歴史は繰り返すもの。1970年代から国内4メーカーで繰り広げられてきた“馬力向上☆大バトル”……ライバルを少しでも上回れば売り上げに大きく影響するのですから当然です。しかし、諸事情により戦いはリセット。長い雌伏の時代を経て250スーパースポーツというジャンルでも再び最高性能の更新合戦が始まりました。決着は……まだまだ付きそうにありません!
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“1馬力≒1万円”で250バイクが買えた時代は遠い昔……
1980年、ヤマハRZ250の発売から本格的に始まったとされる空前のバイクブーム。
爆発的な需要拡大を背景に新しい技術が矢継ぎ早に開発され、エンジンパワーも飛躍的に向上していきました。
4ストロークの250㏄クラスに話を絞れば、1970年代の後半までは2気筒でも25~30馬力程度だったものが空冷→水冷化やOHC→DOHC化、吸排気系の進歩により35馬力~40馬力は「フツー」(by沢尻エリカ様)という状況に変貌(そのぶん価格も上がりましたけどネ)。
トドメの4気筒化によりエンジンのクランクシャフトを1分間に1万5000回転以上ブン回して45馬力(実際にはそれ以上!?)を獲得することなんて国内4メーカーにとっては“当たり前田のクラッカー”な世界になっていったのです。
しかし、旧運輸省による「過度の馬力はスピード違反や交通事故の増加を招く」という指摘から、バイクメーカーも加入している日本自動車工業会においての申し合わせにより、行政指導による実質的には公的な規制がかけられました。
これが俗にいう「馬力規制」の始まりです。
250㏄ならしばらくは45馬力の時代が続き、1992年からは40馬力に引き下げられて誤差も認められず……という涙がちょちょぎれる流れは、ベテランライダーの皆さんなら記憶に新しいはず。
ちなみにこの馬力規制、2007年には日本自動車工業会と国土交通省が廃止を決定いたしました。
「えっ? そうだったの?」という方も多いと思われますが、実は同時期に「自動車排出ガス規制」の厳格化も進んでいったため、当時の技術でも対応できる余裕のあった大排気量クラスはともかく、小・中排気量クラスだと排出ガスの有毒成分総量を減らしていくためにはパワー(=トルク×回転数)を絶対的に抑え込んでいくしかなかったのです。
その結果、2ストや高回転高出力の4スト4気筒モデルたちが次々に消滅していったのはご存じのとおり。
31馬力の太平を約7年間謳歌したニーゴーニンジャ!
2008年に登場した「ニンジャ250R」も、1980年代には45馬力を発揮したこともある水冷パラレルツインの最高出力を31馬力まで落として厳しい規制値をクリア。
2013年にモデルチェンジを受けて「ニンジャ250」となったときも、31馬力というスペックは不変のままでデビューしてきました。
直接的なフルカウルスポーツのライバルとして出てきたCBR250Rが単気筒エンジンで27馬力だったため、あえてパワーアップする必要もないと判断したのでしょうか!?
2014年9月1日に発売されたモデルで新たに“アシスト&スリッパークラッチ”を搭載し、またまたトレンドを先取りしたほかは、カラーチェンジをメインにした小変更のみで高い人気を維持してきたニンジャ250。
しかし……ヤマハがやってくれ(しまい?)ました。
実質的に2015年型となるブランニューモデル「YZF-R25」で36馬力を発揮してきたのです!
100馬力クラスの5馬力ではなく、30馬力そこそこな世界での5馬力差ですからね……。
市場は如実に反応し、YZF-R25(以下、R25)はベストセラーの座へと駆け上っていきます。
大排気量スーパースポーツ所有への道筋をつける存在に!
まぁ実際のところ、YZF-R25はとても良くできていました。
雑誌屋の常としてライバル車が現れたときには比較試乗を行うのですが、やはりスペック上、最高出力が5馬力も違っていると(なおかつ最大トルクでも0.2㎏m上回り、車重が6㎏も軽いのですから)パワフルさは体感はできるものです。
操縦安定性も他のライバルメーカーとはひと味違う、穏やかにバンキングしていき角度が定まってからグイグイとリヤタイヤ主導で曲がっていくような“ヤマハハンドリング”がしっかり演出されており、この味の虜となったライダーは、R6やR1を筆頭にヤマハ車から離れられなくなるという現象まで頻発。
1980年代は50㏄や125㏄クラスの2スト車が担っていた、大排気量マシンへユーザーをいざなう登竜門……つまり“上”へのモチベーションを持たせるエントリーモデルとしての役割は、やはりトラッカーやビッグスクーターではなく練り込まれたスポーツ車であることをニンジャ250(R)、そしてYZF-R25の成功が改めて証明したカタチとなりました。
2016年にはヤマハのZ250(失礼)である「MT-25」も登場し、兄弟の合計販売台数は250㏄クラスで盤石のトップランカーに。
ニンジャ250は再び2位につけますが、特筆すべきは4位にシングルエンジンをフルカウルへ包み込んだライトウェイト・スポーツ「ニンジャ250SL」が食い込んでいること。
「YZF-R25対策には少々手間取るから手っ取り早くSLを出して、同様の車体構成を持つCBR250Rのシェアを奪っておこうか……」と開発陣が考えたワケではないでしょうけれど、打てる手はすべて打つ!というカワサキのしたたかさを感じましたね。
我が道を往くスズキまで“ニンジャ250”を出してきた〜っ!?
というわけで、トップ・オブ・スーパースポーツ「GSX-R1000R」を擁するスズキも、そのイメージを色濃く反映させた「GSX250R」を2017年4月に登場させます……が、ベースのGSR250からパワーアップは一切なし。
スガスガしいほどにGSRシリーズの“ガワ”だけを変えて、精悍なロードスポーツモデルに仕上げてきました。
「24馬力で何が悪い。低速域からズ太く盛り上がるトルクこそ公道では絶対正義じゃ(なぜか菅原文太さん調)」というスズキ開発陣の主張はこれまた見事に結実しており、乗れば本当にホッとして街やワインディングや高速道路などを気持ちよく駆け抜けることができる仕上がり。
個人的にも大好きなモデルです。
吹っ切れたホンダほど怖いものはない……(何度目?)
駄菓子菓子いや、だがしかし、
これまで同ジャンルで煮え湯を飲まされ続けていた世界最大のバイクメーカーがついに本気を出してきました。
2017年、ホンダから「CBR250RR」が発売開始されます。
これまた往年からのバイクファンにとっては懐かしいネーミングではございますが、物議をかもしたシングルスポーツ“R”の登場から6年も経っていますので「Rの進化版だから当然RRだよね」といったコンセンサスもなんとなく出来上がっており、その点については無問題(モウマンタイ)。
驚かされたのはその性能と価格でした。
ゼロから新規開発された249㏄水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブエンジンは、YZF-R25を上回る38馬力を1万2500回転で発生。
クラス初となる“スロットル・バイ・ワイヤ”システム採用により、3種類のライディングモードも選べるようになっていました。
フレームは鋼管トラス構造でスイングアームはアルミ製。フロントフォークは倒立式。前後タイヤはラジアル。
全灯火類にLEDを使用して、“エヴァ13号機”のようなフロントマスクが強い印象を与えます(笑)。
そこからテールランプへと至るスタイリングの流れも“エッジ”が立ちまくり、従来のホンダでは考えられないようなシャープさとエグさが混ざり合っているもの。
「250でも100万円」時代がひたひたと近づいてきた?
そんなCBR250RRにホンダはSTDで税込み75万6000円~77万7600円、
ABS付きなら80万6760~82万8360円という、同時期のYZF-R25や(まだ先代だった)ニンジャ250より20万円ほど高い価格をつけてきたのです。
モーターサイクリスト編集部でも賛否真っ二つの大騒ぎになりました。
「諸費用コミコミだと100万円になろうかという250なんて売れないよ」
「いや、このレベチ(レベルが違うの意)ぶりが伝われば案外ヒットするかもよ……」
結果は後者となりました。
5月からの発売にも関わらず、2017年度の販売台数は3315台となり250㏄クラスで3位に食い込む結果に。
翌2018年もCBR250RRは3607台を販売して、レブル250に続く2位に……。
同年2月にモデルチェンジを受けてCBRより1馬力少ない37馬力で登場した当時のニンジャ250が2335台で5位(ちなみにYZF&MTは3501台で3位)でしたから、250スーパースポーツ主役の座はついにCBR250RRが奪い取ったカタチになりました(※販売台数のデータは二輪車新聞様のもの)。
こう書くと影が薄くなったように見えるニンジャ250ですが、現在も販売されているモデルは大きな意義を果たし続けています。
また、その背後でカワサキは……とんでもない次の一手を開発していました。
秘密兵器を炸裂させるカワサキにホンダは? ヤマハは!? そしてスズキは?
次回、令和の世で過熱するスーパークォーター(死語?)バトルについて、述べさせていただく予定です。
あ、というわけでニンジャ250と同じフルカウルスポーツバイクのライバル、CBR250R/RR、YZF-R25、GSX250Rなどは、いずれも一定以上のヒット作となりました。ですから中古車市場の在庫も豊富で、程度の良い車両がそろっております。好きなメーカーで選んでも間違いはありませんよ! レッドバロンなら全国300店舗超の直営店が所有する豊富な優良在庫が瞬時に検索できますので、ぜひお近くの店舗へ足をお運びください!
(つづく)