きょかい【巨魁・渠魁】首領。頭目。(盗賊などの)親玉。頭領。……大ヒット作ニンジャ250Rの後継機として2013年型から発売が開始された「ニーゴーニンジャ」は、250スーパースポーツ界の親玉として市場を牽引していきます。前作の成功にあぐらをかくことなく攻めに攻めたフルモデルチェンジの内容で、さらなるファンの獲得に成功しました!

ニンジャ250Rというゲームチェンジャー【前編】はコチラ

ニンジャ250カタログ

●2014年型のカタログより。漆黒の闇に浮かび上がる忍者、いやニンジャ250。タンク部分に配されるロゴはこのモデルから「Kawasaki」→「Ninja」になりました……と書いた後によくよく調べてみたら、グラフィックのデザインによっては「Kawasaki」の場合もありまして……。デザイナーのこだわりを強く感じさせるポイントです

 

世代は変わっても強くあり続けるため「心臓を捧げよ!!」

アニメ『進撃の巨人』第1期が大好評のうちに放映されていた2013年、バイク業界の250㏄クラスではカワサキの本気(と書いてマジと読む)をまとって世に放たれた2代目ニーハン忍者(!?)、「ニンジャ250」がライバルを踏み潰す……いや、圧倒する進撃を見せていました。

巨人イメージ

進撃の巨人……漫画は2009年から『別冊少年マガジン』にて連載がスタート。ちょうどニンジャ250Rの覇道と時期が重なるため、強く印象に残っております

 

そのモデルの内容だけでなく、情報を公開していくタイミングにも、当時二輪雑誌モーターサイクリスト編集部にいた筆者は舌を巻いたもの……。

厳密に言えば車名こそ違うものの実質的に従来型となる「ニンジャ250R」は、2008年にデビューして2012年型で生産を終了

ニンジャ250最終型

●ニンジャ250R最終型となる2012年型STDモデルは、写真のパッションレッド、メタリックスパークブラック、そして復活のライムグリーンという3色展開。夏にニンジャ250の情報が公開されたものの、「詳細を興味深く見たけれど、新型が馬力もトルクも同じならこっちのスタイリングのほうがいい!」とあえて“R”を選ぶ人も少なからず存在していました。実は筆者も好みかどうかでいったら断然“R”派です(笑)

 

実に5年間、メカニズム的な変更をほぼほぼ行わないまま、モデル末期に至るまでベスト&ロングセラーの座に君臨してきた巨魁の代替わりなわけですから2代目がどのような姿で登場してくるのか? 

ライダー(予備軍)はもちろんバイク雑誌ギョーカイも興味シンシン、新型の動向を熱く追っていました。

私の記憶が正しければ2011年の秋ごろから「次期ニンジャ250Rは4気筒?」、「いや2気筒のままでも超絶パワーアップを実現!」などというエンターテインメント性にあふれる記事が掲載され始め、ニヤニヤしながら拝見したものです。

パパラッチ

●注目を浴びる車両のモデルチェンジ情報は誰だって知りたいもの。今は知りませんが一時期は、バイクやクルマのスクープ写真を追い求めて世界を飛び回るカメラマン集団もいたとか

 

年が明ければ海外での実走行テストをパパラッチが撮影した画像なども流出(?)し始めたりして、2012年3月にニンジャ同様のフルフェアリングを備えた直接的なライバルとして登場したホンダCBR250R(MC41)にはABS仕様車も用意されて市場から好評を得ていましたから、スクープ系雑誌の月号が進むごとに「ニンジャにもABS仕様車が用意されるのは間違いない!」といった確度の高い情報も企画内に盛り込まれるようになっていき、新型への期待は否応なく盛り上がっていきました。

ニンジャ250ABS

●旧世代のものよりサイズで40%小型化、重量は775gもの軽量化を果たした最新式ABSユニット(写真)を搭載した仕様も登場!

 

結果的に他メーカーの対抗馬が出てもすぐに飛びつかず、次期ニンジャを待ってみようかな」と考えたバイク好きは相当な数にのぼったはず。

ライバルが並び立つなんて許さない。「駆逐してやる!!」

総仕上げ(?)として2012年の8月には「2013年型ニンジャ250のご紹介」といった公式リリースをカワサキ大本営がジキジキに全世界へ発信したのですから、日本デビュー直前に起きた東日本大震災の影響をようやく脱し、一層の飛躍を当て込んでいたガチンコ競合車CBR250Rにしてみればたまったものではありません

cbr250r abs

●はい、単気筒CBR250R(MC41)の発売日は東日本大震災による混乱真っ只中の2011年3月18日でした。直前に予定されていたプレス向け試乗会はもちろん中止され、いざ広報車を借り出してもガソリンが手に入らないため取材も思うようにできず……。いろいろ大変な時期とかち合ったにも関わらず、見事2011年度の250㏄クラス販売台数ナンバーワンに輝いたと記憶しております

 

なおかつ、その内容がまた凄まじかった……。

ニンジャ250ホワイト

●上品なパールスターダストホワイトに身を包んだニンジャ250。ライダーの快適性を大幅に向上させるため空力特性も全面的に見直され、ラジエターを通過した熱い空気が乗り手を直撃しないよう、サイドカウルに設けた開口部の位置と形状を再構築するとともに熱気をエンジン下部へ逃がす“ファンカバー”まで装備。優れた排熱効果を実現しました

 

雑多な編集部のデスクでドキドキしながらプレス向けPDFファイルをクリックし、パッと出てきた外観写真に不肖・オガワ、まずは心を鷲づかみにされました。

「マフラーまで変えてくれて、ありがとう……」と画面に黙礼

従来車であるニンジャ250Rのよく言えばシンプル、悪く言えばチープさも少々感じさせたスタイリングが一新され「これって新型のニンジャZX-6Rだよ」と言われたら信じてしまいそうなくらい高級感が充ち満ちた堂々たる姿に! マフラーエンドの細部造形に至るまで開発陣の配慮が行き届いています。

ニンジャ250カタログ リヤビュー

●シュッと切れ上がった短めのテールカウルも新時代スーパースポーツのトレンドを取り入れたもの。ニューデザインの10本スポークホイール、サイレンサーの造形にも惚れ惚れしちゃいましたね〜。ハンドルフルロック時に手首を逃がす“エグリ”や、太ももへ向かって細くなる“絞り込み”を実現した燃料タンクながら、容量は「R」と同じ17ℓを確保。計算上の満タン航続距離も680㎞(17ℓ×40㎞/ℓ)で変わらず、ツーリングライダーにも大歓迎されました

 

切れ上がった目元も精悍な2眼式ヘッドライト先端から複雑な線と面がボディ表面を覆い尽くし、ハイライトの濃淡具合は従来型比3.7倍といった雰囲気です。

サイドカウルへ大胆に配された黒い無塗装樹脂パーツ部分もほどよいアクセントを演出しており、単色でもツートーンカラーのような趣きを感じさせました。

そして“ガワ”の中身も全面刷新!! 

……最初に主要諸元をつらつら見たときには、原動機の型式名こそ“R”の「EX250KE」から「EX250LE」へと変更されているものの、ボア・ストロークに変化なし、最高出力31馬力を1万1000回転で、最大トルク2.1kgmを8500回転で発生するというパフォーマンスも“R”と無印はまったく同じ

ニンジャ250エンジン

●1985年発売のGPZ250R向けに開発された180度クランク水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブエンジン(当時の原動機型式は「EX250EE」)を徹底的に磨き上げて、厳しい環境諸規制にも完全対応したパワーユニットへ。長さも太さも連結部位も最適化が図られたエキパイの集合部には排ガス浄化のための触媒(ハニカムキャタライザー)が鎮座していますね

 

「ふ~ん、ここだけは手を抜いたのかねぇ」と、思いきや圧縮比に目をやると11.6から11.3に下がっているではあ〜りませんか! 

開発責任者はあえて言った?「全然なってない、すべてやり直せ」

これは燃焼室の形状まで改良の手を施し、さらなる排ガス浄化効率のアップとスペック数値に現れない乗りやすさを向上させてきているということに他なりません。

慌てて詳細を確認してみれば、エンジンのシリンダー部分を軽量で放熱性の高いアルミダイキャスト製として、なおかつスリーブレスのメッキシリンダー化

スリーブ

●シリンダーはNinja ZX-10Rや6Rと同様の仕様とし、内部にウォータージャケットを兼ねる空間を設定。“R”と比較して単体で約600gもの軽量化を実現している

 

また、軽量化加工に加えて一部を硬質アルマイトコーティング処理したピストンを採用しつつ、FIサブスロットルバルブ大径化、エキパイ長のロング化などなどエンジンのありとあらゆるところに改良を施して結果的に低中速域のトルクまでアップ

同時に1次減速比、2次減速比、6段ミッション内のギヤ比も細かく変更……と、開発陣の「執念」という言葉しか浮かんでこない鬼ブラッシュアップぶり。

そんな大改良を受けた心臓を包み込むダイヤモンド型のフレームは、無印ニンジャから海外向けとして同列に展開することとなった300㏄モデル(39馬力!)のパワーまで受け止めるべくハイテン材(高張力鋼材)を新たに採用した新設計の鉄製パイプフレーム

ニンジャ250フレーム

●ハイテン材を左右のメインチューブに採用し、さらにガセット(補強のための板)を追加したりして高剛性としなやかさを高い次元で両立した新設計フレーム。海外向け「ニンジャ300」に対応しているということは、250にはオーバークオリティ(!?)。サーキットでガンガン走っても音を上げない奥深い潜在能力まで獲得したことになるのです

 

エンジンとの締結部分にラバーマウントを導入することによって不快な振動を低減させるという、地味ながら効果的な改善まで施されているではあ~りませんか(←2回目。チャーリー浜さんリスペクト)。

キャスター角やトレール量も細かく見直され、リヤタイヤの太さも130→140へ……と、どこをとってもスキのない入魂ぶりがパソコンの画面からも伝わってきました。

ニンジャ250メーター

●速度、エンジン回転、水温のアナログメーターが並んでいた「R」から一新された新設計メーターパネルは、大型のアナログタコメーターをドドンと中心に各種インジケーターを左右に配置(水温警告灯もこちらに設定)。液晶部分であるマルチファンクションLCDスクリーンには速度計や時計、燃料計、デュアルトリップメーター、オドメーターが表示され、写真には映っていませんが経済的な走りをしていると「eco」マークが浮き出てくる……といった小ネタも用意されており、淡々とした巡航時も楽しめたものです

 

ここまでやられてしまうと雑誌屋魂にも火が付くというもの。

やる気ファイヤー

●雑誌編集部員だって人の子。開発者の熱意がビンビンに伝わってくるようなバイクだと、ページを作る意気込みも変わってきます。また、そんなバイクは例外なくヒットしましたね〜

 

発売開始は翌年(予定)だというのにモーターサイクリストはもとよりオートバイ、ヤングマシン、その他ありとあらゆる二輪誌で「ニンジャ250」の特集が組まれ、情報はネットでも瞬く間に拡散されることになり事前の盛り上がりは最高潮に……。

その結果、2013年2月1日に正式発売が開始されるや、3日で日本向けの年間販売計画台数、約6000台が売り切れてしまうという伝説が生まれたわけですね。

迷う友人へ「いいから黙って、全部ニンジャに投資しろ!」

本当に「カワサキ、うまいなぁ」と驚嘆したのは、その価格戦略

ニンジャ250Rのラストを飾った2012年型のSTDモデルとSE(スペシャルエディション)が、それぞれ税込み53万3000円55万3000円だったのですが、フルモデルチェンジを受けたニンジャ250でも全く同じプライスタグを付けてきたのですからビックリ(ちなみにABS SEは60万3000円)。

ニンジャ250ABSスペシャルエディション

●サイドビューもグラフィックもいちいちカッコいい「ニンジャ250 ABS スペシャルエディション」。とはいえ、ナンバープレートステーやタンデムステップのヒールガードに荷掛けフックを用意するなど、実用面もしっかり考えられております。なおシート高は785㎜で775㎜だった“R”より10㎜高くなっているものの、太ももの部分がスリム化されているため、足着き性が悪化した印象は全くありませんでした

 

しかも、こちらの情報を解禁したのが2012年の12月1日という小刻みっぷり。その前に実車撮影会も行われましたので、またまた各バイク誌が相当なボリュームで詳細情報を紹介するというワケですよ……。

綿密な作戦も奏功したか、当然のごとく2013年度250㏄クラス販売台数のトップを獲得し(5923台 ※)、その後も進撃は止まらず翌2014年も圧倒的な連覇(5641台 ※ともに二輪車新聞様のデータより)を達成いたします。

ニンジャ250走りイメージ

●ワインディングを走らせてみても、ニンジャ250Rの美点はそのままスムーズさと余裕が格段に増した印象を覚えました。ただ、その分“R”に比べて「パンチがなくなった」、「優等生すぎて面白くない」という意見も出てきたのですからバイク造りというのは本当に難しい……。とはいえ完成度はピカイチでしたので、大学時代の友人から購入すべきかどうかを相談されたときは「うじうじ悩んでないで速攻でショップへ行け。すぐ売り切れちゃうぞ〜」と背中へドロップキック。今では立派なニンジャ乗りとなっております(250から数台乗り継いでいき、現在はH2 SX SEに到達)

 

いやはや、このまま幾久しくニンジャ250の天下が続くのか……と思いきや、ついにヤマハが立体機動装置……いや真剣で勝負を挑んできました!!

ごめんなさい。次回こそYZF-R25の登場前後やホンダとスズキの逆襲について述べさせていただきます。

 m(_ _)m

あ、というわけで一時期は原付二種スクーターより売れまくった初代ニンジャ250。ワインディングを攻めてよし、カスタムして悦に入るもよし、ツーリングの相棒としてもオールラウンド超優秀という完成度の高さを誇り、中古車の台数も豊富という神バイク!? レッドバロンなら全国300店舗超の直営店が所有する豊富な優良在庫が瞬時に全車検索できますので、ぜひお近くの店舗へ足をお運びくださいませ~!

(つづく)

ニンジャ250という巨魁【前編】はコチラ!

SHARE IT!

この記事の執筆者

この記事に関連する記事