ガソリンが2種類ある必然性とは?

ハイッ! ハイッ! ハイハイハイッ! あるある探検隊ッ! あるあ(以下繰り返し)……こちらはお笑いコンビ「レギュラー」さんのツカミですね。大気と適切な割合でミックスされた混合気がエンジン内で急速燃焼するような、爆発力のあるネタが大好きでいつも楽しませてもらっております。

テレビをみて大笑いのイラスト

●少し検索してみたのですが「ハイオク」というお笑い芸人さんはいらっしゃらないようですね……。ちなみにレギュラーさんの芸名の由来は「テレビで多くのレギュラー番組を獲れるように」というところから、だそうです

 

ちなみに部活系少年少女にとっては学生時代を左右するほどの価値を持つレギュラー(regular)という言葉は「標準の、正規の、通常の」という意味で、辞書をひもとけば「ものさしどおりの」というラテン語がその語源だとか。

ガソリンもレギュラーがまさに“標準”で、ハイオクは性能アップされたエンジンに適した仕様を持たされているのです。

前回も述べましたが、ハイオクガソリンとはレギュラーガソリンよりオクタン価が高い(圧縮により自己着火しにくい)製品だからこそ、高圧縮化による高出力化を目指したスーパースポーツなどの心臓にピッタリ。

GSX-R1000Rエンジンカット写真

●写真はスズキGSX-R1000Rのパワーユニットカットモデル。最高出力:197馬力、最大トルク:11.9kgmを発揮する999㎤水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブエンジンの圧縮比は13.2

 

ちなみにそのハイオクのオクタン価は98~100程度で、レギュラーは90~92程度。この差はズバリ、精製されたばかりのピュアなガソリン(オクタン価50~55程度)に加えられる各種添加剤の違いとなっているのです。

ちょっとのお金をケチって大損害(涙)

では、ハイオク仕様のバイクにレギュラーガソリンを入れてしまったらどうなるのでしょうか。

イマドキのFI(フューエルインジェクション)化されたバイクにはエンジン内の異常燃焼……つまりノッキングを感知するノックセンサーが装備されており、オクタン価が低いゆえの自己発火で起こる振動を検出すると点火タイミングを遅らせて(リタードといって圧縮比を下げたのと同じ効果が得られる)対処を行います。パワーはダウンしますが、エンジンが壊れることはありません。

KATANA カットモデル

●高度に電子制御化された最新のバイクは燃料のオクタン価が推奨値より低くなっても,しっかり対応をしてくれるので安心。とはいえエンジンを保護するためパワーダウンをするなど、開発者が狙った性能は発揮できませんので、宝の持ち腐れ状態になってしまいますよ!

 

ただし……以降は私の大失敗談なのですが、キャブレター時代のとあるデュアルパーパスモデルが搭載する空冷単気筒エンジンにボアアップキットを組み込みました。圧縮比も高まるのでキットの取扱説明書には「ハイオクガソリンを使用のこと」としっかり書かれていたのですが、当時の私は何を血迷ったのか、1ℓで10円程度の差しかない燃料代をケチるためレギュラーを入れ続け、見事にエンジンを壊してしまったのです(十数万円がパー!)。

壊した車両イメージカット

●嗚呼、今思い出しても涙が頬を伝ってくるほど情けなく悔しい思い出(写真はイメージ)。ハイオクガソリンが存在する意味すら正しく認識していなかった人間が空冷キャブ車へハイコンプピストン導入なんてすると悲劇しか生まないという教訓だけが残りました

 

ノッキングも出ていたのでしょうけれど「こんなものかな」とスルーしていたのですから知らないというのは恐ろしい……。というわけで、特にキャブレター仕様の古き良きエンジンを高圧縮化したときは、必ずハイオクガソリンを使うことをお薦めいたします。

レギュラー仕様車にハイオクを入れると?

前述のようにイマドキの新車ならハイオク仕様車にレギュラーガソリンを入れても壊れることはないのですが、そのバイクが本来持っているポテンシャルを発揮できないのですからもったいない話。ケチらず指定の燃料を入れましょう。

では逆に、レギュラー仕様のバイクへハイオクを入れたらどうなるのか? 

定説となっているのは「問題なし。圧縮比が上がるわけではないのでパワーアップはしないけれど、エンジン内に汚れを付きにくくする洗浄剤に差額約10円の価値を見いだすのなら試してみては?」という論調。

しかし……私は本来レギュラー仕様であるGSF1200S、ジェベル200、XR100モタードという愛車すべてにハイオクを注入しています。なぜならとにかく長期放置後の再始動性が段違いに良いと感じるため。ハイオクならではの洗浄剤か、あるいは違う成分かがキャブレターの快調さを維持しているとしか考えられません。

小川の愛車群

●過去に煮え湯をイッキ飲みした空冷単気筒キャブ車が2台に夏場に乗ろうものならホットホッターホッテストな油冷4発キャブ車が1台。幸か不幸か走行距離も思うように伸ばせない現在、ガソリン消費量も少なめなので約10円の価格差が全く苦になりません。迷うことなくハイオクを注入しております

 

また灼熱の夏場、エンジンが超高温(自己着火の危険度アップ)になりがちな油冷、空冷、空冷のモデルたちですので、せめて燃料でノッキング対策を……という思いもあります。

少なくとも私は実際に比較してみて、約10円の価格差を納得いたしました。もしこの話にピンときたレギュラー仕様車オーナーがいらっしゃるようなら、ハイオクを試してみるのもアリですよ、と背中をポポンと押させていただきます。

ライダーは高額納税者でもある!?

あと、ハイオクをお薦めするあまり喜べない理由は……高値安定しているガソリンの価格。

これまで何度も述べてきたように、現在レギュラーガソリンは1ℓで158.1円(2021年9月6日時点の全国小売り現金価格平均値:石油情報センター調べ)前後で推移しておりハイオクはそちらにプラス約10円。

レギュラー1ℓ100円時代の10円差と同1ℓ158円時代の10円差とでは差額の“重み”が大きく変化したため、結果的に割安感が出てきた……というのもあんまりな話ではあるのですが(涙)。

ちなみに158円のうち実に70.96円が税金だ、ということも覚えておきましょう。

ガソリンの小売価格は「本体価格+ガソリン税(揮発油税+地方揮発油税)+石油税+消費税」で構成されており(両揮発油税にもそれぞれ“本則”と“暫定”があって、ややこしい!)本体価格はたったの87.04円なのですね。

そちらに消費税が掛けられることは理解も納得もできるのですけれど、なぜか本体価格にガソリン税(本則:28.7円、暫定:25.1円)と石油税(2.8円)を足した合計額に10%の消費税が掛けられているのが現状です。

そのことが「本来やってはならない税金の二重取り、二重課税だ!」という声もあり、実際に見直そうという機運も何度か高まったのですけれど結局棚上げで、逆に負担は増えるばかり……。

税金泥棒のイラスト

●いつまで経っても終わらない「暫定」税率や時代の変化により法的根拠が薄くなった項目での課税などは、早急に見直していただきたいもの。それだけでガソリンの価格は大幅に下がる可能性があるのですから……

 

というわけで「オレが購入しているガソリンは愛車だけでなく国も動かしている!」と書けばカッコイイものの、少々疑問に思う部分も散見されるガソリンの小売り価格。

ライダーたるもの、相棒の心臓を動かす大事な液体のことですから詳細を調べて理解しておきましょう!

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