空前のバイクブーム末期かつ日本のバブル経済爛熟期という奇跡的な時代背景もあり、レーサーレプリカ(派生)モデルでもないのにアルミフレームや凝ったカウリング造形、余裕ある足まわりなどを獲得して登場したZZ-Rシリーズの末弟。孤高の250ツアラーとして堂々のロングセラーとなり、あの超有名な次世代スポーツへとバトンを引き継ぎます!
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“いつだって十数年は早い”スズキからライバルモデルが!?
ZZ-R250を語る上で、やはりこのモデルを取り上げないわけにはいかない(!?)でしょう。
まさしくZZ-R250が登場した1990年3月、同じタイミングでデビューしたスズキの“アーバンスポーツマシン”が「ACROSS(アクロス)」でした。
走行風の抵抗からライダーを保護してくれる流麗なフルカバードボディに、GSX-R250譲りの4ストローク並列4気筒DOHC4バルブエンジンを搭載したスポーツモデル。
45馬力の最高出力を維持しつつ低中速域を太らせた出力特性にすることで、走る場所を選ばない扱いやすさも獲得しておりました。
最大の特徴は同クラスで初めてフルフェイスのヘルメットさえ収納できる25ℓもの大容量パーソナルスペースを通常のバイクならフューエルタンクとなる場所に採用したこと。
そのパーソナルスペースのロック解除には電磁式システムが採用されており、メインスイッチのキーポジションをFUELに操作後、ワンタッチで「パカッ」と開くことが可能でした。
足まわりにはインナーチューブ径φ37のフロントフォーク、ニューリンク式リアサス、偏平タイヤや前後ディスクブレーキなどがおごられ、高い走行性能も実現……と特徴を書き連ねるだけで“無双感”さえ漂ってきそうな車体構成ですね。
突き抜ける直4パワー! GSX-Rの熱い血潮は隠しきれず
実際、あらゆる雑誌媒体で記事化されていた「ZZ-R250対アクロス。宿命のライバル比較試乗!」のような企画では、ワインディングで見せるアクロスの刺激的な走りがクローズアップされがちで、ギョーカイのバイクジャーナリストお歴々もアクロスのほうに太鼓判を押される方が多かったような記憶がございます。
私もモーターサイクリスト誌のパシリ……いやアルバイトとして、かくいう取材に何度となくお供したのですけれど、確かにアクロスのほうが走りは圧倒的にエキサイティング!
直径49㎜のピストンが真横に4つ並び、たった33㎜のショートストロークで上下行程をギャンギャン行なっているのですから、乗り手が興奮しないはずがありません。
また、目新しかったメットイン機構も注目度抜群で、アクロスで上野バイク街へお遣いに行くと速攻で黒山の人だかりとなり、乞われるままパーソナルスペースの開閉を昭和通りの路上で何度も披露したものです。
しかし、その利便性と引き替えにシート下へ追いやられた燃料タンクの容量は12ℓと非常に少なめ。さらに回してナンボのエンジン特性なため燃費もほめられたものではなく、結果的に長距離走行時にはガソリンスタンドへ駆け込む回数が増えてしまいます。
なおかつ給油口はタンデムシートとテールランプとの間に設定されており(こちらも電磁式でリッドが開く!)とてもスタイリッシュ!
……なのですけれど、そこまで覆い被さる大きな荷物を積載してしまうと、ガソリン補給のたびにそれを取り外すなり移動させるなりといった一手間二手間が必要になってしまう点は、ロングツーリングを夢想するライダーにとって大きな懸念材料になってしまいました。
当時、現在のように高性能なシートバッグはまだあまりなく、バイク旅に必要な道具類はゴムひもやネットでタンデムシート上&テールカウル部分にしばりつけることが主流でしたから……。
長距離旅を見越した至れり尽くせりの装備が自慢なZZ-R!
対してZZ-R250は、
①ピークパワーを追わず(40馬力<登場時>。2002年型からは35馬力へ)
②燃料タンク容量は18ℓ(2004年型以降は17ℓ)
③格納式荷掛けフックを標準装備
④タンデム時に便利なグラブバーはボルト2本を回すと取り外せて、タンデムシートとテールカウルまでがツライチになる(=大荷物積載時に安定度が増す)
⑤荷物積載時にも地味ながら便利なセンタースタンド標準装備
⑥便利なマグネット式タンクバッグがポンと付けられる(アクロスのパーソナルスペース“フタ”は樹脂製なので工夫しないと装着不可←吸盤式なら対応可)などなど。
旅指向が強くアレもコレも1台でこなしたい!と考えるライダーにとって、ZZ-R250の高い汎用性はとても魅力的に映ったのです。
ただし、アクロスはアクロスで「オレは街乗り中心。ショートツーリングくらいならパーソナルスペースの容量で十分に事足りるぜ!」という熱心なファンを獲得し、1998年型まで生産が続けられます。
が、世紀越えはならず。
規制強化による生産終了の嵐を乗り越えて新しい世紀へ!
片やZZ-R250は細かな仕様変更とカラーリングチェンジを繰り返しながら1999年型へ到達。
とはいえここで厳しさを増すばかりの環境諸規制に白旗を揚げてそのままフェードアウトか……と思われたものの、2002年2月に排出ガス浄化システム“KLEEN”を搭載し「平成11年排出ガス規制」を見事にクリアした仕様が再登場!
2003年からは生産拠点を日本からタイ王国に移管しつつ歩みを重ねていったのですが、4ストロークエンジンといえどもキャブレターのままではとても対応できないくらい、さらに厳しいものとなった排出ガス規制の実施を受けて2007年8月末でついに生産を終了いたします。
1990年の初代デビューから実に17年!
その間、250㏄クラスといえばレーサーレプリカの大人気ぶりが終焉へ向かい、直後に巻き起こったネイキッドブームはレプリカからカウルを引っぱがし、さらにはアルミフレームまではぎ取ったモデルを多数登場させたもの……。
ほかにもシングルスポーツ、エンデューロ、デュアルパーパス、レトロシングル、トラッカー、クルーザー、モタード、ビッグスクーターなどなど、バラエティに富むジャンルのブームが興っては沈静化していったことは、シニアなライダー諸兄諸姉ならずとも記憶に新しいはず。
そんな中で、派手な動きこそ少なかったものの、常に選んで間違いなしの“定番ツアラー”が存在し続けた意義はとても大きいものがありました。
さらに言うと、今では信じられないことかもしれませんけれど、一時代を画したレーサーレプリカの雄として最後の最後まで粘り続く生産を続けてきたホンダNSR250Rが1999年に事切れてしまって以降、約8年間も250㏄のフルフェアリングモデルはZZR250だけだったのです!
しょぼくれた250㏄クラスに喝を入れるヒーローへ転生!
そんなモデルもついにディスコン。
「嗚呼、私が愛した250㏄の世界はビッグスクーターとトラッカーとレトロシングルばっかりな、つまんね~クラスになってしまうのか……」と謎の上から目線を抱きながらMC編集部で日々の業務に追われていると、メガトン級のビッグスクープが飛び込んできました。
「ZZR250のパラレルツインを搭載した後継機が出るらしいぞ」と先輩。
「へぇ、お手軽ネイキッドのバリオス-Ⅲですかね(笑)」と筆者。
「いや、レプリカっぽい外観だとか」。
「このご時世にフルカウル? どうせガセネタでしょ~!?」……。
先輩、そのときは疑ってすみませんでした。
2008年4月、羨望の「ニンジャ250R」が登場いたします。そちらの快進撃ぶりは、また近いうちに……。
あ、というわけで17年の長きにわたって不変のスタイリングでロングセラーを続けたZZR250は、どの年式でも誇りを持って乗ることのできるスポーツツアラー。レッドバロンが販売する良質な中古車ならアフターサービスも万全で、かつ納車時にはETC車載器やスマホホルダー、USB電源、各種リアキャリアなど、イマドキ旅に不可欠な装備の選択や取り付けの相談にも乗ってくれますよ。まずはお近くの店舗に行って在庫を確認してみてください!
(おわり)