバイク販売店を直営するレッドバロンは、自社で販売した中古車に継続的なパーツ供給ができるシステムを構築。本社工場にバイクを分解&リビルドする施設と、膨大なパーツをストックするヤードを設置している。

先程のホーネットのように、メーカーで欠品だったとしてもレッドバロン本社工場で在庫しているパーツを使って修理ができる。ホーネットのパーツはなんと5665個も在庫しており、過去1年間で1万374個出荷してユーザーを支えているという(在庫数は2023年3月現在)。

↑写真は分解途中のホーネット。愛知県岡崎市にあるレッドバロン本社工場には、全国から不動車や部品取り用のバイクが集められる。不動車はもちろんだが、修理すれば中古車として販売できる車両でも、敢えて部品ストックのために搬入されるケースもあるという。

↑パーツごとに分解され、点検の後、使用可能な部品はそのままストック。特に走行に影響がある機能部品は綿密にチェックを行う。

 

問題のある部品でも再生可能なものは修理して活用している。このようにメーカー基準に沿ったリビルドを施すことを、同社では「加修」と呼んでいる。ホーネットの場合、タンクを交換するケースが最も多く、レバー、Fフェンダーがこれに続く。

↑パーツは車種別のコンテナにストック。この一角が全てホーネットの部品というから驚く! 「メーカー欠品」として前述したパーツもシッカリ揃っており、見本となる完成車両まで保管しているのが大きな特徴だ。


もちろんホーネットだけでなく、店頭に展示されている絶版車も同様に本社工場のストックによって完調を保っている。

こうしたシステムによってレッドバロンでは最長3年間、中古車にパーツ供給を含む修理体制を有償で維持する「パーツ保証」を実現している。万一「走行機能に影響を及ぼすパーツの供給」が困難になった場合、使用期間に応じた償却分を差し引いた査定金額で買い戻してくれるというから太っ腹だ。

いよいよ次回はレッドバロン本社工場に潜入! このパーツ保証を支える巨大システムについて詳細を見ていこう。

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