排気量250ccで車検のない軽二輪クラスと比べても、ファミリーバイク特約で任意保険が安く維持費がかからないことに加えて、駅などの公共施設によくある駐輪場も利用できるといった特徴を持つ“原付二種クラス”。いわゆる軽二輪の“白ナンバー”に対して、“ピンクナンバー”なんて呼ばれたりするモデルたち。2023年はヤマハがこの原付二種クラスに、本格的なギヤ付きモデルを矢継ぎ早に投入。同年11月には千葉の茂原ツインサーキットにて、ヤマハ発動機販売がYZF-R125&15、MT-125、XSR125の試乗会を開催したのでその模様をご紹介。まずは12月8日に50万6000円で発売開始となるXSR125(エックス・エス・アール・ヒャクニジュウゴ)を見ていこう。ヤマハXSR125をサーキットでインプレッション

XSR125は細部の作り込みがハンパない!

ヤマハXSR125のレトロなスタイリング

XSR125の特徴は、なんといってもネオレトロなスタイルである。XSR900、XSR700に続く、XSRシリーズの第三弾というわけだが、実車を前にして思うのはその作り込みの丁寧さだ。ヤマハはこの手のクラシックやレトロ系の造形を作り込むのが非常に得意で、“オーセンティック”なんていう表現をプロモーションで多用する。ちなみにオーセンティックとは「トラディショナル」とか「正統派」という意味のファッション用語であるが、XSR125もそんな“オーセンティック”な雰囲気を体現したようなバイクになっている。

見ていると、丸目一灯のヘッドライトの形状はもちろん、タンク形状やサイドカバーなどの細部が、兄貴分たちに負けないくらいとにかく丁寧な作り込みに惚れ惚れ。これまで日本市場の125ccクラスにはキチンとした……、それこそヤマハの言う“オーセンティック”なモデルの層が薄かっただけにユーザーとしては非常に嬉しいところ。

ヤマハXSR125のレトロなスタイリングヤマハXSR125のレトロなスタイリングヤマハXSR125のレトロなスタイリング

XSR125/主要諸元■全長2030 全幅805 全高1075 軸距1325 シート高810(各㎜) 車重137㎏(装備)■水冷4ストSOHC 4バルブ単気筒 124cc 15ps/10000rpm 1.2kgf-m/8000rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量10ℓ ブレーキF=ディスク R=ディスク タイヤサイズF=110/70-17 R=140/70-17■メーカー希望小売り価格:50万6000円

VVAの搭載で低回転から高回転まで気持ちよく回るXSR125!

ヤマハXSR125をサーキットでインプレッション

ポジションはアップライトだが、そのぶんライディングの自由度が高く、リーンウイズはもちろん、写真のようなリーンアウトやハングオン気味のリーンインポジションもばっちりキマる。

 

今回の試乗を行ったのは茂原ツインサーキットの西コース。このサーキットはタイトなコーナーが連続する全長約700mのミニサーキットである。レトロなデザインがウリのXSR125でサーキット走行するの?……なんて「?」を頭に浮かべたままコースインしたのだが、意外や意外! 走ってみるとこれが面白い。

特にエンジンがいい。この水冷124ccのエンジンは高回転向きの4バルブが採用されているだけでなく、なんと可変バルブ機構であるバリアブル・バルブ・アクチュエーション(以下:VVA)なんてハイメカが搭載されている。おかげで低速域のトルクがしっかり出ているにもかかわらず、高回転側もしっかり回るというワイドレンジなエンジンに仕上がっている。

スペックで言えば最高出力の発生回転域は1万回転でレッドゾーンは1万1千回転から。おかげでタイトなコーナーで一気に減速することになっても、力強いトルクで気持ちよくコーナーを立ち上がり、そのままストレートでは高回転までぶん回して車速を伸ばす……なんてサーキット独特の走りをしても全くストレスにならないのだ。最初はなんでこのモデルをサーキットでの試乗するのか? その意味がわからなかったが、試乗会の企画担当としては、この低速トルクと高速側の伸びをしっかり体感して欲しくてこのサーキットを試乗会場に選んだというわけだ。

ヤマハXSR125をサーキットでインプレッション

コーナー脱出時の力強い加速が気持ちいXSR125。

 

排気量の小さい125ccクラスのモデルでは、低回転域のトルクはあっても高回転側が伸びなかったり、また高回転域の伸びは良くても低速トルクが希薄で加速感がイマイチだったり……、排気量由来のエンジンの力のなさを感じる場面が多いものだが、このXSR125はVVAのおかげで、その両方のいいとこ取りができているのだ。


今回の試乗はクローズド環境のみでの試乗で公道は走れていないが、この低速の力強さなら信号待ちからのスタートダッシュも速いだろうし、幹線道路での巡航走行でもしっかり車の流れに乗れて快適だろう。しかも、そんな使い勝手のいい125ccクラスのマシンにしっかりデザインや質感にも拘ったヤマハらしい“オーセンティック”なモデルが登場したというのだから嬉しいかぎりである。

ヤマハXSR125をサーキットでインプレッション

兄弟モデルのMT-125に比べて若干フロントブレーキ径が小さかったり、タイヤもサーキットを攻めるようなプロファイルではないが、VVAの加速が楽しくてついつい攻めたくなる。

シート高810㎜/XSR125のポジション

シート高810㎜のヤマハXSR125の足つき性をチェック

シート高は810mmで僕の体格は身長172cmで体重75kg。

シート高810㎜のヤマハXSR125の足つき性をチェック シート高は810㎜で、両足をつこうとすると踵が3.5cmぐらい浮く。ただ125ccクラスは車体がコンパクトなので支えるのは苦にならない。上半身のポジションは、ツーリングなどで1日走っていても疲れにくそうなほんの少しだけ体が前傾するアップライトなポジション。またコンパクトな125ccクラスにありがちな膝の曲がりの窮屈さがないのがいい。

XSR125のディティール

ヤマハXSR125のディティール

水冷4ストSOHC単気筒124ccのエンジンにはVVA(バリアブル・バルブ・アクチュエーター)を搭載。最高出力:15PS/10000rpm、最大トルク:1.2kg-m/8000rpm。

ヤマハXSR125のディティール/VVA

シリンダーヘッドの右側にある黒いカバーに覆われたパーツがVVA(可変バルブシステム)で、エンジン回転数が7000~7400rpmに達すると中低回転域用のカムシャフトから高回転用のカムシャフトに切り替わるようになっている。

ヤマハXSR125のディティール/ヘッドライト

光源はLED式だが、ヘッドライトハウジングはクラシカルな丸目一灯を採用。レンズ面に「XSR」のロゴを入れるこだわりようだ。

ヤマハXSR125のディティール/ハンドル

幅805mmのハンドルはアップライトにセットされ、上半身も起きぎみなので長時間の運転も楽だろう。

ヤマハXSR125のディティール/メーター

XSR125の丸目デジタルメーター。中心が速度計で周囲がエンジン回転計。ギヤポジションや燃料計、オド、トリップ×2、時計、瞬間燃費、平均燃費、平均速度などを表示。兄弟車のMT-125が装備するトラクションコントロールはXSR125には搭載されていない。

ヤマハXSR125のディティール/タンク

燃料タンク容量は10ℓで燃料はレギュラー。気になる燃費はWMTCモード値による燃費は49.4km/ℓで、計算上の航続距離は494㎞となる。

ヤマハXSR125のディティール/タンク

XSR125のクラシカルな雰囲気を作り出しているタックロールパターンのシート。見た目だけでなくしっかり厚みもありタンデムシートも広めで快適そうだ。

ヤマハXSR125のディティール/シート下

バッテリーやヒューズボックスへのアクセスはしやすい。シート裏側に車載工具やヘルメットホルダーを装備しているものの、シート下にはほとんどスペースがない印象。

ヤマハXSR125のディティール/テール周り

テールカウルのデザインまでしっかりクラシカルに作り込まれている。光源はヘッドライトと尾灯がLEDでウインカーやナンバー灯はバルブ式となっている。

ヤマハXSR125のディティール/サイレンサー

丸穴のデザインされたサイレンサーカバーはサイレンサーの大部分が覆われており、タンデマーの不意の接触によるヤケドの心配が少なそうだ。

ヤマハXSR125のディティール/サイドカバー

デザイナーのこだわりが現れているサイドカバー&アルミプレート。やはりヤマハはこの手の造形の作り込みというか、素材の使い方がうまい。

ヤマハXSR125のディティール/スイングアーム

スイングアームは、MT-125やYZF-R125と共通のスポーティなアルミ製スイングアームを採用。

ヤマハXSR125のディティール/フロント足回り

フロントフォークはスポーティな倒立フォークを採用。デザインこそレトロな雰囲気だがミニサーキットを楽しく走ることができた。タイヤはIRCのトレールウイナー。サイズはF=110/70-17、R=140/70-17とフロントタイヤのサイズがMT-125に比べてやや幅広。

ヤマハXSR125のディティール/ステップ

ローレット加工が施されたアルミ製のステップがスポーティ。兄弟モデルのMT-125に比べてやや後ろ目で、ゆったりとしたポジションが設定されている。

ヤマハXSR125のディティール/リヤブレーキ

前後のブレーキにはABSを搭載。通勤・通学など雨天時にも走らなければならないような場合にも安心だ。

 

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