バイクで世界初のスーパーチャージャーを搭載し、2019年型以降は231psを発生した前代未聞のバイクこそNinja H2だ。
惜しくも2021年型でラストを迎えたモンスターマシンを改めて振り返る!

目指したのは「究極」、川崎重工の総力を結集した!

2015年に姿を現したカワサキNinja H2の開発コンセプトは「究極のロードスポーツ」。実にシンプルながら難しいテーマを具現化するため、川崎重工グループの総力が結集されることになった。

圧倒的な動力性能を実現するために選択されたのが、二輪市販車初のスーパーチャージャー付き998cc水冷直列4気筒ユニットだ。スーパーチャージャーは、エンジンの回転力で羽根車を回し、シリンダー内へ空気を圧縮して強制的に多くの混合気を送り込める。同じ排気量でもより多くのパワーを引き出せるため、ハイパワーと同時に、軽量かつ小型なエンジンが実現可能になった。

驚くべきことにエンジンは自社設計だ。別々に開発したエンジンと過給器を組み合わせるのではなく、ゼロから設計することで究極の高効率が実現できる。そのため、一般的なスーパーチャージャーに必須のインタークーラーが不要に。加えて、エンジン特性に合わせたパワー特性も実現している。

このエンジンを開発するために、川崎重工のガスタービン・機械カンパニーや航空宇宙カンパニー、そして技術開発本部と協働。まさに川崎重工グループの技術の粋が結集している。

デビュー時の'15年型から'16年型まで最高出力は200ps(ラムエア加圧時は210ps)。既に同門のNinja ZX-10RやZX-14Rが200psに到達していたが、異なるのは加速性能だ。998ccながら、より大排気量エンジンであるかのような全域での加速力は、プロライダーでさえビビるほど強烈だった。

車名は、H2(マッハIV)が由来。1971年にデビューしたH2は2ストローク748cc並列3気筒を搭載し、世界最強の加速力で知られる。これを現在に甦らせ、現代的なハンドリングを達成することが開発のゴールだったのだ。

そして、公道走行可能なH2とともに、さらにパフォーマンスを優先した競技専用モデルのH2Rも同時開発。驚異の310psを発生し、『ヤングマシン』誌による0→1000m加速タイムテストでは、'15年型が歴代最強の17.696秒をマークしている。

↑Ninja H2の登場は大きな話題に。画一化されつつあるバイクにスーパーチャージャーで新風を巻き込んだ。LEDモノアイと逆スラントの顔やウイングのようなミラーステーなどデザインも斬新。当時価格270万円。

↑H2のためにゼロから設計されたスーパーチャージャー付きの998cc直4エンジン。左サイドのダクトから走行風を取り込み、インペラーと呼ばれる羽根車で強制的に空気を送り込む。

 

↑フレームは高性能マシンに一般的なアルミツインスパーではなく、あえて鋼管トレリスを採用。ハイパワーや高速走行での衝撃に耐える柔軟性を持たせつつ、放熱効果が大きいのが導入の理由だ。カワサキ初の片持ちスイングアームも採用した。

↑川崎重工の製品で歴史的意義を持つものだけに許されるリバーマーク。これをバイクで初めて冠した特別なモデルとなった。外装には航空宇宙カンパニーの流体解析技術が活かされ、銀鏡塗装がスペシャルな雰囲気を醸す。

↑クローズドコース専用のH2R。H2では左側のみの吸気ダクトがH2Rでは両側となり、サイドにウイングなども備える。当時価格540万円。

毎年のように熟成、3年目には205psに到達した

新たなフラッグシップとなったH2だけに、頻繁に改良が加えられた。
デビュー2年目の'16モデルではECUのセッティングを変更し、パワー伝達効率を最適化。レインモードのパワー供給を変更したほか、データロガーを接続できるCANコネクターをアッパーカウル内に備えた。

デビュー3年目の'17モデルでは205psに進化。最新のIMU(慣性センサー)でトラコンなどの制御がより知能化したほか、シフトアップのみだったクイックシフターがダウンにも対応した。さらにオーリンズ製TTX36リアサスも標準で採用する。

また、カーボンファイバーアッパーカウルを備えた「CARBON」がラインナップに加わった。

↑'17年型からH2カーボンを追加。H2Rと同じ銀鏡マットペイントを採用し、より上質なイメージを演出する。加えて集合管のレイアウトを1-2&3-4から1-4&2-3としたほか、ユーロ4に対応した。

'19で231psに大幅パワーアップ! 世界最速記録も達成した

極めつけは'19モデルだ。
最高出力はなんと205→231psと26psもの大幅アップを果たした。

H2Rからデチューンした領域を緩めたわけではなく、'18年に派生機として登場したスーパーチャージドツアラー、Ninja H2SXのバランス型過給エンジンから得たノウハウを盛り込んだ結果だった。

従来は吸気チャンバー自体を扇型にして吸気効率を上げていたのに対し、'19年型では内部にラッパ状のディフューザーを設置。より高効率な吸気経路を実現した。特に7000rpm以上でトルクアップしており、スーパーチャージャーの加速がよりダイレクトになっている。

フロントのブレーキキャリパーは、ブレンボのストリート向けでは最高峰のStylemaに変更。従来のM50キャリパーよりも軽量コンパクトで、ブレーキタッチも一段とスポーティになった。

さらにカワサキの新しい特殊コーティング塗装であるハイリーデュラブルペイントを採用。これは小傷を自己修復するというもので、美しい銀鏡塗装を維持できる。

なおカワサキの社内チームが2018年のボンネビルスピードウィークに'19年型のH2で参加しており、改造が厳しく制限されたP-PB1000クラスで世界最速の337.064km/hを達成している。

↑'19年型は、エアフィルター素材の変更やプラグ電極の突き出し量が0.1mmプラスされるなど、細かな仕様変更も実施した。スマホと連携できるフルカラー液晶メーターが投入され、詳細な走行ログを取得可能。当時価格356万4000円。

国内向けは3年で絶版、派生モデルが現役だけに復活を熱望!

デビュー以来、海外専用モデルだったが、'19年型からH2カーボンが国内で受注販売を開始。'20ではレギュラーモデルとなった。

しかし「'21年型での生産終了」をカワサキがアナウンス……。欧州で排ガス規制ユーロ5が全面導入され、生産終了になったことに合わせ、国内でもファイナルとなったのだ。

カワサキのシンボル機が消滅するとあって、ライダーに衝撃が走った。ただし高級車だけに日本以外でのセールスは残念ながら芳しくなかったと聞く。

しかし、独自の規制を敷く北米では今だに'23年型が存続中。ツアラー版のH2SXはユーロ5に適合してレーダーまで搭載し、日本、欧州でも現役だ。さらにネイキッド版のZ H2が'20年に登場し、こちらも排ガス規制に対応済みだ。

また、大ヒットした映画『トップガンマーベリック』に主人公の愛車としてH2が登場。人気が再燃し、中古車相場も高騰している。

カワサキがその気になれば復活できるのでは……と密かに期待している!

↑最終型となった'21モデルのH2カーボン。2020年9月15日から2020年10月15日までの期間限定で予約生産された。当時価格363万円。

 

2021年型 Ninja H2 カーボン 主要諸元
・全長×全幅×全高:2085×770×1125mm
・ホイールベース:1455mm
・シート高:825mm
・車重:238kg
・エンジン:水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 998cc
・内径×行程:76.0×55.0mm
・最高出力:231ps/11500rpm(ラムエア加圧時242ps)
・最大トルク:14.4kg-m/11000rpm
・燃料タンク容量:17L
・キャスター/トレール:24°50′/103mm
・ブレーキ:F=Wディスク R=ディスク
・タイヤ:F=120/70ZR17 R=200/55ZR17

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