「レーサーに保安部品を付けただけの市販車」という絶大なインパクトで新時代を切り拓いたのはRG250Γ、GSX-Rを放ったスズキ。しかし、そうして生まれた“レーサーレプリカ”というジャンルを約10年続く“猫も杓子も”な巨大ムーブメントへ高く高く押し上げたのはヤマハです(断言)。2ストが「RZ&TZR」なら4ストは「FZ&FZR」。今回は後者の完熟版に注目してみましょう!
●1991年型「FZR250R(3LN5)」カタログより。しつこいですが、本当に何から何まで「いちいちカッコいいヤマハ」……。凄いのは時代が移り変わってもセンスの良さにブレやムラが一切ないということ。バイク本体はもちろん、YSPショップ、広告、カタログ、販促グッズ、プレスリリースに至るまで一貫した“デザイン”がなされているなぁ〜と、モーターサイクリスト誌(以下MC)編集部員時代から、いやバイクに目覚めた中学校1年生のときから今に至るまで、筆者は感服し続けております
バンディットという美学【後編】はコチラ!
今や驚くしかない超豪華装備のオンパレード!
「FZR250R、ハンパないって! もぉ~っ!!本当にハンパないって! ジェネシスエンジン、EXUPに高剛性アルミフレーム&スイングアーム、デュアルビームプロジェクターヘッドライトやらもテンコ盛りで50万円台なんて……。そんなんできへんやん、普通!」
と思わず大好きな“大迫半端ないって構文”をまた使ってしまいましたが、マジに、いや本当に当時のカタログを眺めているだけでナンデスカ、コノスゴサハ……となり、どうにかタイムトラベルしてFZRを筆頭に当時のレーサーレプリカを買い占めることができないものか、と無駄な妄想ばかりが膨らんでいきます。
●1994年型「FZR250R(3LN7)」のカタログより。いやもうとにかく鈍く輝く極太アルミデルタボックスフレームが全てを物語っておりますな。その中に収まる4連ダウンドラフトキャブレター! カウルに隠れて見えないパーツにまでしっかりポリッシュ仕上げがなされているなど、「今同じことを日本でやったらいくらかるのだろう……」と、しばしよけいな詮索をしてしまうほどスキのない仕上がりを誇っておりました
そうだ、超時空対決しちゃいましょう。
大ヒットモデル「FZR250」の後を受けてフルモデルチェンジを敢行し、
●1986年にデビューするや超人気モデルとなった初代「FZR250(2KR/2RG)」(当時価格53万9000円)の後を継ぎ、スタイリングは踏襲しつつヤマハの十八番、EXUP(Exhaust Ultimate Power-valveの略)を初採用したのが写真の「FZR250(3HX)」(同55万9000円)。こちらが1988年4月に登場したのに、なんと1年未満、11ヵ月後となる……↓
1989年3月に登場した「FZR250R(3LN1)」。
●フロントブレーキがダブルディスク化され、スラントした丸目二灯ヘッドライトの“顔”も400〜750〜1000とつながるイメージを得たことから、とても250㏄モデルとは思えない貫禄を得るに至った1989年型「FZR250R」。ご覧のとおりフレーム&スイングアームは極太なアルミデルタボックス化され、カウリングから足まわりから何やらかんやら全面刷新ですよ、それなのに税抜き価格は従来型FZR250からたったの4万円アップの59万9000円。いやもう絶対に原価計算からしてオカシイDeath……。そしてマタマタ1年未満、11ヵ月後となる……↓
翌1990年2月には早くも大規模なマイナーチェンジが行われ、ある意味で“FZR最終形態”とも呼べる姿をまとったモデルが、今回の主役「FZR250R(3LN3)」なのです。
●デュアルビームプロジェクター方式となったヘッドライトが目立ちますが、エンジン内部&キャブレターセッティング改良、フレームの表面処理追加など多岐に渡る改良が施されております。ホント、このころはNSR250Rを引き合いに出すまでもなく、レーサーレプリカは毎年のようにフルモデルチェンジ級の大幅改良が施され続けており、当然走行性能は上がり、大人気だったSPレースにおける戦闘力も向上しますが、価格もそれなりに……。販売の大多数を占める“レースをするほどでもない”移り気一般ライダーの金銭感覚と乖離し始めていたことは事実です
カタログ図版やレッドバロンの豊富な在庫のなかから選りすぐった車両の美麗なる撮り下ろし写真などがございますので、そちらと現在絶賛発売中の「YZF-R25 ABS」とで時空を超えた比較対決をしてみましょう。
奇しくも税抜きメーカー希望小売価格なら非常に僅差となっている2台が、どれほどまでに異なっているのかをバック・トゥ・ザ・フューチャー(BTTF)感覚で検証しちゃおう(?)ということです。
●33年前と今、同じ250㏄スポーツジャンルでヤマハの看板を背負うモデルが、どれくらい違うものなのか。どちらがいい、悪いではなく、興味深い事例として眺めていただければ幸い
1990年は33年前! 250スポーツはどう変わった?
ちなみに、1990年型「FZR250R(3LN3)」はメーカー希望小売価格が前述のとおり、ギリギリのギリ50万円台(笑)の59万9000円。
当時3%だった消費税込みの価格は61万6970円でした。
そして、現在絶賛発売中の2023年型「YZF-R25 ABS」は同62万8000円で、今や10%となっている消費税込みの価格は69万800円となります。
●納税が国民の義務であることは重々承知しておりますが、ガソリンに対する二重課税や負担が増えるばかりな自動車関連の税、閣議決定でホイホイ創設される新税ほか、使い道を含めて納得しかねる事例が最近特に多すぎます。ぜひ改善をしていただきたく……
なお、33年も違えば世相や金銭感覚だって大きく様変わりしております。
1990年と言えばバブル景気も最高潮のころ。
「♪24時間、戦えますかぁ~」という時任三郎さん分する牛若丸三郎太の声が、黄色と黒のパッケージも印象的な栄養ドリンクのCMソングとしてテレビで流されまくっておりました。
何だか妙に忙しかったけれど、それに見合ったお賃金もいただいていたので、可処分所得は山ほどありましたねぇ。
●「お前んところのボーナス何ヶ月? え、6ヵ月? ウチは8ヵ月分出たよ」なんて会話がフツーに交わされていたバブルのころ。定期預金の金利は6%に迫ろうとしていました。……いったいどこの国のお話deathか〜(涙)
バイク業界もレーサーレプリカブームに(まだ)沸いており、ライバルを制するために毎年……ヘタすると半年ごとにアップデートが繰り返されたという「どうかしていた」時代。
ナウなヤングたちは憧れのマシンを手に入れるためアルバイトに血道を上げていたものです。
ちなみに急騰していたとはいえ、そのころの大学生アルバイトの時給は650円くらいが平均だったという記憶がございます。少なくとも筆者が『餃子の王将・草加店』で働いていたころは、かくいう時給がニアピン賞でした(まかない飯付きだったので嬉しかったなぁ)。
家庭教師や塾の講師が時給1000円を超えていて、筆者のような肉体労働派は羨望のまなざしを送っていた、というイメージですね。
●高い時給を求めて家庭教師になろうとした筆者でしたが、中学生の問題を教えることができず、その場から逃げ帰ったというトラウマがございます……
何もかも値上がりする現在、バイクの値段は激安!?
片や現在……。
「24時間働けますか?」と口に出そうものなら速攻パワハラで訴えられ、SNSにて昔の小さな過ちまでさらけ出されかねない世知辛さ。
かつ、コロナ禍やウクライナ戦争の影響もあり、あらゆるものが値上げしているのはとてもツライところですよね。
ただ、そんな閉塞感がある時代だからでしょうか、バイクの自由闊達さが見直されて新車供給だけが追いつかない令和のバイクブーム……といった様相を呈しております。
肉体労働派大学生のアルバイト時給は、最低賃金を鑑みると1100円程度と言ったところでしょうか。
●ファストフード店、深夜のワンオペ業務なら時給は1300円を超えるかな!? とはいえ心と体を壊したら意味がないので、お金を稼ぎたいナウなヤングたちよ、無理はしないように……
そう考えると33年前のFZR250R比で本体だと2万9000円しか値上がっていないYZF-R25の価格というのは驚くほど十分にリーズナブル……と言えるのかもしれません。
さて、前置きが長くなってしまいました。
BTTFのタイムマシン、デロリアンの速度を88マイル(約142㎞/h)に上げることといたしましょう!
●いや本当に名作です、BTTF3部作。テレビ放映があるたびに、なんとなく家族で観てしまうのですよね〜、宮崎駿監督作品並みに……
FZR250R vs YZF-R25 徹底比較スタート!
[外観] 昔も今もライダーの魂を震わせる美しさ!
●1990年型「FZR250R」。ニューブラックブルーの塗色とグラフィックもタメ息ものの完璧さ。全長/全幅/全高は1990㎜/685㎜/1100㎜。ホイールベースは1375㎜。車両重量166㎏。シート高は735㎜。燃料タンク容量は14ℓ。50㎞/hの定地走行テストでの燃費は48.0㎞/ℓ……計測する速度が違うとはいえ、並列4気筒モデルのほうがカタログ上の燃費数値が良好とは意外でした。注目はシート高。数値上は最新の「スーパーカブ50」と同じですからね〜。と、驚いていたら同じ年のホンダ「CBR250RR(MC22)」はシート高725㎜ですって。当時、小柄な女性もレーサーレプリカを支持していたことを思い出しました
●2023年型「YZF-R25」。 新色ダークブルーイッシュパープルメタリック3(パープル)は目立つけどシブいという画期的な色ですね。全長/全幅/全高は2090㎜/730㎜/1140㎜。ホイールベースは1380㎜。車両重量169㎏。シート高は780㎜。燃料タンク容量は14ℓ。60㎞/hの定地走行テストでの燃費は37.5㎞/ℓ。ナンバープレートステーが飛び出している分、全長はFZRより100㎜ほど長いですがホイールベースは5㎜しか違いません。燃料タンク容量も同じだったとは……。複雑で繊細なボディの面構成が“最新モデル”であることを感じさせます
[エンジン] 同じ排気量で並列4気筒と並列2気筒……
●写真は1993年型「FZR250R」カタログより(以下ネームは1989年型の内容)。1985年にヤマハが発表したマシンづくりのコンセプト、ジェネシス[GENESIS=創世記の意]思想に基づき、45度もの前傾角が与えられた249㏄水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンは、ボア×ストロークが48.0㎜×34.5㎜、圧縮比12.0:1で、最高出力45馬力/1万6000回転、最大トルク2.5㎏m/1万2000回転のパフォーマンスを発揮。キャブレターはダウンドラフトタイプのミクニBDST28×4で、最高許容回転数が1万8000回転であることがカタログ内でも高らかに謳われていました。……5㎝足らずの直径しかないピストンが横に4つ並び、それぞれの直上に2つずつある吸排気バルブとともに想像を絶する超々高速で往復運動するのですよ!
●現行型インドネシア仕様「YZF-R3/R25」デビュー時の広報写真より(以下ネームは国内仕様最新版R25の内容)。偶力バランサーを備えた180度クランクの249㏄水冷4スト並列2気筒DOHC4バルブエンジンは、ボア×ストロークが60.0㎜×44.1㎜、圧縮比11.6:1で、最高出力35馬力/1万2000回転、最大トルク2.3㎏m/1万回転の実力。シリンダーには耐摩耗性の高いシリコン粒子を約20%含んだアルミ合金が使用されており、これによりスリーブレスでは一般的なメッキ処理が不要に……。燃料供給装置はフューエルインジェクションで、エンジン下部チャンバー内にある触媒との相乗効果により、33年前とは比べものにならない騒音&排出ガス&環境負荷物質の各規制値を全てクリアしているのです
[フレーム] アルミ or スチールでも設計思想は同じ
●1991年型「FZR250R」カタログより写真抜粋。フレームの軽量化と高剛性化を同時に達成させるために、ヤマハの出した解答が有名な「アルミデルタボックスフレーム」。鉄の1/3の比重であるアルミをボックス構造とし、ステアリングヘッド付近を太くしてリヤピボット部に向けて細くするデルタ型を採用。フレーム側面部分を力学的に極めて剛性の強い三角形にすることで、ライダーの意志をハンドリングに直結させる理想的な構造を実現していたのです(フレーム形式的にはプレスバックボーン)。化学研磨&アルマイト加工が施されて見た目もバッチリ。リヤアームもしっかりアルミ製のデルタボックス構造だぁ……
●軽量コンパクトな2気筒エンジンをしっかり支え、心躍るフィーリングをライダーへ感じさせることを目指したYZF-R25の「スチール鋼管トラスフレーム」(メインパイプ直径は35㎜)。細かな三角を組み合わせるトラス構造によりフレーム幅を抑えつつ開発陣の求める剛性と適度なしなやかさを実現したのだとか。同じくスチール製のロングリヤアームは左右非対称のテーパー形状が採用されています。素材や構造は違えども、エンジンから車体、ひとつひとつのパーツに至るメカニズムの全てをトータルパフォーマンスに向けて集約し機能させることで高いマン・マシン・コミュニケーションを作り込む技術思想=ジェネシス思想は、1985年発売の初代FZ750から始まって現行モデルに至るまでずっと貫かれているのです
[足まわり] 現行YZF-R25は倒立式フロントフォークを採用!
●FZR250Rのフロントサスペンションはφ39㎜の正立テレスコピック式。フロントブレーキは油圧式異径4ポットキャリパーにφ282㎜フローティングダブルディスクが組み合わされており、マスターシリンダーは別体式です。リヤサスペンションにはサブタンク別体式のリンク式モノクロスサスペンションを採用し、リヤブレーキはφ210㎜シングルディスクに油圧式2ポット対向ピストンキャリパーを装備していました。同時期、4ストレプリカで倒立式フォークを導入していたのはカワサキ「ZXR250/R」だけでしたね〜
● YZF-R25(写真は2019年型の赤)のフロントサスペンションはφ37㎜径インナーチューブの倒立テレスコピック式。フロントブレーキは油圧式2ポット片押しキャリパーにφ300㎜セミフローティングシングルディスクが組み合わされており、マスターシリンダーは一体式です。リヤサスペンションには軽量化とマスの集中化を目指してリンクを廃したモノクロスサスペンションを採用し、リヤブレーキはφ220㎜シングルディスクに油圧式1ポット片押しキャリパーを装備。 最新のモデルらしくABSは標準装備となっております
[タイヤ&車体構成] 30余年経ってもバイアスタイヤは現役!
●FZR250Rのタイヤサイズは前100/80-17、後ろ130/70-17でともにバイアスタイヤ。キャスター/トレールは24°30′/87㎜という設定でクイックなハンドリングが身上です。フルフェイスヘルメットのアゴ部分をタンク上にベッタリ載せて、サーキットでの最高速を少しでも稼ぐためのカウル&スクリーン形状が“時代”ですね。クリップオンハンドルでグリップ位置も低い……のですけれど、シート高が735㎜という驚きの低さなため相対的にライポジの前傾は緩めとなり、ツーリング用途にも十分対応できるという美点もありました。なお、このカラーリングはシルキーホワイト×アップルレッド、美しい……
●YZF-R25のタイヤサイズは前110/70-17、後ろ140/70-17でともにバイアスタイヤ。キャスター/トレールは25°00′/95㎜。カウルは走行風を後方に逃がすことで空気抵抗を低減しつつ、効果的にエンジンを冷却するクロスレイヤード構造を採用しており、走行風をヘルメット上部へと跳ね上げるウインドスクリーンの長さと角度も現代風ですね。さらにサイドカウル後方にはウイングが設けられており、ダウンフォースも発生させているとか。なお、オプションで用意されているクイックシフターも装着可能となっております。ちなみにこの新色はディープパープリッシュブルーメタリックC(ブルー)、美しい……
[メーターまわり] 時間経過を感じさせるインターフェースの進化
●真っ平らなトップブリッジの下にクリップオンハンドル、リストバンドをよく巻いた別体式ブレーキフルードタンク……。「これぞレーサーレプリカ!」と往年を知るミドルライダーなら快哉を叫ぶ“、1990年型FZR250Rのいかにも”なメーターまわりですね〜。左右のハンドル下にある蛇腹状の黒いホースはヤマハが「F.A.I.(フレッシュ・エア・インテーク)システム」と呼称していたもので、ヘッドライトの左右に設けられた“孔”から新鮮な外気を導入してクールで高密度な空気をエアクリーナーへ供給し、超高回転域で生み出される45馬力(以上!?)というハイパワーを下支えしていたのです!
●コレコレ! サーキット仕様にするときは簡単に速度計を取っ払うことができ、硬質ウレタンで包まれた回転計と水温計だけを残せるようになっていた“レーサーレプリカの文法”どおりのスポンジマウントメーター! 回転計……つまりタコメーターの針が3000回転以上エンジンを回さなければ動かないというのも“文法”でした。1990年型FZR250Rのレッドゾーンは1万8500回転から(!)、目盛りは2万1000回転まで(!!)。高回転域での唸るような高周波ヤマハ謹製エキゾーストサウンドに乗り手は陶酔したものです……
●現代を生きるYZF-R25はトレンドどおりなバーグラフタイプの回転計を持つ多機能フル液晶メーターを装備。精細なバー表示がスロットル開閉に呼応して俊敏に動く様子はなかなかにレーシーなもの(レッドゾーンは1万4000回転から)。燃料残量も時間もギヤ位置もシフトタイミングも分かります。なお、2019年からの倒立式フロントフォーク採用に伴い、アクスルブラケット、アンダーブラケット、ハンドルクラウン(トップブリッジ)は全面刷新され、特にアルミ鋳造製のハンドルクラウンにはMotoGPマシン「YZR-M1」を彷彿させる肉抜き加工が施され、ナチュラルなハンドリング実現に寄与しているのだとか。ナニハトモアレ、見た目もカッコいいしね!
[ヘッドライト] 時代が変われど精悍な“眼”は共通!
●より高い空力特性を実現するためにはフェアリングのスラントノーズ化が不可欠ということで、小径ながら大光量が確保できるプロジェクターヘッドライトを開発して収納スペースをやりくりし、ノーズ……つまりカウル鼻先の角度を大きくすることに成功。1枚レンズの奥に2灯を組み込むことにより、昼と夜で全く異なる表情まで実現したのです。闇を切り裂くオレンジがかったフィラメントの輝き……、イイね!
●低い位置から睨みを効かせるLED2眼ヘッドランプがアグレッシブな印象を見る者に与えるYZF-R25のフロントフェイスは、MotoGPマシンYZR-M1のアイデンティティであるM字型ダクトと広いゼッケンスペースを踏襲。そのM字型ダクトはF.A.I.やラムエア導入孔……ではなく、走行風をラジエターに送り込んで冷却性向上に寄与しているもので、ちょっとだけ拍子抜け(!?)。なお、前後のウインカーもLED化されてシュッとスリムになっており、スタイリッシュな印象を倍加させているのが“時代”ですネ
[その他の特徴] 神は細部にこそ宿るのです〜
●鈴鹿8耐などで大活躍したヤマハの耐久レーサー「YZF750」と同デザインのめちゃくちゃカッコいい縦2段式テールライトを採用していたFZR250R。……しかしこれ、筆者は“たらこクチビル”に見えて仕方がなく、お天気そらジロー(関東ローカル!?)やオバケのQ太郎をどうしても想起してしまうのです(汗)。タンデムシートはキー操作で開閉が可能で、その下のテールカウル内には車載工具+コンパクトなカッパくらいは入れられるスペースが存在していました。今でいけばETC車載器は楽勝で設置できそうです
●1991年型「FZR250R」カタログより。ヤマハ独創のEXUP……エグザップという響きからして「何だか凄そう」感が出ていたものでした。マフラー内に可変式のバルブ(絞り)を設けて、エンジン回転数などの条件に合わせて排気管内の断面積を可変させ、オーバーラップ(吸気バルブと排気バルブが開いている時間が重なり合う期間……通常は長く設計)時の排気圧力波を抑制するシステムで、低中回転域での太いトルクと高速回転域での鋭い吹け上がり感を両立させるもの。近年では排気騒音調律にも使われているとか。1987年の「FZR400R」で初採用され、現在に至るまで数々のヤマハ4ストモデルに投入されているシステムです
●樹脂成型技術の進化は複雑な形状でも高精度に再現することを可能としました。YZF-R25はその技術を活かし、サーキット走行時の運動性能を向上させるようにフューエルタンク&樹脂タンクカバーを設計(音叉マークの前方にある4連スリットの美しさよ!)。タンクキャップとハンドルポジションを低めに設定することで、ストレートでの伏せやすさと制動~旋回時のホールド性をアップさせているのです。
ちなみに「FZR250R」は磐田市のヤマハ本社工場で作られた、最後のレーシーな250ロードスポーツバイク。そちらが1994年に生産終了された後、約20年の空白期間を経て2014年に登場した「YZF-R25」は現行モデルに至るまで一貫してインドネシアにて生産されております。
……とまぁ、ここまで長らく比較してきましたが、いかがでしたでしょうか。
筆者的にはどちらのモデルも、時代が求めた性能に対して真剣に向き合い続けたヤマハ開発陣の誠実さがあふれ出ているナイスバイクだったなぁ、と改めて気付かされました。
次回はFZR系列の元祖である「FZ250フェーザー」あたりまで、さかのぼってみる予定です。
●あああああ〜っ、もう! この「FZ250フェーザー」のカタログ表紙を見るだけで筆者は高校生に戻ってしまいます(もちろん心だけ。できれば体力も回帰してほしいのですが)。GENESISやらYPVSやらMarlboroやらTECH21やら5VALVEやらEXUPやらRIZAP(?)やら、ヤマハに絡む全ての英語表記がカッコよく思えていたあの頃……。中でもそのバイクの衝撃度と正比例して灰色の脳細胞へギギギギと刻み込まれたのが“PHAZER”でした。当時の感動が、その頃生まれていない人にも伝わるように頑張ってみます〜
あ、というわけで4ストレーサーレプリカひとつの頂点「FZR250R」は、今こそ注目を集めるべき“走る文化遺産”。レッドバロンの良質な中古車なら、パーツ欠品や出先でのアクシデントにおびえることなく、ヤマハ開発陣が目指した魂の走りを追体験することができるのです。もちろん新車の「YZF-R25」を購入することもできますよ〜! ぜひお近くの店舗へ足を運んで、車両探索や不明点の確認など、何でもお気軽にスタッフとご相談を!!
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