最近、流行りのアドベンチャーバイク。高速道路を楽に移動できる排気量と車格を持ち、荷物をたくさん積めることで長旅もしやすい……。それだけなら「高速ツアラー」と呼ばれるジャンルのバイクも一緒なのだが、アドベンチャーバイクならではのプラスアルファの特性がある。それはオフロード走行性能だ。アドベンチャーバイクとして世界を旅するためには、舗装路だけでなく未舗装路も走れなくてはいけないというわけである。

だけど、これがなかなかに難しい。というのもアドベンチャーバイクは、快適な高速走行のために排気量が大きくハイパワーなうえ、車体も重く200㎏以上は当たり前。また大荷物の積載や二人乗りに対応するため、車体の剛性もしなやかなオフロードバイクに比べるとかなり高めでちょっと扱いにくい。近年のインジェクション技術やトラクションコントロールをはじめとする電子制御装備でその敷居は随分低くなってはいるが、それでもアドベンチャーバイクでオフロード走行することの心理的なハードルは相当なものである。アドベンチャーバイクを手に入れたからには、“いつかはダートも……”なんて思いながらも、なかなか決心がつかなくて砂利道には入れていない……なんてライダーは意外と多いのではないだろうか?

アドベンチャーバイク初心者のためのオフロード走行会

ビッグ アドベンチャーバイク デイで、オフロードコースをアドベンチャーバイクを走らせる!

2023年4月29日に開催されたB・A・Dの様子。貸し切りのオフロードコースだから、安全に楽しくアドベンチャーバイクを土の上で走らせることができる。

 

オフロード走行してみたいけど、自信がない。そんなアドベンチャーバイクならではのジレンマを解決して、本格的なオフロード走行とはいかないまでもキャンプ場内の砂利道や林道ツーリングくらいなら気負わずアドベンチャーバイクで出かけられるようになってほしい……と2021年からスタートしたのが、このB・A・D、ビッグ・アドベンチャーバイク・デイで、開催時期はゴールデンウィークと10月の年2回が最近の慣例となっている。

 

鈴木大五郎氏さん(左)と三橋 淳さん(右)。

主催はジャーナリストでありレーサーでBMWの公認インストラクターの資格も持っている鈴木大五郎氏(左)。右は、ドゥカティ・デザートXのアンバサダーとしてアテンドを勤めた三橋 淳氏。氏は2輪、4輪でパリダカール・ラリーへの出場経験のある伝説的なラリーストだ。

 

大きく重いアドベンチャーバイクは、モトクロッサーやエンデューロバイクなどと一緒にコースを走るのは難しい。モトクロッサーやエンデューロバイクなら楽々走ることができるような路面でも、アドベンチャーバイクで走ろうとすると難易度が飛躍的に上がり、巡航速度域がまったく異なるからだ。まぁ、その難易度の高さこそがアドベンチャーバイクでオフロードを走らせる楽しさでもあるのだが、そこがオフロードデビューにおいては大きな障壁になっていることは間違いない。

ビッグ アドベンチャーバイク デイにはアドベンチャーバイクの用品やオフロードに強いショップがブースを出展。展示即売商品や試乗車などを用意している。

ビッグ アドベンチャーバイク デイにはアドベンチャーバイクの用品店やオフロードに強いショップがブースを出展。展示即売商品や試乗車などを用意して楽しませてくれる。

 


このビッグ・アドベンチャーバイク・デイ、通称B・A・D(バッド)は名前こそ凶悪そうだが、その内容は真逆で「アドベンチャーバイクでオフロードを走ってみたい!」という初心者のためのイベントになっている。会場は、千葉県成田市にある成田モトクロスパークを丸ごと貸し切り、重量級のアドベンチャーバイクが走りやすいようコースをリセッティング。土の上で安心してアドベンチャーバイクを走らせるための初歩的なスクールも実施しており、オフロードライディングの経験がなくても基礎の基礎から学ぶことができるのが特徴だ。

恒例のコース下見。

恒例のコース下見。注意箇所の確認や準備運動もかねてコースを参加者全員で歩く。難易度を自分の足と目でしっかり確認してから走るからとても安心。この下見があることで技量に合致した“走れそうなコース”を前持って選ぶことができる。もちろん自信がついたらさらにレベルの高いコースに挑戦することだってできる。心理的、技量的に走れなかったコースが走れるようになる、それだけで十分楽しいものだ。

 

回を重ねるごとに進化し、初心者からベテランまで楽しめるイベントに

実は、2021年の春にヤマハのテネレ700を手に入れた筆者はこのイベントのファンであり、今回の第5回目はもちろん、初回から数回にわたって参加させてもらっている。何回か参加して驚くのはそのコースレイアウトの進化具合だ。回数を重ねるごとにコースレイアウトが巧みになっており、初心者はもちろんだがベテランまで楽しく遊べるようなコース内容に進化している印象を受けた。

例えば、初心者向けの林間コースは、本当に起伏の少ないルートが選ばれており、そこに慣れるとちょっと起伏のある迂回ルートに挑戦できるようになっている。自信がついたら、普段はモトクロスコースとして使っている起伏に富んだ本コースへとコースイン! この本コース内でも、タイトターンのアリナシや斜面走行など難易度によっていくつかのコースが選べるようになっており、自分のペースでレベルアップが可能。慣れればさらにモトクロスコースらしい大坂やジャンプなどにも挑戦することもできる。

任意で参加可能なスクールでは、オフロード走行のイロハからレクチャー。スタンディング走行とその効果を学び、スラローム走行でそのテクニックをしっかり身につける。

申し込み順で参加の選択が可能なスクールでは、オフロード走行のイロハからレクチャーしてくれる。スタンディング走行とその効果を学び、スラローム走行でそのテクニックをしっかり身につける。しかも、特殊なアドベンチャーバイクの特性に則した内容なので非常に効果的。装具もガチガチのオフロードウエアでなくてもツーリングスタイルで参加可能だ。熟練の講師陣によるレクチャーも非常にわかりやすい。写真の講師は松井 勉氏(右)。

 

秀逸なのは、直近の2回でコースの難易度設定が100%ビギナーだけでなく、中級者や上級者まで幅広く楽しめるような要素が取り入れられたことだろう。コース全長自体も相当拡張されており、最近完成したばかりの新設コースももちろん取り入れている。さまざまなコースを組み合わせ走ることで飽きることがなく、しかも途中何箇所かに分岐を設けたことで前走車に追いついたような場合も、分岐で違うルートを選べばペースが合わずに苦労するなんてこともない。

もちろん走行に当たっては、ビギナー最優先とはなるものの、スロットルの開け方次第ではベテランでもしっかり楽しめるようになっているのだ。初心者はもちろんだが、中級、上級であってもきちんと“冒険”できるようになっている。

初心者や、オフロード走行に不安のあるライダー大歓迎! むしろそういうライダーにオフロード走行の楽しさを知ってもらうのが、このビッグ・アドベンチャーバイク・デイ(B・A・D)の目的だ。不安なら、コースの途中でバイクを停めて様子をみたり、ベタ足で周回したって構わない。もしもの転倒の際も、自力での復帰が難しければ参加者同士で助け合ったり、ホーンを鳴らせばスタッフのサポートが受けられるようになっている。

 

コースを走ってみた印象としては、もちろんブロックパターンの強いオフロードタイヤの方が楽しめるが、ノーマルタイヤでも走行箇所やラインを選べば十分楽しめる。最近はスズキのVストローム800DEに、ホンダのXL750トランザルプといった21インチホイールを採用するオフロードテイストの強いアドベンチャーバイクも増えてきている。これらのアドベンチャーバイクを手に入れたなら、このB・A・Dでオフロードライディングへの扉を開いてみるのはどうだろう?

B・A・D開催概要

●場所 成田モトクロスパーク(〒287ー0236 千葉県成田市津富浦1191-1)

●参加可能車両
大型免許で乗れる公道走行可能のアドベンチャーバイク。450cc以下のマシン、モトクロッサーやエンデューロレーサーは参加不可。基本的にはオフロードに不慣れな方を対象とした走行会となります(スクールも基礎トレーニングとなります)。もちろん初心者にご配慮出来る方はエキスパートでもご参加可能です。女性および、オフロードビギナーに関しては、BMW G310GS、KTM250&390ADV、Vストローム250等での参加も可能。(次回の開催日程や不明点は「B・A・D事務局(BKライディングスクール)」までメールにて問い合わせのこと/bksoukoukai@aol.com

参加車両はBMWのGSシリーズが多い印象だが、KTMなどのアドベンチャーバイクもちらほら。

ドゥカティのデザートX。21インチホイール採用のアドベンチャーバイクなら、ノーマルタイヤのままでも十分参加可能だ。

排気量は450cc以上(例外もあり)のオフロード要素のあるバイクならどんなバイクもウェルカム。ドゥカティのスクランブラーシリーズでももちろん参加OK!

今回は、国産系の21インチホイールモデルが少なかった印象だが、軽量で運動性能の高い国産系の21インチホイールモデルでも十分楽しめるコースレイアウトに進化した印象だ。

参加車両はBMWのR1250/1200GSシリーズが多い。

参加車両はBMWのR1250/1200GSシリーズが多い。BMWはアドベンチャーバイクの中でもかなりの重量級で走行ラインが限られる。このGSが走れるなら大抵のアドベンチャーバイクで走行可能と思っていいだろう。

モト・グッツィのアドベンチャーバイク・ステルビオ12004V発見!

モト・グッツィのアドベンチャーバイク・ステルビオ1200 V4発見!

コースにはいくつかの分岐があり、難易度や練習したい項目ごとに周回できるようになっている。写真は三橋 淳さんのデモンストレーション走行。こんなダイナミックな走りをアドベンチャーバイクでしてみたい!

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