ForRの熱心な読者であれば、僕が大のSR400/500好きであり、今も2台のSR400を乗り回しているのはご存知のはず。
>YAMAHA SR400/500を乗り継いだワケ(うち2台を今も所有中!)【前編】
>YAMAHA SR400/500を乗り継いだワケ(うち2台を今も所有中!)【後編】
だけど、じつは5台ものSRを乗り継いでいる間に、他の空冷単気筒オンロードモデルに興味が湧かなかったわけではない。ホンダ CL400やカワサキ エストレヤ、ロイヤルエンフィールド ブレット500など、気になるモデルが何台もあったのだが、なんと先日、レッドバロン主催で開催されたメディア向け試乗会で、そのうちの1台……スズキ テンプターが用意されていたのである!
「おぉ、レッドバロンの中の人よ、あなたには僕の心が読めるのですか?」
……というわけで、当然ながらテンプターに試乗し、その魅力に触れてみたわけである!
(今回、とある記事の導入部分をほぼそのまま流用してみました。それがどの記事か気づいたアナタは、真のForR読者だ!)
直立したエンジンが美しい
テンプターが登場したのは1997年。ライバルとなるのは、当然ながらSR400である。
そのため、空冷SOHC単気筒エンジンやダブルクレードルフレーム、前後ドラムブレーキなど、その多くをSRを意識したであろう装備で固めている。
しかもSRはすでに登場から20年近く(1978年登場)経っていて、スズキは当然、ライバルを研究しつくしてのリリースだったのだろう。それらはことごとく、SRを凌ぐものになっているのだ。
たとえばエンジン。
SRの空冷SOHC2バルブ単気筒に対し、テンプターは空冷SOHC4バルブ単気筒を採用。SRよりショートストローク設定で、最高出力こそ変わらないが、テンプターの方が高回転域が楽しく、スポーティな味付けだと予想できる。
何よりもSRファンが羨んだのが、直立したエンジンである。
SRのエンジンがやや前傾しているのに対し、テンプターはまっすぐ直立! これがクラシカルな雰囲気を大きくアップさせているのだ。
ちなみに、SRのエンジンをオリジナルのフェザーベッドフレームに搭載した『BSA GOLD-SR』も、直立エンジンが大きな魅力。そう、クラシカルなモデルと直立エンジンはとっても相性がいいのだ。
>SR400のエンジンを積んだ英国車!? 幻のバイク『BSA GOLD-SR』
また、クラッチカバーに沿って取り回しされたエキパイなど、細かなディテールにも抜かりはない。
フェザーベッド!? なフレーム
BSA GOLD-SRで思い出したが、フレームも特筆すべきポイントだ。
その形状はBSA-SRやノートンのようなフェザーベッドフレームを思わせるもので、これもまた、テンプターのクラシカルイメージを大きくアップさせる一因となっている。
そして、マニアをも唸らせるディテールはフレームだけにとどまらない。
ツーリーディング式ドラムブレーキ
それがフロントに奢られたツーリーディング式ドラムブレーキ。
テンプター発売当時、SR400/500のフロントブレーキに採用されていたのはドラムブレーキ。これがクラシカル感をアップさせるとして人気だったのだが、テンプターのフロントブレーキはさらにツーリーディングとすることで、クラシカルかつ高級感を大きくアップ! ライダーによっては「テンプター最大の魅力」と絶賛するほどだったのだ。
ちなみにツーリーディグ式とは、ホイールの左右両サイドにドラムを装備するブレーキシステムのこと。つまり、ディスクブレーキでいうところのダブルディスクと考えればわかりやすいだろう。
そして、ホイールにはH型リムを採用している。
これもまた、英国旧車を思わせるようなクラシカルなデザインが特徴。テンプターの美しさを際立たせる要因のひとつとなっている。
ちなみにSRをはじめ、一般的なスポークホイールではU型リムが主流で、カフェレーサーなどにカスタムする場合、H型に変更することも多い。つまり、SRユーザー憧れのホイールが新車時から装着されているということなのだ。
SR好きでありカスタム好きの僕が、どうしてテンプターを所有しなかったのか? あらためてその車体を見てみると、僕が大好きなポイントがたくさんあるのに……。
その答えは、じつははっきりしている。それは、僕がかつてサベージオーナーだったからなのだ(どどーん!!)。
あぁ、サベージ650のマイルドさよ
じつは2001年のはじめごろ、ほんのちょっとだけ、僕はサベージ650に乗っていたことがあるのだ。(ちなみに上の写真はサベージ400)
サベージ650とサベージ400は兄弟モデル、そしてサベージ400とテンプターは同じエンジンを積む親戚みたいなもの。
で、このサベージ650なのだが、650cc単気筒ということで、どんだけ荒々しいエンジンなのだろう……と思いきや、めちゃくちゃマイルド。トルクはたしかに太いのだが、振動がほとんどないのだ。
それもそのはず、じつはこのエンジンにはバランサーが組み込まれていて、振動を打ち消すように設計されているのだ。
もちろん、そのおかげで長距離ツーリングも楽に行けるなど、メリットは大きいのだが、当時の僕は単気筒のドコドコ感を期待していただけに、少し拍子抜け……数ヶ月乗った後、SR500に買い換えてしまったのだ。
この時に買ったSR500が、僕がはじめて所有したSRである。その楽しさに夢中になったものだが、同時に、同じクラシカルロードスポーツのテンプターも気になった。
しかし、サベージ650のマイルドさを思い出し、さらに400ccならもっとマイルドな味付けだろうと予想し、どうしても食指は動かなかったのである。
バイクは乗ってみなけりゃわからない
結局そのままテンプターに乗る機会には恵まれず、今に至ったわけであるが、これが実際に乗ってみると想像とまったく違った。
良い意味で期待を裏切られた。
つまり、鼓動感がしっかり味わえて、エンジンがじつに心地よいのだ。
サベージ650に乗っていたのは20代半ば。あれから20年経ち、46歳になった僕には、テンプターくらいの鼓動感、振動、そしてスピード感など、とにかくすべてが心地よいのである。
昔はバイクに荒々しさを求めていたのだが、今はもう、そうでもない。車格がそれほど大きくなく、自分のペースでのんびり走れて、疲れず、それでいてクラシカルテイストにあふれたデザインが癒しを与えてくれる。あと、セルスターター装備も嬉しい(笑)。
趣味趣向というのは、若い頃から変わらないものもあれば、変わるものもある。バイクも同じで、若い頃には好きでなかったものが、今は気に入る……そんなことがあるのだ。
だから読者の皆さんも、試乗会などでいろいろなバイクに乗る機会がある場合は、食わず嫌いをせず、たくさんのバイクに積極的に乗ってほしい。思わぬ自分の好みの変化に気づくかもしれないから!
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