第5回から「那須MSLライディングカレッジ」編に突入したライテクUP講座。いよいよ今回から具体的な講習内容を解説していこう。メイン講師は、ライディングスクールと同じ中井直道さん。基本のリーンウィズがいかにスゴいか、目からウロコのレッスンをお届け!
シックな装いでベテランのインストラクター陣が登場
那須モータースポーツランドで開催される「那須MSLライディングカレッジ」(以下、カレッジ)。集合時間8時30分、9時開始なのは「那須MSLライディングスクール」(以下、スクール)と同様だ。ここから16時までたっぷりレッスンを受けられる。
ちなみに筆者は、2020年に行われたメディア向けの“プレ開催”に参加しているが、本番の受講は初めて。大まかな内容は覚えているが、身に付いている自信は全くない……。
まずは講師陣が登場。スクールと違い、講師陣のユニフォームがブラックで統一され、より落ち着いた雰囲気だ。メイン講師の中井直道さんがあいさつし、前回のようなスクールとカレッジの位置付けを解説。あくまでサーキット走行が目的ではなく、ワインディングなどの公道を主眼にした講座である旨が説明される。
「操作と動作」を連動させ、縦の動きを意識する
準備運動で体をほぐしたら、ライディングポジションの解説だ。
ステップの上に直立し、股下で車体をホールドしながらジワジワと腰を降ろしていくのはスクールと同様(詳細は全ての基礎、ライポジは直立→ジワジワで作れ!【ライテクUP 講座1】を参照)。カレッジも公道向けのレッスンなので、ライポジは変わらないのだ。
ここで重要なキーワードが中井講師から出た。
「カレッジでは、『操作だけでバイクに乗らない』ことを重視しています。スロットル、ブレーキ、ステアリングなど様々な操作がありますが、必ず身体を連動させてください」
スロットルやブレーキは手で操作するが、それだけではなく、加速時は上体を前傾させ、減速時は上体を起こす。こうした身体の動きによって、さらにしっかりとした加減速が可能になる。それがライディングカレッジの大きなテーマでもある「操作と動作の連動」につながるという。
そしてキーワードその2が「縦の動き」を意識することだという。
「しっかり加速、減速させるのはもちろんですが、よりバイクを積極的に曲げるために前後の“シーソーの動き”が重要になってきます。フロントフォークが沈んだ状態ではタイヤが路面にしっかり押し付けられるため、グリップ力を引き出せます。このように“荷重がかかった状態”でコーナリングするとクリッと曲がれます。
加速も同様です。コーナーの立ち上がりでスロットルを開けていく際、普通に開けても十分曲がれますが、よりしっかりスロットルを開けると荷重がかかってグイッと曲がれるのです」と中井さん。
実はモトGPのフォームもリーンイン&ウィズ気味
こうした縦の動きに対し、ライダーが働きかけやすいフォームがリーンウィズという。
「リーンウィズは、人体の中でも重い頭部が車体の中心線上に位置します。バイクに荷重をかけやすく、路面とタイヤとのコンタクトが取りやすいフォームです。
リーンウィズと聞くと"安全運転”のイメージがありますが、非常にレベルの高い走りでも使います。現在のモトGPやスーパーバイクでも、リーンウィズやリーンインに近いフォームが多い。必要な分だけ下半身を落としていますが、ヒザは畳んでいます」(中井さん)
“サーキット走行”と言えば、どうしてもハングオフやヒザすりのイメージがあるけど、荷重がかかっていない状態(サスがしっかり沈んでいない状態)だとタイヤが滑ってしまうという。
「下半身をホールドしていない状態で、形だけ身体をイン側にずらしてしまうと転倒してしまいがちです。特にウエット路面などグリップの悪い路面では危険。ヒザをするのはOKですが、その前にリーンウィズでしっかり縦に荷重をかけることを意識してください」(中井さん)
前述のとおり、荷重をかけるのは地面にタイヤを押し付け、グリップ力を上げるのが目的。荷重をかけるためにはバイクの前後の動きを意識し、リーンウィズのフォームが有効というワケだ。
ヒザすりしなくてもタイムアップが成功する!?
なお、使うライディングフォームもスクールとちょっと違う。スクールではリーンウィズのほか、小回りするためにリーンアウトを多用したが、速度レンジの高いカレッジではリーンウィズとリーンインを主に使う。
「カレッジでは小さいターンは練習しません。リーンウィズを基本に、コース走行で速度域が上がったらリーンインを使ってみてください」(中井さん)
速度が上がるほど遠心力も強くなる。リーンウィズで対応できない速度域は上体を内側に入れるリーンインの出番だ。
そして中井さんがインパクトのあるワードを放った。
「カレッジでリーンウィズの可能性を引き出しましょう」
リーンウィズの可能性! これでタイム更新ができれば、さらに面白い。オラなんだかワクワクしてきたぞ(笑)。
次回からいよいよ実践開始だ!
●「那須MSLライディングスクール」の記事はコチラ!
全ての基礎、ライポジは直立→ジワジワで作れ!【ライテクUP 講座1】
大きく入って小さく回る。これぞ走りの極意!【ライテクUP講座 2】
安全で速いのは直線的に立ち上がるライン!【ライテクUP講座3】
長くバイクを楽しむために。己を知って上達しよう!【ライテクUP講座4】
次回はコチラ 【動画解説あり】フロント荷重でスルッと曲がれ【ライテクUP講座7 カレッジ編】