そこに宝の山があれば、ゴールドラッシュの始まりは必然。ニンジャ250Rが(再)発見し、ニンジャ250によって深く広く採掘されていった“250フルカウルスポーツ”という金脈。世界を見据えた大量生産のコツをつかんだ競合メーカーは、矢継ぎ早に改良新型車を繰り出して日本市場を活発化させていきます。そして沈黙を守っていたあの会社が禁断の一手を!
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忍者の衣を脱ぎ捨てた、裸の兄弟“絶斗”も登場!
2013年2月1日から日本で正式に発売が開始された「ニンジャ250/スペシャルエディション」(ABS スペシャルエディションは2月15日~)。いわずもがなの大人気となり、生産しているタイ王国から同年日本へ輸入される予定の枠数、約6000台が速攻でハケてしまいました……ということは、これまでのコラムで何度も述べてきたとおり。
そしてカワサキはまたしてもライバルメーカーを歯噛みさせる戦略を同時に行ってきます。
なんと250のネイキッド(ストリートファイター)モデルとして「Z250」も同日、市場へ投入したのです!
もちろんベースはニンジャ250なのですけれど、フルフェアリングを大胆に取り去って個性的な面構えのヘッドライト&メーターバイザーを採用。
新たにおこされたラジエター周りを包み込むシュラウドやエキパイ前方を囲うアンダーカウルのデザインも秀逸で、タンクから後半、サイドカバーからテールランプに至るまでの構成がニンジャ250と同一であるにも関わらず、取って付けた感……いやカウルを外してムリヤリ裸にした感はまったくなく、誰がどう見ても素直に「最新のZだ」と認めてしまうスタイリッシュな仕上がりぶりでした。
よくよく比較してみればバーハンドルがパイプハンドルに変更され、ライディングポジションはよりアップライトなものへとモディファイ済み。
インストルメントパネルの配色もニンジャよりポップな感覚になっており、パッと見でも受ける印象が大きく異なります。
さらにサスペンションのセッティングはネイキッドモデルらしく街乗りを重視した軟らかめの設定へ……などなど数々の仕様変更が加えられつつ、お値段はニンジャ250のSTDモデルより5万円お安い、税込み48万8000円(ABS車は設定なし)と、しっかり50万円切りを実現!
時代がフルカウルを求めていたうねりの真っ只中であったため、2013年の販売台数は1728台で250㏄クラスとしては7位に留まりましたが、翌2014年は2054台で5位(※ともに二輪車新聞様のデータより)となり、以降もすっかり定着。
心臓と骨格を流用しバリエーションを増やすことが普通に
他メーカーも相次いで追従し、フルカウルモデルから極力共用部分を残しつつネイキッド版を仕立てるという黄金のバイクブーム時代=1980年代後半に流行した手法が完成度を高めて復活し、定番化していきます(同一エンジン〈骨格〉で、ネオレトロやオン・オフ、アドベンチャーにまで発展するケースも!)。
なお、ネイキッドモデルからスタートしたスズキのGSR250(2012年7月発売)は逆のパターンで、2014年1月にハーフカウルの「GSR250S」が、同年9月にはフルカウルの「GSR250F」が相次いで登場してきました。
……正直なところ、お世辞にもファッショナブルとは言えないクセが強めな外観ながら(汗)、「ライダーを強い走行風から防護してあげたい」という開発陣の願いは見事に結実しており、ハンドル変更でグリップ位置を大きく高め前傾姿勢を緩くしたライディングポジションと相まって、250スポーツとは思えないほどのロングツーリング能力を発揮する“距離ガバ勢”御用達マシンとしてもジワジワ愛されていきました。
ホンダは2眼式ヘッドライトで巻き返しを図る……が!?
ホンダだって負けていられません。
2011年3月の登場から丸3年が経過した2014年の4月、超強力なテコ入れを実施!
外装部品を一新し、ツリ目も凜々しい二眼式ヘッドライトを採用したことを筆頭にフロントフェンダー、フェアリング、タンク、サイドカバー、テールカウルなど、あらゆるパーツが形状の変更を受けたのです。
エンジンも吸排気系を中心に大きな改良が施され、なんと最高出力は従来型比2馬力アップの29馬力となり、単気筒ながら2気筒のニンジャ250(31馬力)に肉薄。
その上で燃費性能まで向上させ、49.2㎞/ℓだった60㎞/h定地走行テスト値は50.1㎞/ℓへ!
気合の入りまくったマイナーチェンジを受けて、ここから人気も大爆発……かと思いきや、意外なほどの低空飛行となってしまいます。
なぜか? 今回はヤマハの動向に大きな影響を受けたため……と断言してもあながち間違いではありますまい。
実のところ2014年の250スーパースポーツ界は、なかなか姿を現さないラスボス、“アールニーゴー”に振り回された感があります。
レーサー仕様から姿を現したヤマハのニンジャ250対抗馬!
いやぁ、R25を待ちました待ちました……ブチ(←山口弁で「とても」の意)待たされたっちゃのう!
経緯を軽くお話すると、もはや9年前ですか……と思わず遠い目になってしまう「第43回 東京モーターショー」(2013年11月22日~12月1日の期間、東京ビッグサイトで開催)。
そのプレスデーだった11月20日に、とんでもない衝撃が走ったのです!
一応バイク誌編集部員だった筆者も早朝から受付に並び、開場されるや小太り……いや小走りでヤマハブースへGO。
目立つところに設けられた壇上には、白い布で包まれた1台の車両がすっくと立っておりました。
事前に配布された広報資料には入っていなかった謎の存在です。
横に張り付いていよいよ始まったブリーフィング時に、まさしくワールドプレミアの“サプライズモデル”として派手なアンベールを受けたのが、その名も「R25」という新開発された249㏄パラレルツインエンジンを搭載しているという触れ込みのレーサーでした。
そりゃぁもう、カッコいいのカッコよくないのって……。
ヤマハのモトGPマシンYZR-M1を彷彿させる“笑う口”のようなラムエア導入孔から始まり、シュッとしたテールカウルに至るまで、ため息をつくしかない完璧なプロポーション。
そして「こちらのベースとなった完全新設計の250スーパースポーツを近いうち日本でも発売いたします」とぶち上げたのですから期待値は一気に沸騰しましたよ。
「印刷所の輪転機を速攻で止めて! カラーの大部分をR25の特集に差し替えるから製本&配本スケジュールも変更でヨロシク!!」と関係各位に連絡して……(※すみません誇張しました。20日ならここまで三文TVドラマのような切迫感は出ません)。
ともあれ12月1日以降に発売されたバイク雑誌にはショー会場で撮影した写真をベースにヘッドライトほか灯火類やバックミラー、それっぽいマフラー、ナンバープレートステーなどをCGで追加して「これがYZF-R25(仮称)の市販版予想図だ!」とした記事があふれかえったことを記憶しております。
“R25”前フリはバッチリ。手に入らない焦燥感が人気に拍車!?
読者からのアンケートハガキを見ても「欲しい!」、「出たらすぐに買う!」という熱いメッセージだらけ。
ところが……待てど暮らせど市販版が出てきません。
「2013年末に発表したのだから、2014年の春だよね」
「あれ? 夏が来ちゃった? まだ出ない……」
「もう秋だぞ。さすがに……オイ!」と購入希望者はひたすら待ちぼうけを食らうかたちに。
それでもメーカーには特にこだわりなく「最新で最強が欲しい!」という浮動層はヤマハ謹製の真打ちモデルを待ち続け、その分CBR250Rが少なからず割を食うカタチとなったことは否めません。
ファンが待っただけのことはありました。
2014年12月15日(ABS仕様は2015年4月20日〜)、ついに「YZF-R25」が日本にて発売開始されます。
なんと最高出力は36馬力とニンジャ250の31馬力より、5馬力も上乗せしてきたのです。
そして何と言ってもスタイリングの美しさよ……。
東京モーターショーで公開されたレーサー「R25」とは顔を始めとしていろんな部分が異なっていたため「思っていたのと違う!」という声はよく聞きましたが「カッコ悪くなった」という意見は筆者の知る限り皆無。さすがデザインのヤマハです。
「毎日乗れるスーパーバイク」というキャッチコピーとレース界のスーパースター、バレンティーノ・ロッシ選手を起用した広告戦略も見事なくらいツボに入り、ご存じのとおりYZF-R25は大ヒット。
2015年の250㏄クラスで堂々のベストセラーモデルとなり、販売された台数は7680台を記録!
ニンジャ250は2位につけますが販売台数は3503台と大きく差を付けられます。ちなみに4位はGSR250三兄弟で2536台、CBR250Rは1459台で7位に……(※販売台数データは二輪車新聞様の集計による)。
さて、一時代を画した“ニーゴーニンジャ”は、このまま地味な“その他大勢”的な存在になってしまうのか?
YZF-R25が着火させたパワーアップ競争は他メーカーを巻き込んでしまうのか??
そのあたりは次回、お届けいたしましょう。
あ、というわけで2013年からの3年間だけでも1万5000台以上を売り上げたニンジャ250は程度がよく、かつ価格もこなれた“掘り出し物”が数多く出回っております。国内直営300店舗オーバーのレッドバロンの良質な中古車なら、アフターサービスの心配もご無用ですよ。ぜひお近くの店舗で検索してみてくださいませ~!
(つづく)