ビジネスホテル、リゾートホテル、温泉旅館、民宿、ペンションなどなど、ツーリング中にお世話になる宿泊施設はいろんな形式のものがありますが、「ビジネス旅館」というのも安くて庶民的でいいんですよね、しかも部屋が和室だったりして、くつろげる。今回は先月、福島県須賀川市で利用した「ビジネス旅館あさか宿」を例に、その良さをお伝えします。

ビジネス旅館とは

 サラリーマンが出張先で宿泊するのに便利なのが、ビジネスホテル。一泊朝食付きで利用し、夕食は近くの居酒屋で、その土地の名物をツマミに地酒を飲む、というような使い方は最高ですよね。これは我々ライダーがツーリングする際にも活用する方法。
 ビジネス旅館は、どちらかというと長期出張や長期滞在で何日間も連泊するのに適した宿。家庭的な朝食や夕食が用意されていて、部屋は質素な和室で、寝具はベッドじゃなくて布団だったりして、共同で利用する浴場があり、着替えに困らないように洗濯機や乾燥機も用意され、宿泊料金は格安。
 工事関係者の方がよく利用されていますが、一般客が旅の途中で一泊だけ利用するのも、もちろんOK。
 筆者が2025年6月に福島県須賀川市で利用した「あさか宿」も、まさにそんなビジネス旅館でした。

ビジネス旅館

 到着したのは、夕方。現場仕事を終えた工事関係者のみなさんが、クルマに相乗りして続々と帰ってきます。
 旅館の方に「すいませーん、バイクで来たんですが」と告げると、「軒先に駐めていいよ~」と気さくに返してくれました。かしこまった会話じゃなくて、フレンドリーなところがいい。これもビジネス旅館の魅力。

和室で布団がいい

ビジネス旅館

 帳場(ちょうば)で宿泊料金を支払い、部屋の鍵を受け取ります。1名1泊2食付きで、シングル利用で料金は税込み7,200円。2人以上で同室利用の場合は1人あたり6,200円。安くて助かります。
 部屋は広さ8畳ほどの和室で、布団が用意されていました。ビジネスホテルのシングルルームよりも広く、和室だからゴロリとそのまま横になれます。
 布団というのも、いいんです。安いビジホの年季が入ったベッドなんて、腰のあたりがヘタっちゃって寝返りが打ちづらく不快だったりするものですが、布団ならばそんなことはない。

ビジネス旅館

 くれ縁(内縁)には洗面台があり、小さな冷蔵庫と、洗濯物を吊るす室内用の物干し台も。
 長旅の際、この物干し台はありがたいもの。コインランドリーで乾燥機を使うよりも安く済むし、コインランドリー内で洗濯物が乾くのを待つ時間がもったいない。宿泊先の部屋で干せるのはラクでいい。

家庭的な食事がいい

 もうすぐ夕食の時間。大浴場(といっても浴槽は大人ふたりが同時に浸かれる程度)で汗を流し、食堂へ。
 調理場で忙しく働く宿のご主人に声をかけると、玄関ホールに置かれた自販機で缶ビールを買って食堂に持ち込むのはOKとのこと。これも安く済むので助かります。

ビジネス旅館

 食堂のテーブルの上には「〇△建設様」「〇□電工様」などと書かれた案内板が置かれています。
 筆者が缶ビール片手におひとり様席に座っていると、すぐさま料理が運ばれてきました。

ビジネス旅館

 いいじゃないですか、品数もボリュームも充分です。メニューは長期滞在の宿泊客が飽きないよう、毎日、日替わり。
 なるべく、安く、だけれども、美味しく食べられるように工夫が。
 手前右の豚肉なんて、身体を酷使する工事関係者への気遣いでしょう、粉をふって厚みを持たせてカツレツ風に仕上げ、味付けはニンニク醤油風味。ガツンとした味わいでビールがうまい、メシも進みます。
 ごはんと味噌汁はセルフでおかわりOK。ちなみに朝食は、納豆と生卵と味付け海苔もセルフで食べ放題。ありがたいじゃないですか。

旅の夜はしみじみと

 調理場にお膳を下げつつ「ごちそうさまでした~」と声をかけ、部屋へ。

ビジネス旅館

 あとは部屋でテレビでも見ながらしみじみ過ごすだけですが、蛍光灯の真っ白い灯りが鬱陶しいったらありゃしない。気分も白けます。これはビジネス旅館の唯一の欠点と言ってもいい。
 ビジネスホテルだったら、間接照明を使い、自分の好みの明るさ(暗さ)で過ごせるじゃないですか。

ビジネス旅館

 かといって、蛍光灯を消してテレビを点けると、これもまた白ける。部屋が暗いのに、テレビの前だけ白く光る。
 なので筆者は泊まりがけのツーリングの際、暖色のLEDライトを持参しています。

ビジネス旅館

 これでなんとか落ち着けるように。
 陰翳礼讃(いんえいらいさん)。夜はそれでいい。

ビジネス旅館

 洗面台の照明にも活躍してもらいます。
 ライディングジャケットと、汗ばんだジーンズと、温泉タオルが浮かび上がる、我が旅の宿。
 ビジネス旅館、いいでしょう? 安くてアットホームで和室なのがいいんです。
 でも宿を切り盛りする側は、大変なのでしょうね。朝は早くから朝食の準備に追われ、客が出かけた後は部屋を掃除し、布団を干し、トイレを磨き、大浴場を清掃し、午後は夕食の買い出しと調理、夜は遅くまで洗い物、片付け、そして翌朝の仕込み……。客がのんびりくつろいでいるときに、てんやわんやなのだと想像します。
 ありがとうございますと感謝しつつ、旅の夜は更けてゆくのであります。

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