「シービーセンヒャク」と耳にしても知識がなまじあればあるだけ、どのモデルのことを言っているのかサッパリ分からない……。排気量不変のネイキッド1本でここまでバラエティに富んだ展開をした車種というのは珍しいんです。【後編その1】と一緒に読んで(←開き直り)勉強していただき、アナタもワケ分からなくなっちゃってください!?
Contents
車名の響きから広がる妄想には気をつけましょう
「レーサーヒャックゥ~!」とはNISSEKI(=日本石油……現ENEOS)がバブル真っ盛りの1990年代初頭、鶴田真由さん(可愛かった~)&大沢たかおさん(カッコよかった~。今や実写映画『キングダム』の王騎役がドハマり中)らのCM出演タレントに小っ恥ずかしくなる……いや、超絶印象に残るイントネーションで言わせていた決め台詞ですね。
正式な製品名は「日石ダッシュレーサー100」。当時はリッター100円少々、ヘタすると90円台でハイオクガソリンを入れられていたんだなぁと、今や2倍強となってしまった価格に枕を濡らす今日この頃です(※執筆は怒りのガソリン補助金対策前)。
あ、失礼。
「シービーセンヒャク」と呼応させるためだけに冒頭へ持ってきた「レーサーヒャックゥ〜!」という言葉だったのですけれど、ネタを膨らませるべく関連する動画をちょっとだけ調べるつもりがYouTubeという魔界で4時間ほど時間を溶かしてしまいました(汗)。
というわけで「シービーセンヒャックゥ~!」です(←しつこい)。
2010年に登場して同年、2011年と2年連続で国内401㏄~部門における販売台数トップの座を獲得した空冷ビッグバイク「CB1100」は以降、大きな“転機”を2回迎えました。
そのひとつが2014年に大容量タンクとスポークホイールを採用した「CB1100 EX」の登場で、
もうひとつが2017年、スポーティな走りにフルスイングした「CB1100 RS」の追加です。
正直なところ“RS”には驚かされましたね~。
ホイールサイズの変更はもちろん、専用の足まわりまで導入してくるとは……。
と、その2017年の大変革についてはたっぷり後述させていただきますので、そちらの直前、2016年にデビューしたスペシャルエディションから【後編】をリスタートいたしましょう。
チェッカーフラッグを想起させるデザインが秀逸!
「CB1100 Special Edition」&「CB1100 EX Special Edition」
2016年4月18日 受注期間限定発売
はい、こちらもホンダがよく行う販売方式である“受注期間限定”発売された特別仕様です。
今一度説明いたしますと、一定の期間を定め……この仕様なら2016年4月11日から6月1日まで注文を受け付けてオーダーされた数だけを確実に製造していくというスタイル。
販売計画台数は「CB1100〈ABS〉」ベースが200台、「CB1100 EX〈ABS〉」ベースが250台だと公式リリースには記載されていましたが、実際にどれだけの数がオーナーの手に渡ったのかは不明です。
少なくとも私は街で見かけたり、所有者を取材した記憶はございません。
しかし……今見ると特に「CB1100 スペシャルエディション」がまとった市松模様のストライプは精悍かつカッコよろしいですなぁ。
ここまで派手シブ(?)なグラフィックは10数年にわたる「CB1100」シリーズの歴史においてもこのモデルだけ!
オーナーの皆さまにおかれましては、くれぐれもタンクを傷つけるような転倒をせぬよう十分お気を付けて(笑)、開発コンセプトでもある“鷹揚(おうよう)な走り”を存分にお楽しみください。
大々的な改良で魅力を底上げして“走りのRS”を新提案!
「CB1100」「CB1100 EX」を熟成し「CB1100 RS」を追加
2017年1月20日 発売
その成り立ちからして日本国内専用のモデルだと、多くのライダーに思われていたフシもある「CB1100」ですけれど、実は2013年モデルから欧州や北米でも販売が開始され、
「オー! ジャパニーズ トラディショナル エアク~ルド バ~イク!! インクレダボーッ!!!」と一部マニアにウケていたとか……。
販路がグローバルになれば総生産台数も増えて、コストを掛けられるというもの。
「ならば!」と気合いを入れ直したホンダ開発陣は、手にする全世界のライダーが共通して深く納得できる“所有する喜び”を深化させるべく、全方位で魅力をアップさせてきました。
バイクはもちろん走ってナンボ、ですから走行性能は譲れません。
すでに世界を見渡しても唯一無二の存在となっていた大排気量☆空冷並列4気筒エンジンは当然、吸排気系などへも徹底的に手を加えて出力特性、排気音、扱いやすさから環境諸規制への真摯な対応に至るまで大幅なブラッシュアップを敢行。
仕上がった珠玉の空冷パワーユニットをオリジナルである「CB1100」と、懐古的スタイルで人気を集めた「CB1100 EX」だけでなく、新たに熱い走りを許容する足まわりとライディングポジションが身上の「CB1100 RS」を創出して搭載し、ここに「CB1100 三本の矢」が完成したのです。
そして、所有する喜びには、見て触って磨き上げるときに感じるウットリ感が不可欠……ということで、思わず手で触れたくなるような外装部品の仕上がりにもこだわりました。
何と言ってもネイキッドモデルの“華”とも言える部分がフューエルタンクです。
「EX」と「RS」には従来より圧倒的に見栄えのいい“フランジレスフューエルタンク”が採用されました。フランジとは一般的には輪状の縁(ふち)……部材からはみ出すように出っ張った部分の総称で、まぁ、いってしまえば餃子の皮にタネ(アン)を入れ、2つ折りにしたあと皮の端っこを指でつまんでくっつけていくではないですか、その貼り合わせた部分がフランジです(笑)。
STDのCB1100では、タンク下部へ手を回すと溶接された糊代(のりしろ)ような板状の部分を指が感じますけれど、フランジレスタンクの「EX」と「RS」では、陶磁器のような表面の手触りにニヤニヤしつつタンクの下へ指を走らせても“餃子の合わせ部分”には触れられません。
燃料タンクを構成する鉄板の溶接部分が、極力車体の中心側へ押し込まれているんですね。
本来なら余分な工程が増える(=コストアップと同義)ため量産車には採用しづらかったのですけれど、ホンダ開発陣はタンクの製造方法を抜本的に見直し、美しすぎる見栄えと良好な生産性の両立まで実現(詳しくはこちらをお読みください)。
往年のCBの血統を感じさせるフォルムとともに曲面基調で彫りが深く、タンク容量もしっかり16ℓを確保した新しいCB1100の“華”ができあがりました(STDはシュッとした14ℓタンクを継続)。
あと、パッと見では変更がないように思われますが、「EX」ではスポークホイール周りが刷新されています。
アルミリム、ハブ、スポークの全てが新設計というのですから気合いがハンパないって!
それにより前後各48本でスチール製亜鉛メッキ製だったスポークは前後各40本のステンレス製となり、耐食性と光沢を増したばかりでなく配列にもこだわったおかげで掃除のしやすさまで向上……。
休日、おもむろにセンタースタンドを掛けて洗車したあと、修行僧のごとく足まわりを一心不乱にシコシコ磨いていく……というオーナー様の楽しみが増大したのです(笑)。
大排気量☆空冷スポーツという唯我独尊な存在が爆誕
そして……何と言っても驚きは「RS」の追加でした。
従来の前後18インチホイールをかなぐり捨ててハイグリップタイヤも選びやすい幅広の前後17インチホイールを装着し、フロントフォークにはφ43㎜のインナーパイプを持つラジアルマウントブレーキキャリパー用2ピースボトムケースタイプを採用!
内部は専用のショーワ製SDBV(ショーワ・デュアル・ベンディング・バルブ=減衰力を発生させるバルブを2つ持つという構造!)とすることで乗り心地と路面追従性を向上させているのです。
リヤに採用されたリザーバータンク付き分離加圧式倒立ダンパーともども、イヤらしく……いや誇らしげに黄金の輝きを放っており所有感もマシマシ。
スイングアームも極太アルミ化されていますからね……このあたりはCB1300シリーズと兄弟車であるメリットを最大限に活かしてきたカタチとなります。
実際に「RS」を峠道で走らせる機会があったのですけれど、まさに“鷹揚(おうよう)”だったCB1100(STD&EX)らしいマッタリフィーリングが一変して、バンクさせるときの軽快感が一段と……いや二段ほど上がっているのです。
17インチ化はもちろん、キャスター角まで他モデルとは異なり、27度から26度まで立てられている効果は絶大でした。
ライディングポジションもローハンドルで前傾姿勢が強められており、カーブが近づくたびに気合いが入るという効果もバッチリです。
前後サスのセッティングまで「RS」は独自のもの……ではありますけれどガチガチに硬められたわけではなく、あくまで公道を爽快に走るための味付けがされており、非常に好印象を受けた記憶が残っております。
あ、好印象といえば排気音も良くなっていましたね~。
アイドリングから野太く、吹かせば周囲の空気を振るわせるような快音が炸裂……!
これはSTDを含めた3モデル共通なのですけれど、ちょうどこの時期から二輪車の排ガスと騒音などに関する規制が、おもにEU加盟国で用いられる規制数値と日本国内の規制数値とで調和させていこう(ハーモナイゼーション)……という動きがありまして、結果的に騒音に関しては若干ながらクリアしなければならない数値のハードルが下げられたのですね(従来の日本におけるハードルが高すぎたとも言えるのですけれど)。
するとどうなるか?
バイクメーカーとしては純正でより抜けがよく、迫力あるサウンドを追求できるようになったのです!
結果的にそれはマフラーの軽量&小型化や出力特性の改善にも大いに役立ち、「CB1100」シリーズの完成度をより一層高めた一因にもなりました。
「こいつはマジでいいぞ、爆売れ間違いなしだなっ!」というモーターサイクリスト編集部内での下馬評どおり、2017年の国内401㏄~部門において、カワサキ ニンジャ/Z1000、H-D スポーツスター1200に続く、堂々のランキング3位を獲得!
以降も「CB1100 三本の矢」は、安定した人気を誇っていくこととなったのです。
……やっぱり長くなってしまいました、先を急ぎましょう(汗)。
走りのCB1100に激シブのモノトーンカラーが登場
「CB1100 RS」カラーリング追加
2017年12月21日 発売
上記のとおり、CB1100シリーズに一大改良が施された同年の年末、「RS」にタメ息が出るような渋い色遣いのモデルが追加で登場しております。
タンクに「ヘビーグレーメタリック-U」という新色を採用するとともに、キンキンキラキラだった前後サスやブレーキキャリパーなどをブラック塗装/アルマイト加工を施し、一気にフォーマルな印象へと大変身。トドメはブラウンカラーのシートですね……オットナ〜!
「RS」のキンキンキラキラ足まわりがついに消滅……
「CB1100シリーズのカラバリと仕様を一部変更」
2018年4月20日 発売
グリップヒーターとETC車載器が標準装備ではなかった「素のCB1100」がラインアップ落ちして、従来でいうところの“Eパッケージ版”がシン「CB1100」へと昇格……。
そして各モデルのカラバリ(カラーリングバリエーション)が変更&整理され、「CB1100RS」には印象的な銀が新たに加わり赤が消滅。
従来から継続された黒も足まわりが銀に準拠するモノトーンへ変更されて、前年末に登場した濃灰との3色展開になった「RS」は全色で落ち着いた雰囲気となりました。
ゴージャスすぎる(!?)サスペンションの色を気恥ずかしく思う人たちも多かったのでしょうかね……。
なお、この2018年モデルから「CB1100シリーズ」(……というかホンダの251㏄以上のバイク全て)は新販売チャネルの「Honda Dream」でしか購入できなくなりました。
「CB1100(……というかホンダの251㏄以上のバイク全てのどれか)が欲しいけど家の近くにDream店がナイんだヨ!」と困り果てたライダーも各地に少なからず存在していたと聞いております(2018年3月の時点で日本全国に展開していたDream店は約150店舗……)。
「CB1100」のタンク容量が14ℓ→17ℓへ増量ッ!
「CB1100」シリーズの熟成をはかりカラバリを変更
2019年1月11日「CB1100 EX/RS」 発売 同年1月28日「CB1100」発売
2010年の登場以来9年間、シュッとした14ℓタンクで押し通してきた「CB1100」が、このタイミングでタンクを17ℓ化……。
ハイそうです、2016年モデルまでの「CB1100 EX」に採用されていた“オリジナルっぽいけどアレやコレや工夫して3ℓも増量に成功したタンク”を導入してきたのですよ。
その他、全モデルとも細かい改良が施されました。
トレンドのつや消しカラー導入で激シブ、ここに極まれり
「CB1100 RS」の特別仕様車を追加設定
2020年1月17日 受注期間限定発売
もうおなじみ、2019年12月16日から2020年5月31日までの受注期間限定モデルで、公式リリースにある販売計画台数は200台ポッキリ。
暗闇に駐めていたら、マフラーしか見えないのじゃないか?、というくらいステルス性能高めな車両となっております(笑)。
EURO4は越えたけど越すに越されぬEURO5……で、おしまいっ!
「CB1100 EX Final Edition」&「CB1100 RS Final Edition」
2021年10月28日「RS FE」発売 同年11月25日「EX FE」発売
と、いうわけで2010年から始まった「CB1100」のストーリーは2021年10月に発表されたファイナルエディションの完売をもって終了することとなりました。
「え? 将来の環境諸規制にも対応する開発が行われたんじゃないの?」といぶかしむ人も数多いとは思われますが、CB400SS【後編】にて述べたSR400終焉の理由のとおり、令和2年(平成32年)排出ガス規制は非常に厳しい欧州圏での規制“EURO5”と同等のレベルとなり、さらに車体へ故障診断システム(OBD-2)ほかの装着が義務づけられるなど対応が大変。
全世界的に落ち着いてしまった販売状況と規制をクリアする場合にかかるコストとの兼ね合いが釣り合わないと判断されてしまったのでしょう。
あのSR400、そしてCB400SF/SBですら生産終了に追い込まれてしまったのですから、お察しください。
それでも大排気量☆空冷並列4気筒エンジンという何一つ環境諸規制クリアに有利な点のないパワーユニットでありながら、2012年の平成24年排出ガス規制、2016年のEURO4+平成28年排出ガス規制をくぐり抜けて11年……いや、生産自体は2022年まで行われましたから丸12年、干支がひとまわりするほどの命脈を保ったのですから、本当に大したものです。
両ファイナルエディションの予約期間は2021年10月8日から同年11月30日……となっていましたが、販売台数計画:シリーズ合計1600台はアッという間に予約リストが埋まり、早々に受付が終了したと聞いております。
個人的には「CB1100」のファイナルエディションが設定されなかったのは「なんだかなぁ!(by加藤あい、いや阿藤快)」という感じですけれど、それもまた冷静な経営判断だったのでしょう。
ともあれ、2018年、2019年、2020年と3年連続して国内401㏄~部門ランキングのトップ10に入っていなかった「CB1100」シリーズは、2021年に8位、2022年は5位へと食い込んで、しっかり爪痕を残していきました。
ちなみに……その2018年から2022年まで5年連続して同クラスの圧倒的ベストセラーに輝いているのはカワサキ「Z900RS/CAFE(SE)」となっております。
強い……強すぎるし、2023年も2024年も突っ走っていってしまいそうな勢いですね。
さて、話がちょっと逸れてしまいましたけれど、かつて「ドリームCB750 FOUR」で大排気量☆空冷並列4気筒エンジンという夢の世界を切り拓いたホンダが、最後の最後まで“空冷CB”にこだわり続け、改良の手を緩めなかったというのはとても胸が熱くなる展開でした。
残念ながら「CB1100」という夢の結晶は、もう二度と生産されることはありませんが、だからこそ数ある中古車のなかから“走る文化遺産”とも言える車両を見つけ出し、いつまでも大切に乗っていっていただきたいものです。
いつもどおり……いや、いつも以上に長くなってしまいましたが、これにて終了!
次回はホンダ「VRXロードスター」について(今度こそ)サクッと紹介する予定です。
あ、というわけで「CB1100」シリーズは眺めて良し、走って良し、磨いても良し、カスタムしてもなお良し、というアナタのバイクライフを間違いなく充実させる乗りやすさに満ちたビッグバイク。レッドバロンの良質な中古車ならアフターサービスも万全ですよ! まずはお近くの店舗まで足を運んでみてくださいね~!