いま現在、僕は2台のヤマハSR400を所有している。1台はForRにもよく登場する2014年式で、もう1台は原型を留めないほどにカスタムした1993年式である。
じつはそれら以外にも3台のSR400とSR500を所有したことがあり、合計5台のSR400/500を乗り継いでいる。そのため、この業界では僕のことを「SR大好きライター」や「生粋のSRマニア」、果ては「バイクはSRしか認めていない」なんて思っている人がいるのだが、当然ながら、そんなことはない(苦笑)。
では、そんな僕がなぜ、5台ものSR400/500を乗り継いだのか? やっぱり、そこにはSRにしかない魅力があるからなのだ。
カスタムの自由度が高すぎる
上の車両は、僕がはじめて所有したSR500だ。購入したのは2001年ごろで、購入時にはほぼこのカタチになっていた。そして、僕の愛車になったあとも基本コンセプトは変えずに、エンジンチューニングやマフラー、シート張り替えなど、細かなポイントを変えていった。
ちなみに左出しアップマフラーは、鈴鹿8耐などでお馴染みの『ハルクプロ』によるワンオフ。自慢のカスタムポイントだった。
ただ、セパハンやスパルタンすぎるエンジン性能に疲れてしまい、2005年に手放してしまった。
そして、普段乗り用としてライトカスタムのSR500を購入したのが2台目……残念ながら写真はない。
その後、2台のSR500を手放してH-D FXRに乗り換えたのだが、2008年に「軽くて気軽に乗れるバイクが欲しいな」と思って愛車にしたのが上のSR400。重厚なH-Dとはあえて真逆の、軽快なトラッカー仕様にカスタムしている。
ただ、これも何を思ったのか、エンジンにかなりのチューニングを施し、さらに見た目重視でシートも超薄タイプと……いろいろとしんどい仕様になってしまい、結果、あまり乗らずに手放してしまった(苦笑)。
2010年に「H-Dの代わりに、やっぱり軽いバイクが欲しい!」と購入したのが、上のSR400。1台目と3台目で懲りたので、「エンジンとキャブはノーマル」という点がポイント。
一見するとトラッカーぽいのだが、低めのコンチハンドルにバックステップ、タイヤはTT100GPをチョイス。カスタムテーマは「70年代のアメリカで草レースを走るYAMAHA」……なかなかマニアックでしょ?
ちなみに当時はノーマルエンジンとキャブにこだわって買ったのだが、12年経った今では、井上ボーリング製斧型軽量クランクやヨシムラジャパン製カムシャフト、CRキャブレターなどを投入。排気量399ccのまま、びっくりするぐらいブン回るエンジンにチューニングしている(笑)。
……と、これまでの愛車を見てもらってわかる通り、じつはSR400/500といっても、僕の場合、同じ車両とは思えないラインナップとなっている。そして、このカスタムに対する自由度の高さが、僕がSRを好む最大の理由なのである。
僕の場合はついついやり過ぎてしまって元に戻せず、手放してはまた購入するということを繰り返してしまうのだが、SRは専用カスタムパーツが豊富。1台のSRを乗り続け、カフェレーサーやトラッカーなど、さまざまなスタイルに変えることだって可能だ。
そう、SRはオーナーが思い思いのスタイリングを楽しめる唯一無二の車種だといっていいだろう。
現代を走る70年代スタイル
SRはカスタムベースとして優れているのだが、純正スタイルだって美しい。前述のように、写真はないが2台目のSR500は純正スタイルで乗っていた。
そもそも43年もの間、70年代の古き良きオートバイのスタイルをそのままに、新車で乗ることができたのは、SRの最も大きな魅力だといえるだろう。
そして上の記事に書いたように、僕はCB750FOURやSR500SPなどの70年代スタイルが好きだ。でもやっぱりトラブルが不安……そこで2015年1月に5台目のSRとして、「純正スタイル」で乗るために新車を購入した。
だけど、そもそもSRの「純正」って何だろう?
SR400/500といえば、「43年間変わらないスタイル」なんてことがよく言われるが、実際にはかなり変わっている。
その変遷については、僕が以前書いた記事に詳しいが……
>偉大なるYAMAHA SR400を振り返る(1978~1992年編)
>偉大なるYAMAHA SR400を振り返る(1993~2008年編)
>偉大なるYAMAHA SR400を振り返る(2010~2021年編)
一見しただけでも、たとえば1978年の初期型と2021年のファイナルエディションでは大きく異なるのがわかるはず。
初期型はフロント19インチホイールに、フューエルタンクは細身、キャブレターは強制開閉式でダイレクト感のあるもの(ただし、季節や気候で調子が変わり、セッティングに気を使う)。
対してファイナルエディションはフロント18インチホイール、フューエルタンクは2型以降と同じ丸みを帯びたスタイル、吸気はもちろんフューエルインジェクションで、季節や気候に関係なく快調!
たしかに高年式SRもエンジンやフレームは70年代の基本設計を受け継いでいるので、SRが「現代を走る70年代モデル」であることに間違いはない。だけど、ちょっとカスタムを追加することで、高年式モデルの安心感はそのままに、さらに雰囲気をアップさせることができるのだ。
というわけで、7年間コツコツとカスタムを続けた現在の愛車がコチラ。
フロント19インチホイールにアップハンドルなどで、クラシカルイメージを高めているのだ。
さらに細かい箇所を書けば……
ヘッドライトレンズはドラッグスター400純正を流用して凸レンズ化し、フォークチューブを廃してサイドリフレクターを装着。
テールランプは純正だが、00年までの丸リフレクタータイプに換装。ウインカーレンズは初期型の通称「おっぱいレンズ」に変えるなど、言わなければ誰も気づかないような箇所をカスタムしている(笑)。
SRはそのままでも十分に美しいバイクだ。原型を留めないほどのカスタムをしなければ楽しめないようなバイクでは決してない!
だけど、純正スタイルでもさらに工夫をすれば、自分だけのオリジナリティを与えることができる。この車両のように、SRの原点である70年代にさらに近づけることだってできるのだ。
つまり、SRの魅力はすべてカスタムに集約されている! フルカスタムにしろ、純正スタイルにしろ、オーナーが自分の好みを反映させられることにある。それが、僕が5台もの“個性が異なる”SRを乗り継いだ理由なのだ。
……と言い切って終わりたいところだけど、やっぱりバイクは走ってナンボ。空冷単気筒エンジンの小気味良い鼓動感や、軽快な車体が生み出すハンドリングも秀逸である。
というわけで、さらにSRの魅力を考察すべく、後編へ続く!!(あくまでも僕の主観ですが・笑)