レッドバロンのメディア試乗会でGPZ900Rに乗り、またもある愛車の思い出がまざまざと蘇ってきた。そのバイクとはGPZの後継(の後継)である「ZX-10」。乗り始めたのは1990年代後半で、波瀾万丈の時代を共に走り抜けたのだった!? 皆々様、今回もオッサンの思い出話に付き合っていただきます!

元祖Ninjaの魅力を再確認、これはいいものだ!

先日の記事では、レッドバロンのメディア試乗会でゼファーΧに乗り、僕が初めて購入したバイク「ゼファー」にまつわる思い出を語った。
実はもう1台、試乗車の中に記憶のヒダをチクチク刺激するバイクがあった。
それがGPZ900Rだ。ご存じ映画『トップガン』に登場し、36年ぶりの続編公開で注目度が高まっている1台、記念すべき初代Ninjaでもある。

久々に乗ったGPZはズオォォという野太くも柔らかいエンジンフィールがやっぱり愉快痛快。現代のバイクと比べるとスロットルの開け具合に対して、加速感は"牧歌的”とさえ言えるレベルだが、ズオォォ感を味わいながら流すのが気持ちいい。
前後に長い、大柄な車体ながら旋回性はナチュラルで、身構える必要がない。これはカワサキのフラッグシップに代々受け継がれている美質で、大柄なのに意外にも乗りやすいのだ。

↑レッドバロンのメディア試乗会に用意されたGPZ900R(カワサキ 1988年式)。■全長2200 軸距1495 シート高780(各mm)■車重228kg(乾)■水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブ908cc 115ps/9500rpm 8.7kg-m/8500rpm■タイヤF=120/80-16 R=130/80-18

↑重厚な吹け上がりが快感。トム・クルーズになりきるのも楽しい! 状態のいいタマは減るばかりだが、レッドバロンの「譲渡車検」をクリアした、この個体は実に状態がよかった!

有名なZX-10Rではなく「ZX-10」なんです!

GPZを乗って思い出したのが、かつての愛車「ZX-10」だ。

ヤングライダーは知らない人も多いかもしれないけど、現行モデルのスーパースポーツ「Ninja ZX-10R」ではなく、1988年にデビューし、車名にNinjaもRもない「ZX-10」だ。

↑皆さんご存知、カワサキの旗艦スーパースポーツのNinja ZX-10Rがコチラ。

 

↑コチラがZX-10。GPZ900Rに比べて曲線的なフォルムが特徴だ。■全長2170 軸距1490 シート高790(各mm)■車重222kg(乾)■水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブ997cc 137ps/10000rpm 10.5kg-m/9000rpm■タイヤF=120/70VR17 R=160/60VR18

 

↑テールにあるのはウイングではなく、収納式のグラブバー。左シートカウル下部にはなぜかネームプレート(!)もあり。インナーカウル左側には小物入れまで完備。


ZX-10は、GPZ900Rの系譜に連なる。1984年に登場したGPZ900Rは販売を継続したまま、これをベースとする発展進化型が追加されていく。

'86年にはエンジンを906→997ccに排気量アップし、新設計の鋼管フレームを採用したGPZ1000RXがデビュー。車重はGPZ900R比で+10kgとなったが、最高出力は+10psの125psをマークした。

そして、早くも2年後の'88年、さらに改良型のZX-10がリリースされる。心臓部はキャブをダウンドラフト化し、新作シリンダーヘッドやクランクを採用。RXから+12psの137psを果たす。
さらに目玉はアルミフレームの導入だ。レーサーZX-7のノウハウを活かした「e-BOX」と呼ばれるアルミツインスパーを導入し、車重はRXから16kgもの軽量化に成功している。
ホイールはRXの前後16インチから前17&後18インチとなり、ラジアルタイヤも履いた。

最高速がモデルチェンジごとに10km/hずつ上がっていくのも面白い。GPZ900Rでは約250km/hで、GZP1000RXで260km/h、ZX-10では270km/hに至り、常に当時の世界最速機として君臨。ZX-10はゼロヨンも10.5秒と速かった。

しかし2年後の'90年、決定版と言えるZZ-R1100が登場。排気量は1052ccにまでアップし、最高出力は145psに。さらにラムエアまで獲得し、最高速は300km/h付近に迫った。まさに'90年代を代表する名車と呼ぶに相応しい。

ZX-10は抜群の性能を持ちながら、超メジャーなGPZ900RとZZ-R1100という2台の間に埋もれ、実に存在感が薄いバイクなのだ(笑)。モビルスーツに例えるなら、ファーストのRX-78でもなく、Zガンダムでもなく、その過渡期にあたる「ガンダムmk-Ⅱ」に相当すると言えよう(!?)。

ZZ-Rとは一味違う、スポーツ性を重視した性格

ZX-10を手に入れたのは1996年末。当時乗っていたのはゼファーだが、過去記事のゼファーではなく、2台目のゼファーに乗っていた(詳細は後述)。

ZX-10を購入したところ「なぜZZ-Rじゃないの?」と周囲の人によく聞かれた。理由は、軽さとデザインに惹かれたからだ。

現在でもカワサキのスポーツバイクを示すZX系の元祖は、ZX-4やこのZX-10。ZZ-R100は、米国で「ZX-11」を名乗ったが、初代ZZ-R1100(C型)の車重はZX-10より6kg増。2世代目のD型は11kg増となるなどグランツーリスモ的な側面が強くなっている。
ZZ-Rにも惹かれたけど、ZX-10のスポーツ性を重視したキャラがいいなと思ったのだ。

デザインも非常に好みだ。GPZ900Rに始まるNinjaの血統だけに、レーサーレプリカとも違う有機的なフォルムがイイ。最大のポイントはアッパーカウルだ。サイドにヌメッと張り出したカタチは未来的で、川崎重工業の新幹線的な雰囲気や戦闘機の匂いがあると思う。

ちなみに北米での愛称は「トムキャット」。そう映画『トップガン』に登場する戦闘機F-14の愛称でもある。トム・クルーズに憧れた僕にとって、この愛称はやはりグッとくるものがある。

もちろんGPZ900Rもよかったのだけど、巷にあふれ返っていた。一方、ZX-10の「“日陰者”的なのに実力はある」という立ち位置が僕にとってカッコよく見えたのだ(笑)

↑GPZ900Rの雰囲気を残しつつ曲線的にしたアッパーカウルがたまりません。ちなみにシャチのようなフォルムから、通称「オルカ」とも呼ばれていた(笑)。確かにデーンとした感じが海獣っぽい。

 

後編はコチラ!

 

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