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五つそろってゴギョウジャー!
私が現在学んでいる東洋医学の世界は、それはもうすべてが刺激的で興味深いのですけれど、中でも今回ご紹介する「五行(ごぎょう)学説」は【沼】です(笑)。
陰陽学説とともに東洋医学の基本概念を成している古代中国の哲学理論で、自然界や人間を含め、この世のありとあらゆるものを「木(もく)」「火(か)」「土(ど)」「金(こん)」「水(すい)」という5つの性質に分類し、その関係性を考えながら病気の治療や養生ほか幅広いものへ積極的に活用していこうというもの。
それぞれの特性(キャラクター)が確立した個性的な5つの力(メンバー)が、時に反目したりケンカをしながら力を合わせ、体内という小宇宙の平和を守るためにも活躍してくれる……。
これはまさに1975年に放映を開始した秘密戦隊ゴレンジャーに端を発する「スーパー戦隊シリーズ」そのものではないか!と、50歳オーバーのオッサンは授業を受けつつニヤニヤしていました。キレンジャーの食べるカレーは本当に美味しそうでしたね。
木は曲直(きょくちょく)=樹木のような性質を持つエネルギー。色は青
では、それぞれの特徴を簡単にですが紹介していきましょう。
曲直というのは樹木が障害物に当たればうまく避けるように曲がり、そちらがなくなれば再びスッと真っ直ぐ上を目指していくという木が持つ「特性」を漢字2文字で表したもの。
色は青とありますが、このように色味だけでなく、自然現象や季節、方位、体の中にある臓腑などについても、この5つの要素ごとに分類がなされており、そちらは【五行色体表】というものにまとめられています。
見ていくと木は五色(色味)が青ということ。他にも五時(季節)ならば春、五方(方角)だと東、五臓は肝(東洋医学での肝は、西洋医学で言う肝臓と同一ではないのですが、そのあたりは改めてご紹介いたします)、五官(感覚器)なら目、五味だと酸……などなど。
一般的に30種類近くの配当を記した表なら調べるとすぐに出てきます。五臓それぞれを補う果物や野菜、肉なども設定されており「ほほう。へぇ!」と眺めていて飽きることがありません。
火は炎上(えんじょう)=そのまんま上へ燃えさかるイメージ。色は赤
今や「炎上」と聞くとSNSでやらかしてしまい収拾がつかない状況、という雰囲気ですがこちらでは夏に万物がグングン成長するというニュアンスも含みます。
そんな火の五臓は心、大まかなイメージとしては心臓です。五時=夏、五方=南、五官=舌、五味=苦。
土は稼穡(かしょく)=種をまかれて収穫する力……土だけに。色は黄
土と聞くと頭に浮かぶのは、万物を育てるどっしりとした大地というビジョン。キレンジャーのイメージとも合致いたしますね。五時は長夏。聞き慣れない言葉ですが、中国大陸では夏と秋の間に暑くて湿度の高い時期があり、そちらを長夏と呼ぶそうです。
あと、年に4回ある季節の変わり目を「土用(どよう)」と言うのも五行学説が由来だとか。
なお、夏の土用の丑の日にウナギを食べる習慣は、エレキテルも作った江戸時代のマルチクリエーター、平賀源内さんが考えたという説が広く知られているものの、実のところホントかウソか真偽のほどは不明とのこと。五臓=脾。五方=中央、五官=口、五味=甘などなど。
金は従革(じゅうかく)=金属は人の加工に従うという性質。色は白
木すら切り倒すことのできる硬さと鋭さを持つ金属は、斧やノコギリのように使い手の意向に合わせて従順に形を変えるという一面も持ちます。五臓=肺、五時=秋、五方=西、五官=鼻、五味=辛、ほか。オカネという概念は入っていないので、ご注意のほどを。
水は潤下(じゅんか)=下へ向かい、どんな形にもなるもの。色は黒
水は高いところから低いところへ間違いなく流れていき、地の中にあっては万物を生み出す源となる、というイメージが一番近いようです。五臓=腎、五時=冬、五官=耳、五味=鹹(かん。塩辛い味という意味)。
五行は「言われてみれば……」の宝庫です
五行学説の簡単な活用法としては、季節ごとに弱くなりがちな場所や、それを養生する方策が分かるということ。仮に「冬」なら、冬ならでは冷えが「腎」に影響を与えやすく、おしっこが近くなったり膀胱炎を起こしやすくなったりします。そちらに関連する体調が悪化していくと顔色は「黒」ずんだり、「耳」が遠くなったりすることも。そんなときは塩辛い「鹹」な味の料理を適度に摂取すれば、体内のバランスをうまく調整できたりするとのこと。日々の生活に生かせる知恵が満載です!
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