ヤンマシスクープ班は、カワサキがニンジャZX-25Rに続く小排気量4気筒マシンとして「ニンジャZX-4R」が企画されているとの情報を掴んでいる。これが現実となれば、かつてのZ400FXやゼファーのDNAを引き継ぐネイキッド仕様が登場する可能性も濃厚だ。その車名は「Z400RS」になる可能性が非常に高いが、続報の前にかつて存在した「400RS」についておさらいしてみるとしよう。

●文:ヤングマシン編集部 ●CG:SRD

「Z900RSのような伝統を継承するモデルは今後も投入する」

2017年末の発売以来、大型クラスで4年連続ベストセラーに輝き、いまだ人気の衰えないZ900RS。2022年に入って2気筒の弟分・Z650RSが発売され、さらにカワサキの伊藤浩社長は以前、「Z900RSのような伝統を継承するモデルは今後も投入する」と公言している。

また、今年に入ってからZX-25Rの兄貴分にあたる4気筒スーパースポーツ、ニンジャZX-4Rの情報も掴んだ本誌スクープ班は、テスト車両の目撃情報もお届けした。
▲ヤングマシン2022年4月号より、ニンジャZX-4RのスクープCG

これらを総合して考えれば、400クラスや250クラスにもRSシリーズが投入されると見て、それほど不自然ではないはずだ。なかでも、新規ZX-4Rの登場からはさまざまな分岐点が想像できる。その最有力候補が4気筒ネイキッドのZ400RSになるのではないだろうか。

ところで、カワサキのロードスター=RSシリーズには原点がある。通称Z2の「750RS」、W3の「650RS」、そしてKZと呼ばれることもあったらしい「400RS」だ。のちに750RSはZ750FOURと名を変え、400RSもZ400へと改名。650RSは1975年をもって生産終了した。最初は型式名だったZ2等が次第に市民権を得るとともに車名に採用されていったわけだが、このあたりのニュアンスや空気感を知るには当時の記事を読むのがいちばんだ。新型Z400RSが出るなら、その姿を温故知新で想像してみたい──。
▲上は1974年に発売された400RSで、下は1976年に車名を変えるとともにマイナーチェンジを受けたZ400である。400RSについては後述の当時インプレをお読みいただきたい。Z400については以下↓↓
KAWASAKI Z400[1976model]■排気量398cc 最高出力36PS/8500rpm 燃費44km/L 燃料タンク容量14L 車重172kg 価格310,000円(諸元と価格は全てヤングマシン1976年9月号より)……当時の記事には「Z400の前身にあたる400-RSは74年7月に登場している。デビュー後2年目の今年春、大幅なマイナーチェンジを受けて“Z400”に変わったわけだが、ピストン寸法・形状を変更した最大出力を1psアップした他に、エアクリーナーまわりの設計変更で吸気音を低くおさえている。4ストロークOHCツインというオーソドックスなエンジンだが、低中速の扱い易さと共に9,000rpmの高回転もこなすタフネスぶりを発揮する。」とある。

というわけで、ヤングマシンのバックナンバーに掲載されていた当時もののインプレッションを丸ごとお届けしよう。新型Z400RSのスクープについては着々と情報を精査しているので、時が来たら一気呵成に記事化する所存。お楽しみに。

以下の内容は、ヤングマシン1974年9月号の『NEW MODEL TEST(カラー&グラビア) KAWASAKI 400RS』より。

YOUNG MACHINE  1974年9月号

“クールヤングのオートバイマガジン”を謳う、創刊2周年を間近に控えた当時のヤングマシン。当時は輸入車を巻頭グラビアに掲載することも多く、この号では1937年の“エクセルシャー・マンクスマン”の姿やドゥカティ750SS、ドゥカティスクランブラーの姿も。誌面はモトチクリスモ誌の協力によるTZ700の試乗レポートなどテンコ盛の内容で、当時著名なトライアルライダーのひとりだった櫛谷久さん(現クシタニ会長)によるトライアル教室・第4回も掲載していた。
※編註:以下の復刻記事は当時の雰囲気を再現するために、明らかな誤字やWeb向きでない特殊な記号を除いて原文の仮名遣いを可能な限り踏襲しています

400-RS

うつくしいツイン。未知の可能性を秘めて───新発売。

●4ストローク2気筒・SOHCエンジン●398cc●車重170kg●制動距離14.5m(50km/h)●最高出力35ps/8500rpm

道は果てしなくつづく………
TWINの響きをあとに大きな可能性に挑みたい。
心をとらえるバーチカル感触(フィーリング)、
ロードスターの銘に恥じない風格と信頼。
あたらしい400-RSはツインでの登場です。

川崎重工業株式会社・発動機事業本部/カワサキオートバイ販売株式会社

NEW MODEL KAWASAKI 400RS

カワサキRSシリーズの最小モデル、400RS(型式KZ-400)が国内販売に移された。すでに今年1月よりアメリカ向けには輸出されていたが、国内では運輸省認定に時間がかかり発売が遅れていた。

この400RSはカワサキが“うつくしいツイン”というキャッチフレーズで売り出したもので、スタイリング、性能ともにアクの強さを極力避け、誰にも受け入れやすい素直な性格の中量級マシンとして仕上げられている。

エンジンは4ストロークSOHC2気筒、排気量は内径×行程64×62mmの398cc。最高出力35ps/8500rpm、最大トルク3.17kg-m7500rpmとおとなしい。このエンジンは2個のバランサーによってピストンの往復慣性を打ち消し、振動は4気筒並みとなっている。

スポーツ性に富む2ストロークマシンの多い350~400ccクラスに新しいタイプの4ストロークマシンの登場である。(詳細およびテストレポートはグラビアP35~)

価格298,000円(7月20日発売)
▲■クランクケース前方のふくらみにはバランサーが納まっている。オイルはケース右下の点検窓から確認できる。オイル量3L。■メーター回りはシンプルなデザインで見やすい。レッドゾーンは9000rpmから。■コンパクトにまとめられたエンジン回り。バルブクリアランスは偏心シャフトにより調整する。キャブは強制開閉式CVタイプ。■400RSのフロントビュー。ディスクブレーキは400SSとは異なる新設計。タイヤはフロント3.25-18、リヤ3.50-18、ヨコハマ。■スリムなスタイリングによってムリのない自然なライディングポジションを得ることができる。ガソリンタンク容量は14L。キャップはキーなし、フートステップは可倒式。

NEW MODEL TEST「カワサキ400RS」

400RSのライバル車は?──カワサキ400SS/ホンダCB360T/ヤマハTX500/トライアンフ500

静かに、滑らかに、スピーディーに──ライダーは植田靖憲

カワサキRSシリーズの第3弾、400RSは昨年のオイルショック以来の総需要抑制政策によって国内発売に“マッタ”をかけられていた──対米輸出は1月より開始されているが──。

モーターショウではガラス箱の中に展示され、“来春発売予定”のふれこみであったが、社会情勢にかんがみて今、ようやくわれわれの前にその全貌を明らかにした。

カワサキとしてはこのサイズの4ストロークのマシンは初めてで、エンジンからそれを搭載するフレームまで、いままでにないまったく新しい試みである。排気量からいえば同社の400SSと競合するが、同じ土俵の中でも新しい400RSは発想・企画の時点からまったく別個の方針を採っている。

設計思想は“二輪のコミューター”

以前のカワサキのメーカーイメージは「性能を最優先する」にあったと言っても過言ではないが、400SSでピーキーな、マニアックなエンジン性格をマイルドなものへと変更、「乗りやすさ」を打ち出したのは記憶にあたらしい。

さらに400RSには、SSをはじめ2ストロークエンジンではきわめて難しい、これこそ4ストロークでなければ、という課題をもたせたところがミソ。

『2輪のコミューター』これがRS開発における思想的バックボーンであり、製作上の目標となった。コミューターとしての資質は、すべてのライダーに対して「乗りやすく」「安全に」、また周囲の人々には騒音・排気ガスなどの「公害をまかない」ことにある。▲■カムシャフトチェーンのテンションアジャスターはエンジンのフロント側で調整しやすい。排気のバランスチューブはシリンダーブロックに内蔵され外観はスッキリしている。■キャブレターは強制開閉式CVタイプ×2。ケイヒンCVB36。■メーター回り。インジケーターランプは上からウィンカー、ニュートラル、オイル。

これから一層厳しくなるであろう環境に対して長期的にとり組み、状況の許す範囲内でガソリンエンジンの二輪車を存続させていこう、というのがカワサキのネライでもある。

4ストロークの心臓はシングルOHC、バーチカルツインのオーソドックスなレイアウト。ボア・ストローク64×62mm、半球形の燃焼室で圧縮比9.0、最大出力35ps/8500rpm、最大トルク3.17kg-m7500rpm。数値上からも性能は控え目である。

クランク軸はホンダ、ヤマハで採用している180°オフセットより低中速で有利な360°タイプを採用。RSのエンジン性格の基本はここにみられる。2気筒ではオーソドックスな手法だが、左右ピストンが同時に上下するので振動発生では基本的に難のある方式。これにはバランサーを装備することで対処している。

バランサーはクランク軸の前後に1個づつ、軸中心にあるギヤでチェーン駆動させる。進行方向と逆回転するクランクの運動エネルギーは、反対方向の正回転するバランサーで吸収する。これでクランク軸から発生する振動を相殺して4気筒なみの振動特性を得る。この方式はヤマハのバランサーシステムよりスペース的に有利で、ケース幅はギヤ1枚分の増加ですみ、クランク軸からミッションへの距離も短くなる。一次減速はHY-VOチェーンで騒音を低下させる。減速比2.43。

クランク軸受にはプレーンメタルを使い、クランクウェイトを挟んで2個づつ、計4個で軸ブレを止め耐久力の増大をはかっている。カムシャフトはシリンダーヘッドとカムカバーで直接支持されている。

タイミングチェーンは左右シリンダーの中央をとおり、ソリ型のテンショナーをもつ。

これらのエンジン各部の潤滑はウエットサンプ式でトロコイド式オイルポンプを使う。オイル容量は3Lと多くとり、オイル温度の上昇、粘度の劣化に対して余裕をもった潤滑を約束する。クラッチハウジング内側のギヤで駆動されるオイルポンプは4000rpm時に4kg/㎠の油圧をもちタコメーター内のランプは1500rpmで消える。

650RS、TX750などの360°クランクをもつ2気筒車は左右シリンダーのバランスをとるために、排気側にバランスチューブをつける。基本設計の古い650RSはエキゾーストパイプに、TXはシリンダーヘッドにつけている。400RSにもこのバランスチューブがあるが、TXと同じようにチューブはエンジンブロックに内蔵、EXポート部で左右を連結するが外観からはまったく見えず、デザイン的に成功している。

フレーム形状はカワサキロードスポーツに共通のダブルクレードル。パイプのとりまわしはコンパクトに処理している。しかしOHCエンジンを抱く関係上、どうしても上下の長さが必要になるが、その分をエンジン本体のマウントを低くすることで重心位置の高まるのを嫌っている。最低地上高125mmはカワサキ車ではもちろん、国産ロードスポーツでも一番低い。

全長2080mmはSSより55mm長くデザイン上にも一まわり大きく落ちつきをもたせている。ホイールベース1360mmは逆に5mm短い。キャスター63°(※現代の表示方法では27°)、トレール102mmの前輪アライメントもSSに比して直進性のクセを柔らげるセッティング。

フロントフォークはセリアーニタイプ。スッキリ軽快な感じをあたえストロークは135mm。リヤダンパーはハーフカバード・タイプで5段階調整つき。ストロークは80mm。前後のダンピング特性はソフトに、乗り心地の向上をはかっている。

フロント/ディスク径277mmはSSと同サイズの油圧シングルピストンだが、キャリパーは一体式に変えて剛性を増し性能向上をはかる。リヤ/ドラムもリーディング・トレーリング式180mm×30mmで、パネルにブレーキシュー摩耗のインジケーターをつける。

未来をめざす2輪車として公害対策は不可欠の要素である。RSには現在の技術レベルでは平均的なバルブシートの無鉛化対策、ブローバイガス還元装置を取りつけている。

バルブメカニズムをもつ4ストロークの日常のメンテナンスにタペットの調整があるが、偏心シャフトを用いてクリアランスは比較的簡単にできる。車載工具にはシックネスゲージが入っている。点火系統は1つのコイルで左右シリンダーに同時点火することでコンタクトポイントは1つだけ。

360°クランクの採用

OHC2気筒の400RSに関するウワサの1つにCBやTXのように180°クランクを備えるという説があった。根拠は、2気筒の場合高速域での振動発生とスポーツ性の意味ではだんだん有利になるからだ。

しかしRS(ロードスター)の名称や落ちついたムードの外観から個人的に360°を想定していた。でなければ同じ工場で造られる400SSと競合し、性能面では明らかに後発のRSには「ケムリが出ない……」ぐらいのメリットしか見い出せなくなる。

外観は外側につき出たEXパイプをケース下でフレームにピッタリと引きもどし、落ちついた英国的感覚を与え、わずかにテールアップしたマフラーがRSの性格を表現しているようだ。タンクデザインもシンプルなラインでスマートさを強調オーバーな装飾品はつけていない。

セル一発。エンジン音を聞いたとき思わずニヤリとしたものだ。

空ブカシすると回転計の針は遅くもなく早くもなく、スムーズに右手のうごきに追従しトルクの谷間もない。エンジン・排気音とも低くおさえられてえ静かなだけに400ccの排気量を疑うほど。バランサー効果で振動が少ないこともおおいに関係している。

ライディングポジションはハンドル関係がSSと共通だが、腰から下の部分はスッキリして好ましい。シートは位置のわりに前部が捕捉、タンクとのラインは接合部でくびれ接地はしやすい。ニーグリップはごく自然に、ステップはキックシャフトの上に位置するから幅はせまい。

試乗車はエンジン番号K4-8285。本来アメリカへ送られるのをピックアップして国内規格に変えたもの。変更はスピードメーター表示とシートベルト装着だけで他になんら変るところはない。

工場内のテストコースで最高速を試みた。レッドゾーン9000rpmの各ギヤの速度は55、81、110、135、5速は最高出力8500rpm付近で伸びがとまり145km/hを読みとった。

全長1km、幅約3mのコースは周囲に金網を張りめぐらし、最高速を試みるたびに急制動をせまられた。前輪ディスクはSSのそれよりも強力なものをみせタッチもよかった。ディスク径は同一だが、一体式キャリパーで効きはより確実になった。後輪はロッド式で踏力が直接制動になるものだが、RSでは効きはじめまでにタイムラグを感じた。

一応限界性能をたしかめたので国道に乗り出してみた。

トップスロー25km/h

クラッチ握力は軽いほうでつながりショックはない。シフトはリンクを使わずにダイレクト。レバー比は日本人の足に合い、カカトをステップ上でずらさずに変速できた。ただミッションはまだ当たりがついておらず100kmほど走ったあとで左足の親指に水ぶくれをつくった。節度もよいからなじめば具合よくなるだろう。

スムーズなエンジンで信号スタートは非常に楽だった。クラッチのつながりは“ミート”よりも“つなぐ”ほうがあう。ラフな操作でも気づかいせずにすむので親しみやすい。タンデム乗車時にはさらに乗りやすさが浮きでてくる。

平坦路でトップスローを計ってみたら、なんと25km/h=1500rpmが可能だった。ことあたりのネバリはやはり4ストローク特有のもので、4気筒なみの振動特性をもつRSの性格の1つといえる。ゆっくりアクセルを開ければジワジワと速度は上がり、ノッキング現象はなかった。

今度は一気に全開にしたところ、エアクリーナーの吸入音が大きくなり、ほとんど息つきもせず前回と同じ反応を示した。このような実用に即さないアクセリングもできることは日常使用で頻繁なシフトを要求せず、イージーライディングもOKということだ。これはCVキャブレターの効果も見逃せない。シリンダー吸入圧によってベンチュリ―径が変化するCVタイプは、初心者など慣れないライダーにも適合する。

80~100km/hの高速クルージングのときエンジン・排気音は低められ振動はきわめて少ない。バランサー効果のおかげで連続走行でも疲労は少ないだろう。5速=100km/hは6000rpmを示す。(試乗車のメーターはシブく、走行曲線では5600rpm)この速度まで5500rpmで右はミラーにわずかな映像ズレとステップに無視できない程度の振動がでる。9000rpmでも2気筒の平均を下まわり、法さえ許せば燃料消費率のよい7500rpm(最大トルク時)の連続も可能と思う。

スラロームの切り返しは重心位置の低いこともあってクセはなく、倒れ込みも素直であった。SS系のカワサキ車にあった切り込みのシブさはなく、路面状態によるハンドリング不安は消されていた。またサスペンション関係では前後ともSSよりソフトなセッティングで路面段差を吸収するショックは少なかった。柔らかすぎで走行に支障をきたさないかぎりサスは固くないほうがよい。

つまり、カワサキのニューフェイス400RSは“マイルドなマッハ”と表現したあの400SSとはマイルドの意味が異なり、もっと範囲は広く、マシン全体にほのかなにおいが漂う。ロードスポーツというカテゴリーにあって、RSのひかえ目なエンジン性能とバイブレスシステムでは感覚性能はイヤでも低下させられるから、最高速度・加速性能という動力性能を重んじた、いわゆるスポーツライクな要求に対しては不満が残るかもしれない。それは否定できないにしても、現時点でも総合バランスのきわめて優れたこの400RSは、何年か後の交通機関の方向としてとらえたとき、一層高い評価を受けることができると思う。

将来指向の400RS

聞くところによると、植田靖憲と私は国内で最初に400RSをテストする幸運に恵まれたらしい。(もちろんメーカー関係者は別だが) 同社宣伝課の渡辺氏が工場敷地内を走って調子をみただけというRSは積算計がまだ10km。先刻、目の前の生産ラインから下りたばかりで湯気が立っているような状態である。

深みのある真紅のカラーリング、マフラーテールをはね上げたりせずアクの感じられないスタイルなど、このRSシリーズ最小モデルは確かに優美な雰囲気さえ漂わせている。

写真撮影の後、直線1kmのテストコースに入る。人間1人と車1台が中に入るとこのテストコースは自動的に入口の鉄トビラを閉ざしてしまう。金網の中にネズミ一匹という風景。

植田靖憲が先に走り、数往復の後、私に代わる。ポジション、スイッチ類の操作性など5体に伝わるRSの感触は初対面から慣れ慣れしい。おじけずおくせずである。機能的にも人間工学的にもまったく不自然さがない。

片道をゆっくり流した後、ターンをして今度はアクセル全開。タコメーターの針はロー、セカンドでは9000rpmからのレッドゾーンに簡単にとびこみ、1万rpmをこえてしまう。コースの中間点では5速8500rpmほど、スピードは145~150km/hあたりを指している。伏姿勢でもこれ以上なかなか上がらぬうちにブレーキングラインに来てしまう。2、3度往復したが結果はあまり変らない。後で同社の技術関係者に聞くと100マイル(160km/h)はでるというから、私のウデがわるいのだろう。

もっとも、RSはこんなことのために設計されてはいない。テストコースから一歩外へ出たとき、その扱いやすさ、柔軟性は他に類をみないほどである。400ccというクラスは初心者にはオーバーパワーの排気量であろうが、RSの乗りやすさはそんな先入観を完全にくつ返すに違いない。シリンダー当たり200ccのツインは超低速から高速まで、バランサーの効果もあってマルチの如くスムースに回る。

トータルバランスのよさは操縦性にも現われ、ライダーの意志と反射神経にさえ不確定要素がなければ、マシン自体が勝手な行動をとることはまったくない。

反面、素直な操縦性と、どちらかといえば体感的に印象のうすい加速感がスポーツ派ライダーに多少の欲求不満を抱かせるかも知れない。

ともあれ、今後市場も送り出されるニューマシンは、RSにみられるような総合性能の高さを必然的に要求されるに違いない。

(矢沢)

カワサキ400RS諸元

■全長2080mm 全巾810mm 全高1120mm 軸間距離1360mm 最低地上高125mm 空車重量170kg■エンジン型式4サイクル2気筒SOHC 総排気量398cc 内径×行程64×62mm 圧縮比9.0 最高出力35ps/8500rpm 最大トルク3.17kg-m/7500rpm 始動方式セル・キック併用 点火方式バッテリー点火 プラグNGL B8ES 潤滑方式ウェットサンプ式 エンジンオイルSAE10W40/3L キャブレター京浜CVB36×2 ミッション5段・常時噛合リターン クラッチ湿式多板■フレーム・ダブルクレードル タイヤサイズ(前)3.25-18 (後)3.50-18 ブレーキ型式(前)ディスク・有効径226mm (後)L.T 180×30mm キャスター63° トレール102mm バッテリー12V12AH 前照灯12V50/40W 尾灯/制動灯12V27/8W■登坂能力24° 最小回転半径2.3m 燃料消費率36km/L(60km/h) 制動距離14.5m(50km/h) 燃料タンク容量14L 価格298,000円 ※諸元や価格は1974年当時のもの

──後日公開の〈後編〉では、ライバル×4車との比較で、当時のバイク乗りの思いや価値観に触れていきたい。


 

※本記事は“ヤングマシン”が提供したものであり、著作上の権利および文責は提供元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。

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