8耐、24耐なんてメじゃなく動き続ける身体

今回はまず、アナタ自身の体について思いを巡らせてみてください。胸や首筋に手を当てて心臓の鼓動を感じたり、お腹、腕、足などをさすって凝っている部分がないかチェックしながらでもオーケーです。

呼吸は無意識のうちに酸素を取り込み二酸化炭素を吐き出し、肌は適度に湿気をたたえ、血液は手と足の指先に至るまで絶えず循環しています。よくよく考えてみれば、ご先祖様からいただいたこの大切な肉体が、凄いことを平然とこなしている事実に驚きませんか? 

我々は毎朝目覚めて活動し、食事を摂り、適宜排泄し、就寝し、また目覚めています。自覚などしなくとも心臓は勝手にビートを刻み、飲み込んだ食物はいつの間にやら生きるエネルギーへと変化しています。メンテナンス中、車体のバリでちょっとした切り傷を作っても出血はすぐに止まり、かさぶたがちゃんとできて気が付けば元通り。

マフラー交換中の風景

●簡単な作業でも油断をするとケガのもと。愛車が血に染まらないよう気をつけましょう。肌表面の表皮を越えて真皮まで欠損すると痛みも激しく治るまで時間がかかります

 

面白ければ笑い、悲しければ泣き、ささいなことで怒ったり落ち込んだり。思春期を越えれば恋をして有頂天、うまく意中の相手と相思相愛になれたなら子宝に恵まれることもあり、また次世代へと生命がつながっていく……。生まれてから成長し、天に召されるまでの耐久レースをひとりひとりが自分の身体とともに走り続けているのです。想定外のピットイン(ケガや病気などでの入院、自宅療養など)をしないよう、健康にはくれぐれも気をつけていたいものですね。

人体は37兆個のパーツの集合体!

そんな私たち人間の体は約37,000,000,000,000(37兆)個の細胞で構成されています。もともとたったひとつだった受精卵が分裂を繰り返して途方もない数へと増殖し、脳、骨、筋肉、神経、血液、目、鼻、口、内臓、皮膚などがうまい具合に形作られて、私もアナタもひとりの人間として完成しているということ。知れば知るほどその玄妙さに驚くばかりです。

人間の臓器配置が分かるイメージイラスト

●肺、心臓、肝臓、すい臓、脾臓、胃、小腸、大腸……もともと1個の細胞が37兆個まで分裂し、複雑この上ない人体が構成されています。その設計図(DNA)がその細胞ひとつひとつに入っているって……信じられますか?

 

ちなみに1台のバイクを構成する部品点数は、車両によっても異なりますが600~1500個くらいだとか。それがクルマになると約2.5万~3万個となり、ジャンボジェット機に至っては約400万~600万個にもなるとか(エンジン1基だけで10~20万個!)。圧倒的な数ではありますけれども人体が備える細胞数の足元にも及びません。

かくいう天文学的な量の細胞が様々な情報を脳(こちらだって細胞の集合体です)へ伝え、瞬時に判断された指令を神経が体の各部へ伝達し、一糸乱れぬ反応を積み重ねることで私たちは【生きて】いられるのです。

自分の中にある「小宇宙」を感じよう

はるか昔のご先祖様も空を眺め、自分の体をさすりさすりしながら考えをまとめていったのでしょう。何千、いや何万年となく森羅万象を観察することで確立された東洋医学の世界では、「人と自然は一体である」という【天人合一思想(あるいは天人相応)】という理念が非常に大きなウエイトを占めています。

人間は生きていくために必要な空気も食物も、すべて自然界に依存している。つまり人の生命活動の源泉は、天と地からなる大自然(大宇宙)にあるといえる、ということが考え方のスタート地点。

ひるがえって人体の内部に視点を移してみると、そこにも小自然(小宇宙)が存在しており、体を構成する細胞、組織、器官は、それぞれ異なった機能を受け持ちつつ、同時に全体として有機的なつながりをもったひとつの自然(宇宙)のような統一体をなしているではないか……。

『そうなのか、人は自然の一部であり、人の中にもまた自然が存在するのだ!』という先人の気付きから導かれた前述の【天人合一思想】が、東洋医学のプラットフォームになっているのです。

宇宙をイメージした夜明けと走る男性の写真

●体内は宇宙……。言われてみればとても腑に落ちる言葉。人体各部の精緻な活動ぶりは、そうとでも考えなければ理解かつ納得できないほどの不思議さに満ちています

 

なお、小宇宙という字面を見ると「コスモ」と呼びたくなるのは聖闘士星矢ファンあるあるですが、ここでは関係ありません。アテナ……。

体を治す答えは自然の中にあります

ボタンを留める桜井つぐみ

実際、自然界では暖かい空気や水は上へ向かい、冷たいそれらは下へと沈みます。これは人体も同様で、上半身はほてりやすく、下半身は冷えやすい傾向があるもの。このように自然界で起こる現象と人の症状とが同じような法則性を持っていると考えて、病気の診断や治療に応用していくのも東洋医学の大きな特徴なのです。

例えば「頭寒足熱」は、つらい冷えを緩和して、思考をスッキリとさせる秘訣であり、健康な体の状態でもあります。

寒い時期にライディングするときは足首を露出しないようにして、太ももやヒザ周辺の保温にも配慮いたしましょう。長時間走り終わったあとの疲れ具合が違いますよ!

ハイカットのライディングシューズ

●転倒時にくるぶしを護ってくれるハイカットのフットウエアは、ライディングの必須アイテム!

 

裾をシューズの上に被せる

●寒冷時、足首に走行風が侵入してこないよう適切な工夫を忘れずに。忘れると集中力まで途切れます……

 

【関連記事】
> 120歳まで乗り続けるために〈第3話〉 ライダーのための「温故知新」

> 120歳まで乗り続けるために〈第5話〉 ライダーのための「陰陽学説」

> 120歳まで乗り続けるために〈第6話〉 ライダーのための「五行学説」

 

SHARE IT!

この記事の執筆者

この記事に関連する記事