最近、流行りのアドベンチャーバイク。高速道路を楽に移動できる排気量と車格を持ち、荷物をたくさん積めることで長旅もしやすい……。それだけなら「高速ツアラー」と呼ばれるジャンルのバイクも一緒なのだが、アドベンチャーバイクならではのプラスアルファの特性がある。それはオフロード走行性能だ。アドベンチャーバイクとして世界を旅するためには、舗装路だけでなく未舗装路も走れなくてはいけないというわけである。
だけど、これがなかなかに難しい。というのもアドベンチャーバイクは、快適な高速走行のために排気量が大きくハイパワーなうえ、車体も重く200㎏以上は当たり前。また大荷物の積載や二人乗りに対応するため、車体の剛性もしなやかなオフロードバイクに比べるとかなり高めでちょっと扱いにくい。近年のインジェクション技術やトラクションコントロールをはじめとする電子制御装備でその敷居は随分低くなってはいるが、それでもアドベンチャーバイクでオフロード走行することの心理的なハードルは相当なものである。アドベンチャーバイクを手に入れたからには、“いつかはダートも……”なんて思いながらも、なかなか決心がつかなくて砂利道には入れていない……なんてライダーは意外と多いのではないだろうか?
アドベンチャーバイク初心者のためのオフロード走行会
オフロード走行してみたいけど、自信がない。そんなアドベンチャーバイクならではのジレンマを解決して、本格的なオフロード走行とはいかないまでもキャンプ場内の砂利道や林道ツーリングくらいなら気負わずアドベンチャーバイクで出かけられるようになってほしい……と2021年からスタートしたのが、このB・A・D、ビッグ・アドベンチャーバイク・デイで、開催時期はゴールデンウィークと10月の年2回が最近の慣例となっている。
大きく重いアドベンチャーバイクは、モトクロッサーやエンデューロバイクなどと一緒にコースを走るのは難しい。モトクロッサーやエンデューロバイクなら楽々走ることができるような路面でも、アドベンチャーバイクで走ろうとすると難易度が飛躍的に上がり、巡航速度域がまったく異なるからだ。まぁ、その難易度の高さこそがアドベンチャーバイクでオフロードを走らせる楽しさでもあるのだが、そこがオフロードデビューにおいては大きな障壁になっていることは間違いない。
このビッグ・アドベンチャーバイク・デイ、通称B・A・D(バッド)は名前こそ凶悪そうだが、その内容は真逆で「アドベンチャーバイクでオフロードを走ってみたい!」という初心者のためのイベントになっている。会場は、千葉県成田市にある成田モトクロスパークを丸ごと貸し切り、重量級のアドベンチャーバイクが走りやすいようコースをリセッティング。土の上で安心してアドベンチャーバイクを走らせるための初歩的なスクールも実施しており、オフロードライディングの経験がなくても基礎の基礎から学ぶことができるのが特徴だ。
回を重ねるごとに進化し、初心者からベテランまで楽しめるイベントに
実は、2021年の春にヤマハのテネレ700を手に入れた筆者はこのイベントのファンであり、今回の第5回目はもちろん、初回から数回にわたって参加させてもらっている。何回か参加して驚くのはそのコースレイアウトの進化具合だ。回数を重ねるごとにコースレイアウトが巧みになっており、初心者はもちろんだがベテランまで楽しく遊べるようなコース内容に進化している印象を受けた。
例えば、初心者向けの林間コースは、本当に起伏の少ないルートが選ばれており、そこに慣れるとちょっと起伏のある迂回ルートに挑戦できるようになっている。自信がついたら、普段はモトクロスコースとして使っている起伏に富んだ本コースへとコースイン! この本コース内でも、タイトターンのアリナシや斜面走行など難易度によっていくつかのコースが選べるようになっており、自分のペースでレベルアップが可能。慣れればさらにモトクロスコースらしい大坂やジャンプなどにも挑戦することもできる。
秀逸なのは、直近の2回でコースの難易度設定が100%ビギナーだけでなく、中級者や上級者まで幅広く楽しめるような要素が取り入れられたことだろう。コース全長自体も相当拡張されており、最近完成したばかりの新設コースももちろん取り入れている。さまざまなコースを組み合わせ走ることで飽きることがなく、しかも途中何箇所かに分岐を設けたことで前走車に追いついたような場合も、分岐で違うルートを選べばペースが合わずに苦労するなんてこともない。
もちろん走行に当たっては、ビギナー最優先とはなるものの、スロットルの開け方次第ではベテランでもしっかり楽しめるようになっているのだ。初心者はもちろんだが、中級、上級であってもきちんと“冒険”できるようになっている。
コースを走ってみた印象としては、もちろんブロックパターンの強いオフロードタイヤの方が楽しめるが、ノーマルタイヤでも走行箇所やラインを選べば十分楽しめる。最近はスズキのVストローム800DEに、ホンダのXL750トランザルプといった21インチホイールを採用するオフロードテイストの強いアドベンチャーバイクも増えてきている。これらのアドベンチャーバイクを手に入れたなら、このB・A・Dでオフロードライディングへの扉を開いてみるのはどうだろう?
B・A・D開催概要
●場所 成田モトクロスパーク(〒287ー0236 千葉県成田市津富浦1191-1)
●参加可能車両
大型免許で乗れる公道走行可能のアドベンチャーバイク。450cc以下のマシン、モトクロッサーやエンデューロレーサーは参加不可。基本的にはオフロードに不慣れな方を対象とした走行会となります(スクールも基礎トレーニングとなります)。もちろん初心者にご配慮出来る方はエキスパートでもご参加可能です。女性および、オフロードビギナーに関しては、BMW G310GS、KTM250&390ADV、Vストローム250等での参加も可能。(次回の開催日程や不明点は「B・A・D事務局(BKライディングスクール)」までメールにて問い合わせのこと/bksoukoukai@aol.com)