うわぁ、もう31年前の話ですか! Mr.Childrenの「innocent world」、trfの「BOY MEETS GIRL」、藤谷美和子&大内義昭の「愛が生まれた日」などが街で流れまくり、Appleは倒産しかけ、村山富市連立内閣が成立した1994年……。カワサキネイキッド2本目の大黒柱となっていく「ZRX」がニギニギしくも厳かに颯爽☆登場いたしました!!

●まだその頃は不夜城だった八重洲出版モーターサイクリスト編集部の片隅で、明石から送られてきた資料を整理していた筆者。省エネ推進とかで深夜は無駄な電灯が消されていた薄暗い部屋で、封筒から取り出した冊子の表紙を見たとき深い感銘を受けましたね〜。バイクの姿どころか写真1枚使われていない1994年型(最初期の)カワサキ「ZRX」カタログ……縦型全12ページにわたる内容には開発者の熱い意思が込められていたのです!
カワサキZRXという好漢【その2】は今しばらくお待ちください m(_ _)m
Contents
レプリカブームを吹き飛ばし、一時代を画したゼファー大旋風!
空前絶後のバイクブームが巻き起こった1980年代の後半は、フルカウルのボディにアルミフレームとハイパワーエンジンを内蔵するレーサーレプリカの全盛期。

●1989年型ホンダ「NSR250R SP」。軽量マグネシウム製ホイールや高効率な乾式多板クラッチを標準装備して登場! 減衰力調整機構付きの前後サスペンションも採用されていましたね。このような250㏄なら45馬力、400㏄クラスなら59馬力(実際にはそれ以上とも!?)を発揮するエンジンを搭載した超高性能車両が4メーカーからヘタすると数ヶ月ごとにリリースされ、どれも飛ぶように売れていた当時……今となっては信じられませんなぁ。ちなみに「NSR250R」は初代の1986年型が55万9000円で、その3年後となる写真のモデルは3%消費税込みで70万9670円となっておりました
1年ごと、いやヘタをすれば数ヶ月というスパンでアップデートが繰り返され、性能はもちろん価格もグイグイとウナギ上りだったアノ頃……。
カワサキから突然(1989年4月)、素うどんのような400㏄バイク「ゼファー」が送り出されました。

●同排気量のライバルたちが軒並み59馬力を誇示していたなかで、46馬力という250レプリカ+1馬力(!?)という穏やかなパワーで登場した「ゼファー」。そのZEPHYRとは西風を意味する英語、なおかつ頭文字にカワサキの称号Zをいただくことで熱き血統を表していました。価格は52万9000円(その年にスタートした消費税込みでも54万4870円)
どう見ても時代遅れにしか思えなかった空冷4気筒DOHC2バルブエンジン、シンプルにもほどがある懐古的なスタイリング、フロントサスペンションは正立テレスコピックだし、リヤサスにいたっては今さら感全開のツインショック式ィィィッ!?

●一説によるとZ2(750RS)を再販するプロジェクトから開発がスタートしたとされる「ゼファー」は、瞬く間に幅広いファンを獲得して納車待ちが数ヶ月にも及ぶ大ヒットモデルへと成り上がり! この400㏄モデルを起点にしてよりZ2をイメージさせる丸めなスタイリングを獲得した「ゼファー750」、威風堂々たる大きさを誇った「ゼファー1100」と、各排気量ごとに明確な個性を持たせつつ、ゼファーシリーズは拡充されていきました!
しかし、このカウルを脱ぎ去った裸一貫の潔さがアンチレプリカ層にバカウケし、俗に言うネイキッドブームが勃興していったのです。
1990年8月には「ゼファー750」が、

●空冷738ccの並列4気筒DOHC2バルブエンジン(68馬力)は、かつての「Z650」をルーツに「GPz750」まで発展していったパワーユニット。この流麗なスタイリングに惚れ込んだ人多し
1992年3月には「ゼファー1100」までリリースされ、いずれもベストセラー街道をバクシン!

●カワサキの欧米向け大排気量ツアラー「ZG1200 Voyager(ボイジャー)」の1196㏄水冷エンジンをベースに空冷&小排気量化(!)した1062ccの並列4気筒エンジンを搭載。シリンダーあたりスパークプラグ2本を備えて93馬力を8000回転時に発生……想定外の乗りやすさに驚いたものです〜
絶対王者「ゼファー」に対抗するため他メーカーは右往左往〜!?
遅ればせながらライバルメーカーもゼファーシリーズが確立したウケるネイキッドモデルの文法 ~ ①往年の名車を彷彿とさせるレトロな外観 ②丸目一眼ヘッドライト ③扱いやすく存在感あるエンジン ④何はともあれリヤ2本ショック ⑤各部に高品質な銀メッキパーツ ~ を踏襲したモデルを次々と投入していきます。

●スズキは1992年の4月に「GSX400S KATANA」をリリース! すでにスポーティなネイキッドスポーツとして「ゼファー」と同じ1989年にデビューしていた「バンディット400」があったのですけれど人気はイマイチ盛り上がらず。ならば!とばかり、レトロイメージどころか往年の名車をほぼ完全(縮小)コピーして世に問うたのが400カタナ(250カタナまでありました!)。残念ながらこちらもゼファー旋風には対抗しきれませんでしたね……
1992年4月にはホンダが「CB400スーパーフォア」を、

●満を持して投入した「CB-1」シリーズがケチョンケチョンにされたホンダがPROJECT -BIG1を旗印に捲土重来を果たした愛称(?)400スーフォア。かつて鈴鹿で開催されていたNK4レースでは無敵を誇りました!
1993年3月ヤマハは「XJR400」を、

●う〜ん、今見てもカッコいいペケジェイアール400(一部地域での呼び方!?)。なんと搭載されていた399cc空冷並列4気筒DOHC4バルブエンジンは新規に開発された逸品! 最高出力53馬力を1万1000回転時に発生しました。当時は空冷というだけで魅力が3割増しになったように感じたものです。一時期は淘汰されたメカニズムだというのに……これもまたゼファー効果!?
そしてスズキも1994年2月に「GSX400インパルス」をリリース。

●「スズキがやっとゼファーを出した」など口の悪い悪友たちは揶揄していましたが、ネイキッド文頭に沿った売れる要素をこれでもかとばかり詰め込んだ意欲作。実際のところ人気モデルへ!

●「GSX400インパルス」のバリエーションモデルとして同1994年6月に発売されたのが「GSX400インパルス TypeS」。レジェンドライダー、ウェス・クーリー選手がAMAスーパーバイクレースを席巻した「GS1000S」を彷彿とさせるスタイリングと白×青のカラーは大いにウケました〜
当時モーターサイクリスト編集部に在籍していた私も「おおっ! ついにゼファー包囲網が完成したぞおっ」とおののいたのもつかの間、「GSX400インパルス」登場と全く同じタイミング……1994年2月にカワサキは「ZRX」を発表したのです。

●このメタリックグレーストーンという激シブなカラーをメイン訴求色に据えて、あとはこれまたダークな赤と青というソリッドな3色で登場した「ZRX」。誰もが欲しがるであろうライムグリーンをあえて用意しなかったところにもネイキッドの覇者カワサキの余裕を感じさせたもの!

●なお、最初の導入文で触れたAppleの危機。1994年ころは出す製品出す製品すべて不人気で巨額な赤字を計上。社長も次々に代わって迷走……冗談抜きで倒産する寸前までいきました。これまた今となっては信じられない話ですが(^^ゞ
ゼファーブームのその先へ……カワサキ自らの回答「ZRX」
ゼファーシリーズが俗に言う丸Zをリスペクトしたものなら「ZRX」は角Z……中でもローソンレプリカたる「Z1000R」をイメージしつつデザインされたことは疑いようのない事実。

●1982年型カワサキ「KZ1000R(Z1000R1)」。詳細は「カワサキ初のレーサーレプリカ」ライムグリーンカラーを導入した初の大排気量車:カワサキZ1000R【あの素晴らしい名車をもう一度】をチェック!
当時の先輩編集部員たちが八方手を尽くしてローソン選手が駆ったホンモノのAMAレーサーや、

●米国の雑誌広告に掲載されたスーパーバイク向けの市販レーサー「KZ1000-S1」(1982年)は、レースへ参戦するためのホモロゲーション獲得に必要な最低限、わずか30台のみが生産されたとされています。こちらの車両を先輩たちは日本国内で見つけだし、徹夜でハイエース移送をしていたなぁ……
往年、米国で発売された貴重なローソンレプリカ車両をかき集め「ZRX」とともに写真撮影したことを今なお鮮烈に覚えております。
エッジの効いたスタイリングに最新技術をうまく投入!
その「ZRX」、エンジンは「ZZR400」譲りの399㏄水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンをモディファイ(外観……シリンダーブロックには空冷っぽいフィンまで創出し、カムカバーもDOHCらしさを強調(^^ゞ)して、新規開発された鋼管ダブルクレードルフレームに搭載。

●1994年型カワサキ「ZRX」カタログより。他の画像より解析度を多少上げておりますので、拡大してしっかり読んでみてくださいませ〜(^w^)/
当然ながらリヤサスペンションは2本ショックで、スイングアームはアルミ材にて構成されたトラス構造。
燃料タンクやサイド&テールカウルにはシュッとしたエッジが立ち「ゼファー」との違いを強調……。

●直線的でスキのない端正なフォルムを構築しつつも、タンデムシート直下には利便性を高める収納式のバンジーフックをしっかり装備。このあたりには排気量とジャンルを問わないカワサキの良心を感じましたネ
そして何と言っても角目一眼ヘッドライトを包み込んだ、非常にカッチョいいビキニカウルがローソン気分を掻き立てます!

●写真はビキニカウルの形状が小変更された2005年モデル。ライト直上「Kawasaki」ロゴのあった部分に走行風取り入れ口が新たに設定され、ウインドスクリーン上方で発生していた乱流が緩和されたとか
……ちなみにこの角目ビキニカウル戦略、ホンダとヤマハも追従いたしますが……幅広い支持を得られたとは言えない結果に終わりました(スズキは丸目だったので難を逃れた!?)。

●1995年型ホンダ「CB400 SUPER FOUR VERSION R」……

●1996年型ヤマハ「XJR400RII」。ともに意欲作だったのですが、丸目一眼に戻す人が多数……
さて、この400㏄ネイキッド戦線に新風を巻き起こしたカワサキ「ZRX」。
超強力なライバルがいたため、堂々クラス年間ランキング1位を獲得……することは叶わなかったのですけれど、その全方位にスキのない好漢っぷりは地道に広く愛されつづけ、最終型となった2008年モデルまで高い人気を維持していきました。
さて次回は丸Z&角Zについてもう少し掘り下げていくとともに、忘れちゃいけない兄貴分の存在、アレレレ〜〜?な丸目一眼仕様の登場などなどを豊富なエピソードとともに紹介していく予定です。

●「あれれ〜〜? おっかしいぞ〜〜!?(脅威の殺人事件巻き込まれ率を誇る江戸川コナンくん風に)。ビキニカウルが売りのZRXに丸目版なんてあったの〜〜〜?」。ハイ、あったんです。真実はいつもひとつ……とは限らない!?
乞うご期待!
あ、というわけで1990年代に登場した「ZRX」や数々のライバルネイキッドモデルたちは今もって高い人気を誇り、大量に売れた分だけ現存する車両数も豊富~ッ。アフターサービスも安心なレッドバロンの『5つ星品質』中古車で、ぜひ探してみてください!
カワサキZRXという好漢【その2】は今しばらくお待ちください m(_ _)m
