第5回から「那須MSLライディングカレッジ」編に突入したライテクUP講座。いよいよ今回から具体的な講習内容を解説していこう。メイン講師は、ライディングスクールと同じ中井直道さん。基本のリーンウィズがいかにスゴいか、目からウロコのレッスンをお届け!

シックな装いでベテランのインストラクター陣が登場

那須モータースポーツランドで開催される「那須MSLライディングカレッジ」(以下、カレッジ)。集合時間8時30分、9時開始なのは「那須MSLライディングスクール」(以下、スクール)と同様だ。ここから16時までたっぷりレッスンを受けられる。

ちなみに筆者は、2020年に行われたメディア向けの“プレ開催”に参加しているが、本番の受講は初めて。大まかな内容は覚えているが、身に付いている自信は全くない……。

まずは講師陣が登場。スクールと違い、講師陣のユニフォームがブラックで統一され、より落ち着いた雰囲気だ。メイン講師の中井直道さんがあいさつし、前回のようなスクールとカレッジの位置付けを解説。あくまでサーキット走行が目的ではなく、ワインディングなどの公道を主眼にした講座である旨が説明される。

↑「スクール」と同じく「カレッジ」でもメイン講師を務める中井直道さん。25年以上携わってきた安全運転スクールの実績と、鈴鹿8耐に20回出場した経験を併せ持つ。

 

↑片平亮輔(りょうすけ)インストラクターは、那須MSL出身のプロライダーで「那須のロッシ」の異名を誇る! 2009年もてぎ選手権のST600でデビューし、翌年国際ライダーに特別昇格。2012年全日本JSB1000で年間12位、鈴鹿8耐には7回の出場経験がある。

 

↑山本陽大(あきお)インストラクター。2017年に岡山国際ロードレース選手権ST600クラスでチャンピオンを獲得し、翌年国際ライダーに。2020年、MFJ公認インストラクターライセンスを取得し、安全運転スクール活動を行なう。那須MSLライディングスクールでもおなじみだ。

「操作と動作」を連動させ、縦の動きを意識する

準備運動で体をほぐしたら、ライディングポジションの解説だ。
ステップの上に直立し、股下で車体をホールドしながらジワジワと腰を降ろしていくのはスクールと同様(詳細は全ての基礎、ライポジは直立→ジワジワで作れ!【ライテクUP 講座1】を参照)。カレッジも公道向けのレッスンなので、ライポジは変わらないのだ。

↑バイクを垂直に立てた状態で、ステップの上に直立。

 

↑ゆっくりジワジワと腰を下ろすとベストな着座位置に。下半身のホールドや腕の脱力はマスターしている前提で講義は進められる。


ここで重要なキーワードが中井講師から出た。
「カレッジでは、『操作だけでバイクに乗らない』ことを重視しています。スロットル、ブレーキ、ステアリングなど様々な操作がありますが、必ず身体を連動させてください」

スロットルやブレーキは手で操作するが、それだけではなく、加速時は上体を前傾させ、減速時は上体を起こす。こうした身体の動きによって、さらにしっかりとした加減速が可能になる。それがライディングカレッジの大きなテーマでもある「操作と動作の連動」につながるという。

そしてキーワードその2が「縦の動き」を意識することだという。
「しっかり加速、減速させるのはもちろんですが、よりバイクを積極的に曲げるために前後の“シーソーの動き”が重要になってきます。フロントフォークが沈んだ状態ではタイヤが路面にしっかり押し付けられるため、グリップ力を引き出せます。このように“荷重がかかった状態”でコーナリングするとクリッと曲がれます。
加速も同様です。コーナーの立ち上がりでスロットルを開けていく際、普通に開けても十分曲がれますが、よりしっかりスロットルを開けると荷重がかかってグイッと曲がれるのです」と中井さん。

↑旋回する前のブレーキングでは、上体を起こしてGに耐え、フロントフォークがしっかり縮んでいる。

 

↑旋回が終わり、スロットルオン。この操作に連動して、上体がしっかり前傾している。また、リアタイヤがしっかり路面に押し付けられている。

実はモトGPのフォームもリーンイン&ウィズ気味

こうした縦の動きに対し、ライダーが働きかけやすいフォームがリーンウィズという。

「リーンウィズは、人体の中でも重い頭部が車体の中心線上に位置します。バイクに荷重をかけやすく、路面とタイヤとのコンタクトが取りやすいフォームです。
リーンウィズと聞くと"安全運転”のイメージがありますが、非常にレベルの高い走りでも使います。現在のモトGPやスーパーバイクでも、リーンウィズやリーンインに近いフォームが多い。必要な分だけ下半身を落としていますが、ヒザは畳んでいます」(中井さん)

↑ライディングフォームの解説。カレッジではこうしたパネルが多く用意されており、わかりやすいのがイイ。

 

↑レースの世界では、腰をインに落とし込むハングオフが主流だった。しかし近頃はリーンインやウィズ気味のスタイルが増加。写真は2021年モトGPのアンドレア・ドビツィオーゾ(ゼッケン4)で特にウィズ気味。

 

↑こちらもモトGP。バンク角が非常に深く、イン側の足は開くどころか、畳まないとすき間がない。写真のライダーはアレックス・マルケス。


“サーキット走行”と言えば、どうしてもハングオフやヒザすりのイメージがあるけど、荷重がかかっていない状態(サスがしっかり沈んでいない状態)だとタイヤが滑ってしまうという。

「下半身をホールドしていない状態で、形だけ身体をイン側にずらしてしまうと転倒してしまいがちです。特にウエット路面などグリップの悪い路面では危険。ヒザをするのはOKですが、その前にリーンウィズでしっかり縦に荷重をかけることを意識してください」(中井さん)

↑リーンインから腰をイン側にオフセットしたフォームがハングオフ。しっかり荷重をかけた上でハングオフするのは理に適っているが、荷重がかかっていない状態だとタイヤが横に滑りやすい。

 

前述のとおり、荷重をかけるのは地面にタイヤを押し付け、グリップ力を上げるのが目的。荷重をかけるためにはバイクの前後の動きを意識し、リーンウィズのフォームが有効というワケだ。

ヒザすりしなくてもタイムアップが成功する!?

なお、使うライディングフォームもスクールとちょっと違う。スクールではリーンウィズのほか、小回りするためにリーンアウトを多用したが、速度レンジの高いカレッジではリーンウィズとリーンインを主に使う。

「カレッジでは小さいターンは練習しません。リーンウィズを基本に、コース走行で速度域が上がったらリーンインを使ってみてください」(中井さん)

速度が上がるほど遠心力も強くなる。リーンウィズで対応できない速度域は上体を内側に入れるリーンインの出番だ。

そして中井さんがインパクトのあるワードを放った。
「カレッジでリーンウィズの可能性を引き出しましょう」

リーンウィズの可能性! これでタイム更新ができれば、さらに面白い。オラなんだかワクワクしてきたぞ(笑)。
次回からいよいよ実践開始だ!

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