記事「大注目! 伊豆半島の伊豆市がツーリングライダーの誘客に動く!?」では伊豆市の菊地 豊(きくち ゆたか)市長に伊豆市がライダー誘致に向けて動き出したことを伺った。今回は、その場で聞いたもうひとつの話についてお伝えしよう。

伊豆市ほか中山間地が抱えている移動の課題

その前に、静岡県の現状について。静岡県は延々と続く東名高速でもネタにされるように、東西にものすごく長い(約155km!)。静岡市、富士市、浜松市といった大きな都市部は全て駿河湾に面しており、それらの街の北側には山だらけの中山間地が広がっている。

伊豆市は、県の東端、伊豆半島の北部に位置しているが、そのほとんどが中山間地だ。中山間地は日本の国土の約7割を占めると言われていて、そうした場所に住む人たちは常に移動の課題を抱えている。クルマやバイクがないとどこに行くにも大変な土地で、人口減少や少子高齢化、学校の統廃合などにより、通学距離も延長傾向にある。

菊地市長は、そうした中山間地に住む高校生が、通学も含めた移動の問題を抱えていることを行政の課題と認識しているのだ。今回は、カブカップ日本GP(残念ながら台風で中止となった)に参加するための練習走行の場で伺った話であり、あくまでもプライベートでの発言ということになるが、移動の課題について語って頂いた。

県教委には地域に応じた対応をお願いしたい

菊地市長:ライダーの誘致より難しいのは高校生の通学で…。昨日(8月2日)、glafit(グラフィット)というメーカーさんから電動バイク(職員の公務用)を寄付頂いたんですけど、いや、これは高校生の通学にも使えるなと思ったんですけど、現状は全てのバイクが禁止、とにかく乗ってはいけないんですね。全面禁止というのはやっぱり現実と合っていないと思うんです。

静岡県には、伊豆市のように中山間地で路線バスもない所が多い。でも、そこには高校生や中学生がいるわけですから。親御さんが朝晩に送迎するケースも多いんですが、もちろん負担もある。

田中:埼玉県で唯一、バイク通学がエリア的に許可されている秩父地域でも雨天や冬場は親御さんがクルマで送迎される家庭が多いですね。

菊地市長:最高速度が20km/hとか25km/hとかっていう電動バイクでの通学を全部禁止しなければいけないリスクだとは到底思えないんです。

まずは、現物と現地を見ながら、静岡県教育委員会の皆さんと話を始めたいなと思っています。良い悪いではなくて、基本的な考え方を整理して、そのうえで地域に応じた対応をお願いしたい。

例えば、三島市とか長沼町の皆さんだったら自宅から高校に近いことが多いし、バス路線も整備されているから伊豆市が抱えるような問題は少ないわけですよね。

伊豆市の場合にはバスが少ないし、バスが入っていかない所もたくさんあるし、最寄りの駅まで遠いことも多い。だから地域に応じたやり方を考えるということで整理して頂ければ、伊豆市は伊豆市なりの政策ができると思うんです。

安全運転教育なども一律でなくてもいいのでは?

田中:それに対して、県の教育委員会とお話の場を持つとか、現地を視察するとか、すでに動きはあるのでしょうか。

菊地市長:先々月くらいに別件で教育委員会に行ったんですが、県のほうでも少し考え始めてくれているようなので、私のほうで具体的な課題と論点を整理しようと思っています。

安全運転教育なども一律でなくてもいいと思うんですよ。バスも電車もある所、高校がいくつもある所と伊豆市の高校は違うので。だから、学校側にまかせっきりにするのではなく整理していただければと思います。

今日はプライベートで来ていますけど、市長として「行政も含めて…」と言っているのは、そういう大人になるための社会教育は、相手が高校生であっても「地域の我々がやりましょう」ということなんです。

高校生だって2~3年もしたらクルマとかバイクに乗って、社会人になるわけですから。

バイクを安全に活用できる時代になっている

田中:静岡県としては、三ない運動に関しては各校にまかせているというのが実情かと思います。ただし、多くの学校の校則には三ない運動が今も残っていて、モビリティを必要とする地域の子どもたちは今も変わらず移動の課題を抱えています。

菊地市長:親御さんもね、30〰40年前はバイクの事故が多かったり不安があったでしょうけど、今は全然状況が違いますから。保護者の皆さんにもちゃんと説明しつつ、伊豆市のようにどんどん路線バスが減っていく地域の“市民の足”として、バイクを安全に活用できる時代になっていると思うんです。

昨日見たのは、glafit社のGFR-02という電動バイクでしたけど、どう見てもあれで暴走行為はできないですしね。しかも、物によっては、朝、下り坂では自転車モードでバッテリーを節約してエコに走り、帰りの登り道ではバイクモードに切り替えてペダルをこがずにラクに通学できる、そんな新しい乗り物まであるわけですから。
glafit GFR-02:自転車・ハイブリッド(電動アシスト自転車)・電動バイクの3モードを切り替えられる。運転には原付免許が必要でヘルメットも常時着用となる(自転車・ハイブリッドモード走行時でもヘルメットは着用する)

乗り物のイノベーションの中で、新しい政策を

菊地市長:乗り物のイノベーションが実現された社会の中での新しい政策がありえると思いますね。

だから、私もこうやって、高校生とか卒業生たち(原動機研究部のメンバー・OB)とバイクに乗ったりしてるんですけど。あえて私が来ているのも、私も若い頃にバイクに乗っていたからわかるんですけど、「くれぐれも安全に乗ろうね」というメッセージを発しながら参加しているんです。

田中:ありがとうございました。

伊豆市を中心とした伊豆半島へのツーリングライダーの積極的な誘致、高校生のバイク通学など地域の移動課題改善にむけた菊地市長の取組みに注目したい!

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