2024年某月、栃木県の那須モータースポーツランドで開催された「那須MSLライディングスクール」に愛車・XR BAJAで参加した。じつはこのスクールに僕(筆者:佐賀山敏行)が参加するのは2回目。だけど、1年も経つといろいろと忘れていることが多く……大いに勉強になるのだった。
前回の記事『那須MSLライディングスクールに2回目の参加①「1年経てば、いろいろ忘れるね」編』はコチラ
Contents
意外とできない「ブレーキング」&頭と反射神経を使って「緊急回避」
1時間の昼休憩のあとは、またまたホームストレート上でインストラクターによるデモンストレーションを見学。
まずはブレーキング。コース上を一定の速度(30km/hもしくは40km/h)まで上げて、ブレーキをかける。そのままブレーキレバーを握り直したりすることなく、ブレーキを掛け続けたままパイロンが立っているポイントちょうどに止まるというもの。
2名のインストラクターがスタート地点に並ぶ。合図とともに発進し、規定速度まで加速。
それぞれ、「ここでブレーキをかければ止まれる」と思うポイントでブレーキング開始。一度握り始めたブレーキレバーを緩めたりして調整するのは禁止。そのまま握り続ける!
竹内インストラクターはブレーキをかけるタイミングが早すぎて、パイロンの手前で停止。簡単そうだけど、インストラクターでも失敗することがある。じつは「ブレーキの握り直し禁止」がポイントで、意外と難しいことがわかる。
西川インストラクターもパイロンのやや手前で停止。
前後のブレーキをしっかりかけるなど、ポイントを説明してもらう。たかがブレーキ、されどブレーキ……いやいや、ブレーキは安全に走る上ではとても重要だからね。
ただ速く走るだけでなく、こうした基本をあらためて教えてもらえるのは嬉しい限りだ。
各インストラクターのデモンストレーションを見ながら、中井インストラクターがポイントを説明してくれるので、とてもわかりやすい。これこそが「那須MSLライディングスクール」の人気の秘密だと言えるだろう。
続いては緊急回避のデモンストレーション。
ホームストレートに設置されたスタート地点から、フラッグを持ったインストラクター目掛けて、40km/hまでしっかり加速する。パイロン手前までバイクが迫ると、インストラクターは両手に持ったフラッグのうち、どちらかを上げる。
ライダーは、フラッグと逆の方向に進む。つまりフラッグは障害物であり、それを瞬時に判断して回避するのがこのカリキュラムの目的である。
回避のあとはブレーキング。しっかり停止してから、元の位置に戻る。
後ろでは、中井インストラクターがこのカリキュラムのポイントや意義を受講者に説明している。
というわけで、我々も実践! ウォーミングアップをかねて、まずはコースを完熟走行。
2列に分かれて、スタート地点に並ぶ。
まずはブレーキングから。乗り慣れた愛車だから簡単かと思いきや、これが意外と難しい!
ブレーキのかけ具合を調整しながらであれば、当然ながら簡単だ。しかしこのカリキュラムでは、一度握り始めたブレーキは調整禁止。
つまり、ブレーキをかけ始める位置を見極めることが重要。逆に言うと、それを理解すれば、愛車のブレーキの“本当の効き具合”を知れるというわけである。
続いて緊急回避。竹内インストラクターに隠れているが、前方からバイクが向かってきている。
で、左手を上げる竹内インストラクター!
(お! 右側のフラッグ(左手)が上がったぞ!! ……ということは、左に回避だ!)
なんてことを考えながら、車体を左に傾ける。
一見すると簡単そうなのだが、けっこうスピードが出ているし、フラッグもギリギリまで上がらないので緊張する。
そして、フラッグと逆の方向に行くというのも、意外と頭を使って考えなければならない。ぼんやりしていると間違えそうになるのだ。
もちろん僕もチャレンジ! ライディングは体だけでなく、しっかりと脳みそも使わなければいけない……そんなことをあらためて確認させられるカリキュラムだ。
コーナリングはクリッピングポイントの見極めで大きく変わる
続いては、第9コーナーを使ってのデモンストレーションを見学。
さて、何を見るのかというと……
コース奥から走ってくるZ800とCBR1000RR。
先行しているのはZ800。2台のスピードは同じだ。
第9コーナーに差し掛かる。
Z800はコース中央、CBR1000RRはコースの目一杯アウト側を走っている点にも注目。
同じスピードなので、当然ながらZ800が先行したままだ。
次に、コーナーに設置されている2本のパイロンに注目してほしい。
Z800はパイロン【2】の近く(コーナーのイン側)を通過。対してCBR1000RRはコース中央のラインを走っているのがわかるだろう。
パイロン【2】を過ぎたZ800は徐々に膨らみ始める。そう、「アウトインアウト」というやつである。
膨らみはじめたZ800に対して、コース外側から中央を走っていたCBR1000が徐々にイン側に寄せていく。
あれ!? コースの内側と外側を走る車両が入れ替わった!?
CBR1000RRはパイロン【1】のすぐ近く、イン側ギリギリを走る。
対してZ800はコース真ん中まで膨れてしまっている。一見すると、Z800は「アウトインアウト」の原則を守っているように思えるのだが……。
コーナーの出口はまだまだ先。このままだとコースアウトするのか、Z800がやや失速。
対してCBR1000RRは速度を落とさずにコーリングを続ける。
あっ!!!!
CBR1000RRがZ800を抜いた!!!!
CBR1000RRはコース中央をスムーズに走り抜ける。CBR1000RRはさほど膨れることなく曲がることができ、スピードを落とすことなくコーナーを曲がれた。
対してZ800はコースのアウト側に大きく膨れてしまい、コーナーの出口で大きく失速せざるを得ない状況になってしまったのだ。
この差を生んだのが「クリッピングポイント」。
コーナーリングの際、最もイン側に寄せるポイントのことで、Z800はコーナー入り口付近、CBR1000RRは出口に差しかかるあたりをクリッピングポイントに設定したのだ。
つまり「アウトインアウト」と言っても、ただ闇雲にコーナー外側から内側、そしてコーナー外側に抜ければいいというわけではない。正しいクリッピングポイントを見極め、コーナー外側から大きく入り込み、クリッピングポイントを過ぎたら小さく回る……これが正しいコーナリングなのである。
あれ? これって最初に教えてもらった「8の字」のポイントと同じではないか!!
そう、すべては繋がっている! 売れっ子脚本家が書いたドラマかと思わせるような、みごとな伏線回収カリキュラムなのである(笑)。
目指せクリッピングポイント!! みんなの視線でちょっと緊張(笑)
というわけで、第1コーナーを使ってクリッピングポイントを意識したコーナリングの練習。
2班に分かれて、インストラクターを先頭にして1列で走る。
倒れている赤いパイロンがクリッピングポイント。先導の片平インストラクターのようにギリギリを目指す!
ちなみにコーナー入り口に立っている青いパイロンは、コーナリングを始めるアプローチポイント。アウト側ギリギリにあるこのパイロンから、クリッピングポイントを目指してコーナリングを行う。まさに「大きく入って、小さく回る」のである。
そして、クリッピングポイントを指差しているのは中井インストラクター。当然、ライダーにその声が聞こえるわけではなく……
待機中のもう1班の受講生に解説をしているのだ。
そう、走行班は受講生みんなが見ているところを走る。つまり、ちょっとだけ緊張する(苦笑)。
だけど、実際には「緊張する」なんて言ってられない! 自分のスキルアップのためには、他人の目は気にならない!!
というか、僕も待機中に中井インストラクターの解説を聞いていたが、誰が走っているかなんて見ている余裕はない。待機班は待機班で、みんな解説をしっかり真剣に聞いているのだ!
最後はコースを思いっきり走る
そして最後のカリキュラムは、2班に分かれて、コース全周を走る。
もちろん好き勝手に走るのではなく、先導車がついて、追い抜きは禁止。クリッピングポイントをはじめ、今日習ったことを意識しながら走る! ……のだが、これがなかなかのペースで走るから気持ち良い。
「ちょっとペースが速いなー」なんて思った場合は、次の走行前に順番の入れ替えなどで対応してくれるので安心だ。
ちなみに僕はブレーキの使い方やクリッピングポイントの確認など、いろいろじっくり考えながら走っていたので、すっかり列から遅れてしまった(苦笑)。だけど、そんなことは気にせずに自分のペースで走る!
その甲斐あって(?)、第9コーナーでもパイロン【2】を華麗にスルー!
徐々にイン側に寄せていき、パイロン【1】に……
……寄せ切れなーーーい!!
考えすぎるのも良くないのかしら?(笑)
まぁ、だけどサーキットを思いっきり走れるのは、やっぱり気持ちがいいのだ。
タメになるレッスンだけでなく、「走る楽しさ」もしっかり考えてくれているのが那須MSLライディングスクールの良いところ! みなさん、本当に楽しそう!!
2025年度 那須MSLライディングスクール 参加予約受付中!!
2回目の参加にも関わらず、やっぱりタメになることだらけの那須MSLライディングスクール。リピーターが多いというのも頷ける。
というわけで、2025年度のスクールも絶賛受付中! ビギナーもベテランも、是非一度参加してみてはいかがでしょうか? おすすめですよ!!
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