ダックス125の発売でホンダの125ccリバイバルシリーズが完成

2017年にモンキーが生産終了し、翌年125ccになって復活したことに端を発するホンダの125ccリバイバルシリーズが、2022年9月に発売したダックス125で遂に完成を迎えたようだ。とりあえずこれでひと段落という情報で、ゴリラなども候補に上がっていたようだが製品化に至らなかったという。

新登場のダックス125は、自動遠心クラッチ装備のAT免許対応モデルで、シリーズで唯一のタンデムシート付きモデル。レジャー用途が想定された最も手軽で選びやすい位置づけにあり、コンセプトは「ファミリー&レジャースニーカーズ」としている。ペットのように家族の一員として愛される存在を目指して開発された。

元祖ダックスは、アメリカで好評だったモンキーよりも一回り大きいサイズとし、親がダックス、子供がモンキーに乗って親子で楽しむことを狙ったモデル。加えて本田宗一郎氏の「単に大きくするのではなく今までにない二輪車を作るべき」という考えもあり、唯一無二の胴長スタイルで1969年に発売された。

それから50年以上を経て、今度は125ccのエンジンを獲得し、二人乗りでお出かけを楽しめるモデルとしてリバイバル。もちろんダックスならではの愛らしいスタイルは不変で、女性や子供からも抵抗感なく受け入れられるだろう。さらに、元祖ダックスのファンも納得の鋼板プレスフレームを採用しており、趣味の一台としても人気になりそうだ。

2022年9月に発売されたホンダ・ダックス125。モンキー125のようなマニュアル式クラッチとはせず、4速オートマを採用。胴長スタイルのフレームから「ダックスフント」をネーミングの由来としたホンダ伝統のブランドだ。

身長170cmのライディングポジションは、同じ12インチホイールを採用するモンキー125と同じ印象。ハンドルが少し遠くにあるので、わずかに前傾している感じだ。

体重65kgの足着き性は両足かかとが接地する。シート高は775mmでモンキー125と同じ数値。シートはスポンジに腰があるので、しっかりとした座り心地だ。

自動遠心クラッチなので、カブに乗っているような感覚に

ダックス125に搭載されたエンジンは、令和2年排出ガス規制に対応した新しいロングストローク&高圧縮比タイプを採用。2021年9月に発売された新型スーパーカブC125や新型モンキー125と基本は同じだが、最高出力や最大トルクはそれぞれ微妙に異なっている。ダックス125はモンキー125と同じ9.4PSで、スーパーカブC125の9.8PSよりも抑えられている。

トルク値もモンキー125と同じ1.1kg-mだが、250rpm低い5000rpmで最大トルクが発生するようになっており、二人乗りでの扱いやすさに配慮している感じだ。動力性能は以前乗った新型モンキー125と同等の速さで、125ccのギア付きバイクとしては決して速い訳ではないが必要十分な性能がある。

ピークパワー時の理論値を比較すると、ダックス125は94.8km/hでモンキー125は96.4km/hだが、これはモンキー125に新設された5速ギアの効果と言える。ちなみに最も理論値が高いのはスーパーカブC125で、ピークパワーが最も高回転の7500rpmになっていることから102.9km/hになっている。このあたりからもダックス125はあまりスポーツ志向ではないことが分かる。

そして、遠心クラッチを採用したエンジンは特有のメカノイズやシフト操作がカブシリーズそのもの。ダックス125に乗っているはずなのに、エンジンフィーリングはカブそのものなので最初は混乱した。ただ、元祖ダックスも初期型は遠心クラッチモデルのみなので、こんな感じだったのだろうと納得。クラッチ操作を必要とせず簡単に運転できるメリットは、AT免許が設定された現代でも重要な意味があるのだ。

エンジンは空冷4ストロークOHC2バルブ単気筒123cc。4速ミッションのギア比はスーパーカブC125と同じ。カブと同様シーソー式シフトペダルを採用している。

ニーグリップできないボディにクイックな足回りなど独特な乗り味

筆者は元祖ダックスにも乗ったことがなく、今回が初の試乗。ダックス125のライディングポジションの印象はモンキー125に近いが、いくら股を閉じてもニーグリップできない感覚が新鮮だった。つまりカブだと思って乗ればいいのかと思うとハンドリングはクイックでモンキー125的。ただし、モンキー125よりもフラつかないので、そこはカブ寄り。

つまり、スーパーカブC125とモンキー125の中間的な存在がダックス125と言える。いいとこ取りと言えばそうだが、中途半端でもある。似ているのは125ccのスクーターで、二人乗りできるミニマムサイズのコミューターという感じだ。ただし、街中での走行では125ccスクーターほどの俊敏性はなく、目を三角にして走ろうという気にさせない脱力系スタイルからものんびり走るのが似合う。

それでも倒立フォークや前後ディスクブレーキ&12インチロードタイヤの装備から、本気で走らせれば高いポテンシャルを見せてくれるだろう。1.6mm厚の鋼板プレスフレームも見るからに剛性が高そうで、さらに燃料タンクやバッテリーなどの重量物をすべてフレームの中に収めているので、マスの集中化が運動性能向上にもプラスに働いているのだ。

そして、二人乗りした時の印象は決して余裕がある訳ではなく、大人二名だと結構密着する。グラブバーは握りやすい位置にあるので、体は支えやすかった。ダックス125は二人乗りに対応して後輪荷重を増やす設定にしており、運転席側はあまり挙動の変化が感じられず緊張感は高くなかった。この二人乗りでの安定感はギア付き125ccではトップレベルだろう。

フロントホイールはモンキー125とは異なる12インチで、形状は新型グロムと同じもの。フロントのみのABSは3軸IMUも制御に利用している。

リアは1ポットキャリパーのディスクブレーキを採用し、ABSは非装備。スイングアームは角パイプでアクスルまわりはグロムと同じ装備だ。

リア2本サスという構成はモンキー125と同じだが、リアショックは別もの。一人乗り専用のモンキー125はフワフワの乗り心地だったが、ダックス125はしっかり踏ん張るセッティングになっている。

マフラーは「ダックス50/70エクスポート」から採用されて、後に定番となったアップタイプ。ヒートガードがついているので万が一触れても熱くない。タンデムライダーの足の部分にはプラスチックのガードも追加している。

フレームにはこだわりの鋼板プレスフレームを採用。当初はパイプフレーム+カバーが検討されていたが、開発者の熱意が実って元祖ダックスと同じフレーム型式となった。この質感がダックス125最大のセールスポイントだ。

二人乗りに配慮した段差のない前後一体型シート。グラブバーは昔ながらのメッキパイプを用いたU字タイプで1970年代の雰囲気を醸し出す。

燃料タンクはフレーム内に設置され3.8Lを確保。モンキー125の5.6Lよりは少ないがスーパーカブC125の3.7Lとは同等以上。また、元祖ダックスの2.5Lに比べると大幅な増量を果たした。

車体左側には元祖ダックスにはなかったサイドカバーが設置されている。内部に工具が入るといった機能性はないが、シート開閉用のキーシリンダーが備えられている。

ヘッドライトやウインカーにはLEDを採用。モンキー125と同じ装備だ。

テールランプもモンキー125と同じ丸型のLED。リアフェンダーはモンキー125のスチール製に対し、ダックス125は樹脂製となる。

大きくアップしたパイプハンドルは、モンキー125と同様に元祖ダックスにあった折り畳み機能を省略。

メーターはキーオンで瞬きするところまでモンキー125と一緒。燃料計と距離計にトリップ×2を表示する。時計とギアポジションインジケーターが欲しいところ。

ホンダ ダックス125主要諸元

・全長×全幅×全高:1760×760×1020mm
・ホイールベース:1200mm
・車重107kg
・エンジン:空冷4ストローク単気筒SOHC123cc
・最高出力:9.4PS/7000rpm
・最大トルク:1.1㎏f・m/5000rpm
・燃料タンク容量:3.8L
・変速機:4段リターン(停車時はロータリー)
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70-12、R=130/70-12
・価格:44万円

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