数々のバイクが展示されたジャパンモビリティショー2025。筆者が気になったバイクや世界初公開モデルを中心に見どころをプレイバックしてみた。ホンダは某マンガ風の電動バイクに注目。ヤマハは未来を感じさせるモビリティや初音ミクのショーが斬新だった!
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【ホンダ編】2WDの大型電動バイクは常識破りの存在、2030年以降に市販化!?

東京ビッグサイトで10月30日~11月9日、大盛況のうちに開催された「ジャパンモビリティショー2025」。改めて各メーカーごとにみどころをおさらいしてみよう。
まずはホンダから。ブースは黒が基調でとてもシックだ。

↑プレスカンファレンスに登場したホンダの三部社長。プレリュードを購入したとのこと。バイクは何を持っているのだろう!?
注目したいのは、世界初公開となった電動バイク「EVアウトライヤーコンセプト」。低く長いボディと曲面デザインを採用し、有名な“金田バイク”的な雰囲気がイイ!

↑EVアウトライヤーコンセプト(参考出品車)は見た目のインパクト大! デザインのモチーフは「グライダー」とのこと。フロントはゴールドウイングにも採用されるダブルウィッシュボーンで、これを半透明の流線形カバーが覆う。
車名の「OUTLIER」は“逸脱した存在”という意味。前後輪のモーターで2輪駆動を実現したほか、EVならではの低いシート高、半透明カバーで覆われたボディなど、走りもデザインも常識を破るモデルがコンセプトだ。しかも「2030年以降の市販化を目指している」という。

↑通常のタンクの位置がバッテリー、その下が制御系。前後ホイールにモーターを搭載するため、内燃機関のバイクよりシート高を圧倒的に低くできる。シート高はレブル250の690mmより低く、現行ホンダ車で最も低いという!

↑アウトライヤーを見て思い出したのがホンダのNM4。2014年に登場し、既に生産終了した745ccクルーザーで、未来的デザインと加速を楽しむコンセプトがアウトライヤーと似ている。

↑バッテリー容量やバンク角も表示する超横長メーターに加え、通常の燃料タンク位置にも液晶パネルを設置。
2輪駆動だけに加速は圧倒的。一方、コーナリングでは電子制御によって普通に走れる。様々な面で、ホンダが内燃機関で培ってきた知見が活かされているという。クラスとしては「大型ぐらいをイメージ」しているそうだ。デザインはこのまま出るわけではないとのことだが、どんな乗り味なのか気になる!
ジェットやロケットも展示! またがりOKの車両も多かった
他にはニューモデルのCB1000Fをはじめ、またがり可能なモデルを展示したコーナーもあり。またクルマのほか、ホンダジェットやロケットもあり、ホンダらしい多彩な展示が楽しめた。

↑11月に発売されたCB1000FはまたがりOK。来年2月発売のビキニカウル付き「SE」とモリワキレーサーも展示されていた。

↑レブル250SエディションのEクラッチ仕様や、新原付のスーパーカブ110ライト、ダックス125などがまたがり可能。

↑好評発売中の新生プレリュードも展示。80年代に知人が乗っていた3代目プレリュードと……全然似てない(笑)。

↑ロケット機体の再使用技術や再生可能燃料を使用した「サステナブルロケット」。2025年6月に実験した実際の機体だ。

↑西ホールで開催されていたTokyo Future Tour 2035で「ホンダコライドン」を展示。『ポケモン』とのコラボで、アシモの技術を活かしたモビリティだ。

↑隣には「トヨタミライドン」が。初めて2体のポケモンモビリティが同時に展示されたのだ!
【ヤマハ編】モトロイドラムダは尺取り虫みたいに自律走行する電脳ペット
続いてはヤマハ。「感じて動きだす」をテーマに、音響や映像を交えつつ、多彩なモビリティを展示していた。
電動アシスト自転車を除いて、2輪&3輪の世界初公開モデルが4つも披露された。これは国内2輪4メーカーで最多だ。
そして、音楽と初音ミク、ダンサーたちによるステージの高揚感がスゴい。

↑作業着姿の初音ミクがスクリーンに登場し、ヤマハ (楽器の方)のSound xRによる音響と、管楽器グループがショーを披露。

↑トライアルライダーの黒山健一選手やダンサー達によるステージも迫力!

↑プレスカンファレンスで登場したヤマハの設楽社長。その背後にたたずむ不思議な物体がモトロイドラムダ(後述)。
ブースで一番目立つ位置に飾られていたのが「モトロイドΛ(ラムダ)」と「TRICERA proto(トライセラプロト)」だ。

↑左側が「モトロイドラムダ」、右の3輪モデルが「トライセラプロト」。ともに世界初公開の参考出展車だ。
モトロイドラムダは一見、ヒトが乗れそうだけど、実は乗車できない(!)。自律走行し、AIで学習して進化。まるでペットのようにヒトに寄り添う斬新なモビリティなのだ。

↑モトロイドのステージでは、またも初音ミクが解説。2017年の東京モーターショーで初代(写真左)が公開され、2023年のモビショーで第二世代となる モトロイド 2(右)が発表された。今回のラムダは第3世代となる。

↑前後輪に駆動用モーターを搭載。さらに胴体にモーターが2つ搭載され、前後方向の開閉と左右の可動軸を動かす。その動きは下の動画で確認を!
その動きはまるで尺取り虫。前後に開閉して立ち上がったり、バランスを取る。また、エンジニアが指示を出して進化していくのだが、その指示の仕方でモトロイドの性格が変わってくるという。解説員によると「褒めて伸ばすと自らノビノビと色々試し始めて、叱って伸ばすと一つひとつの発想力が少し小さくなる分、慎重になるようなところがあります」とのこと。まるで人間なのだ。
今後、メカとしてはヤマハのロボティクスなどに活用。AIは、ナビや操作のアシストに活かされ、コーナリングでライダーの性格に合ったアドバイスなどが考えられるという。
なぜヤマハがこんなモビリティを? と思ってしまうが、これもヤマハのテーマである「人機官能」の一つ。人とマシンの意思がどのぐらいつながっているか、という意味での人機官能を追求しているとのことだ。
旋回の楽しさを究める、前2輪+後1輪のドリフトマシン
トライセラプロトは、前2輪+後1輪のフルオープン EV。2023年のモビリティショーにも展示されたが、今回は自走が可能になった進化版だ。
前輪だけでなく、後輪まで操舵できる点が新しい。前輪は4輪と同様のハンドルで操舵でき、後輪はハンドル両サイドにあるパドルスイッチで操舵可能。手動のほか、自動で操舵されるオートモードも備える。

↑トライセラプロト(参考出展車)は、後輪操舵による刺激的な旋回性能と新感覚の操縦感を併せ持ったマシン。

↑片持ちスイングアーム状の後端にアクチュエーターが仕込まれ、後輪を転舵させる。

↑ハンドルに装着されたパドルシフトで後輪を操舵できる。押し込み量によって後輪の角度が変わるという。
後輪まで操舵できるということは、前輪と同じ方向に後輪を切れば小回りが可能。そして逆側に後輪を切れば意図的にドリフトができてしまう。操作は難しいが、“感性に呼応した旋回体験”と“鍛錬の娯楽化”をコンセプトに挙げており、操作を習得することも楽しみの一つになる。
ヤマハで3輪と言えばトリシティだけど、トライセラプロトではリーンしない旋回の楽しさを追求。バイクではないものの、コーナリングの楽しさを追求するヤマハらしいモデルと言えるのだ。
フル電動スポーツに水素ビジネスバイク、次世代のマシンも
他にもヤマハは電動スポーツの「プロトBEV」と、水素エンジンを搭載した「H2バディポーターコンセプト」をワールドプレミアとして公開した。ともに次世代の動力源を搭載しているのが特徴だ。
プロトBEVは、外観がまさにYZF-Rシリーズに連なるデザイン。EVならではの発進加速が自慢で、一定の距離まではYZF-R1より速いという!

↑完全電動車のプロトBEV(参考出品車)。バッテリーを車体中心からシートに向けてL字型に配置し、軽快な操縦性を狙った。足回りはYZF-R1と同様のKYBフォークにブレンボキャリパーを組み合わせる。
バッテリーや車体は専用開発で、モーターは既存のものを使用。既に走行可能だが、市販化などは未定とのことだ。保安部品がないのでレーサーかと思いきや、ワインディングでのスポーツライディングを楽しむマシンという。

↑水素エンジンを積むH2バディポーターコンセプト(参考出品車)。水冷単気筒エンジンは、155ccスクーターのX-フォースがベースで、リヤボックスの水素タンクで走行する。
H2バディポーターコンセプトは、水素エンジンと車体をヤマハが開発。トヨタが2輪用に開発した認可取得済みの小型高圧水素タンクを燃料に走行する。
水素満タン時の航続距離は100km以上を実現しており、タンク上には大きなラゲッジスペースも有する。ユーロ5などの既存法規にも適合しており、実用化を見据えた車両と言えるのだ。

↑リヤボックス底面に円筒形の水素タンク4本を収納。容量は合計23Lという。なお、内燃機関のバイクを水素化する場合、“小学生の子供程度”の重量増で済むとのこと。
しかしながら、様々なカベも。バイク用の水素タンクは容量23Lが上限だが、現在の水素ステーションは23Lという少量の充填に対応していない。また、水素タンクの材質は金属製と樹脂製があり、バイク用としては軽量な樹脂製の方が当然好ましい。しかし現在の法規では、バイク用に樹脂製タンクは認められていないという。
水素エンジンは技術的にかなり現実的になりつつあるが、こうした法規のカベもまだ存在する。完全電動バイクと合わせて、今後の動向を見守りたい。

↑欧州で発表された2026年型XSR900GPも展示。80年代のYZR500をオマージュしたイエローストロボをまとう。市販予定車なので登場が楽しみ!

↑YZF-R1 の鈴鹿8耐レーサーも展示。往年のWGPマシンに採用され、99年型YZF-R7(OW-02)にも施した白×赤ストロボをまとう。
次回「スズキ&カワサキ編」に続く!!
