「バイクを買う」「バイクをお店で見てもらう」
いま、このことについて改めて考えなければならない状況になっている。
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ネットとスマホで「バイクを探して買うまで」が手軽になった
まずは「バイクを探して買う」という状況について。かつてはバイク雑誌での販売店広告や「売ります・買います」といった読者間の個人売買、さらには全国または地域を限定した中古車情報誌というものでお目当ての車種を探したものだった。
しかし現在はスマホの画面で全国の新車・中古車が手軽に検索できる。中古車販売サイト、オークションサイト、フリマサイト、はてはSNSでの「バイク売ります」まで検索・販売手法も実に多様だ。
販売店が遠くに合ったり売り主が遠方に住んでいたとしても気軽に注文して通販感覚で自宅まで届けてもらえる。お目当ての車種を探して買うまでは、本当に便利な時代になった。
販売店が多い上に「自分たちでも直せていた、いじれていた」時代
一方でバイクを買った後の点検・整備状況はどうだろうか。00年代以前は街中に大小のバイク販売店がたくさんあった。店構えはまるで自転車屋さんなのにガラス戸一枚を開けると、売場の片隅で750ccバイクが修理中といったお店が商店街の長屋でひっそりと営業していたり…。ショップの“常連”なんて言葉がまかり通っていたのもこの時代だ。
また、あの時代「バイクを直せる、いじれる」といった同世代のバイク仲間が周りにいたという方も多いだろう。00年代のキャブレター採用車まではエンジンの不調を直す、セッティングを変更するといった整備やカスタムが、ユーザーの間でも比較的しやすかった。
純正パーツや用品メーカーによるアフターパーツの流通量も多く、大手用品販売店では壊しやすいレバー類、交換頻度の高いオイル・エアフィルターといった純正パーツが揃えられていた。自分のバイクは自分で直す、いじるということがやりやすく、参考となるような定期刊行誌やムック、書籍も複数刊行されていた。
80年代バイクブームの名残りもあって中古車のタマも豊富だった。仲間うちでバイクを安く譲るといった個人売買も多かったし、それを持ち込んで直してくれるような小さなバイク屋さんもいっぱいあったわけだ。
高度な電子化、ブラックボックス化が進んだ現代のバイク
しかし現在はいろいろな状況があの頃とは違っている。
まずバイクの電子制御化が進んだ。機械式のキャブレターは排ガス規制に対応できず電子制御されたフューエルインジェクション(FI)に換装され、一般ユーザーや設備の乏しい小さな販売店にとってはほぼブラックボックス化してしまった。
これは燃料噴射装置に限った話ではなく、排気量の大きなバイク、スポーツ性能の高いバイクほど電子制御化が進み、電子スロットルや電子制御サスペンションなど各部の電子化は今現在も進行中だ。
こうしたバイクの点検・整備にはパソコンを使った専用の診断機(テスター)が必要になるほか、電動バイクの場合はメーカー系販売会社の取扱資格の取得、絶縁工具などの設備を揃える必要もあり、これらは小さな個人販売店にとっては大きな負担となっている。
「バイク販売店を続けていくことが大変」な時代になった
販売店にとっても事業を継続していくことが難しい時代になっている。前述したように小さな個人経営の販売店では高度に電子化された中・大型バイクを整備し続けていくのはハードルが高い。今後増えるだろう電動スポーツバイクも同様だ。
また、国内メーカー系販売会社の多くは中型バイク以上をディーラーネットワーク以外の店舗では販売しないという「専売化」を進めている。現在の中・大型バイクは100~300万円といった価格帯であり、そうした高額商品を販売・整備するためにはブランドイメージの統一された店構え、ネットワーク店舗間での統一されたサービスが必要とされ、その構築に取り組んでいるのだ。
現在、多くの個人販売店が扱える新車は250~400cc以下のスポーツバイクとコミューター(スクーター)に限定されている。そして、これまで販売してきた00年代以前の絶版車の修理については、純正パーツの供給が終わっているものも多く基幹部品の修理もままならないということも多い。店主いわく「ネットオークションで部品を買ってきてもらえば修理するよ」というやり取りもよく耳にする。個人販売店にとっては新車の販売、絶版車の修理ともに難しい状況となり、バイク屋を続けていくことが大変な時代となっている。
「そもそも新車が売れない」 地域の有力販売店にも悩みは多い
一方で、近隣に異なるメーカーの取扱店舗を複数抱えているような有力販売事業者にも悩みは多い。メーカー系販売会社による販売網専売化のもと、店舗の改装や設備導入のために必要な投資は数千万円~数億円に及ぶ。該当メーカーに関しては、その地域での中・大型モデルに関する独占販売権を持つわけだからさぞ儲かるのだろうと言いたいところだが、実際にはそうでもないから難しい。
そもそも中・大型ファンバイクの新車販売台数は伸び悩んでおり、80年代バイクブームの頃に比べれば、どのモデルも限定モデルのような台数しか販売されていない。メーカーの国内販売計画台数からして少ない状況だ。もう、たくさん売ってたくさん儲けるという時代ではない。
その少ない販売計画の中で全国各地の専売店が販売会社からの割り当てを奪い合っている。現在は海外生産モデルも多く、様々な理由で納車までに時間がかかってしまい、その間に予約がキャンセルとなってしまうこともある。バイク1台売るのにこんなに大変な時代になるなんて誰が想像しただろうか。
「保有台数は減らない」から整備は事前予約制、自店ユーザー優先

▲一般社団法人日本自動車工業会 公式サイト/統計・資料/二輪車ページより引用
このように新車はそれほど売れていないが、その一方でバイクの保有台数は長らく1,000万台ほどで安定している。この状況が販売店の整備工場を直撃しており、整備士を筆頭に現場の人手不足が深刻な問題となっている。
すでに点検・整備・車検などの事前予約は一般的になっているが、依頼しようにも予約が取りづらく、急いで直してもらいたいような修理依頼(飛び込み修理)にも対応できない店が増えている。
このような状況で、自店でバイクを買ってくれたユーザーを優先するのは当たり前のことだし、自店ユーザーであっても飛び込み修理に対応してもらえなかったとしても仕方のないことだろう。「同じメーカーの看板をつけた、同じ専売店なのだから」とごり押ししても、整備士はメーカーや販売会社から派遣されているわけでもない。

もしツーリング先で車両トラブルとなり、藁にもすがる思いで近くの販売店に電話をかけてレッカーから修理まで対応してくれたとしたら、この時代それはもういわゆる神対応だと思うべきだ。
だからこそ、こんな時代だからこそ、任意保険(バイク保険)やロードサービスにはしっかり加入しておくべきだろう。
筆者にも経験があるが、そうした備えをしておけば「他のお客さんの整備もあるので、すぐには見られないし現場からのレッカーもできないよ」という場合でも、ロードサービスによるレッカーでひとまずお店に運んでもらうことができる。後日お店で修理をしてもらい、改めて車両を引き取りに伺えばよいのだ。
販売店は中古車の売買と自店購入者への点検・整備・車検・保険、車両購入時などのクレジットカード・ロードサービスへの加入といった様々な付帯サービスで利益を絞り出している状況だ。
急いでほしい気持ちはわかるが、無理を言っても現場はすぐには対応できない。だからこそ、点検・整備も車検も早めに予約しておくべきだ。
本当に絶版車をネットで買うのか? 購入の第一歩は「お店選び」から
小さな個人販売店の事業を支えていたガソリン原付一種も25年10月末に生産を終了し、今後の販売店経営や国内市場の動向はより不透明なものとなっている。このような販売店の現状にあって、ネットや個人売買で手に入れてきた中古車を気軽に見てもらえるだろうか。
近年は新車の販売はせず中古車の売買と修理・整備のみを業務としたいわゆる「修理専門店」も増えている。地域(特に都市部郊外)ではありがたい存在ともなっているが、前述のように絶版車や希少車などは修理したくとも部品が手に入らない、部品があっても整備情報がなく手が出せない、メーカー指定の診断機もないといった現状がある。
だから最新の中・大型バイクはもちろんのこと00年代以前のキャブレターを採用する絶版車まで、愛車に長く乗り続けたいのであれば、購入後の点検・整備・修理のことまでを考えてバイクを探し手に入れる必要がある。
そのための第一歩が「お店選び」なのは間違いないことだ。
憧れの絶版車がどうしても見つからない。オークションで探してもらっても出てこない。フリマサイトでやっと見つけられた。とにかく欲しい! いますぐ買いたい!
絶版車の多くは希少車となっているのでその気持ちはわかるが、買った後に基幹部品が壊れたらどうするのか。バイクは乗れば乗るほど各部が消耗して交換が必要となるものだし、逆にまったく乗らなくても一般家庭程度の保管状態では湿気・日光・塩害などを防げずに経年劣化していくものだ。
「買ってもいいけど、どうやって維持するの?」
「とにかく買いたい」という誘惑に負けてネットでポチッとする前に、購入後の点検・整備やツーリング先でのトラブル対処までを考えて、もう一度冷静に、中古車・絶版車に乗り続けるというバイクライフを想像してみてほしい。
