「自炊宿」って、泊まったことはありますか? ちゃんとした旅館なんですけど、朝夕の食事は出されず、宿泊客が調理室を借りて自炊する宿。湯治客が利用する、歴史ある温泉旅館などにみられる宿泊スタイルです。筆者はこれが意外と好きで、ときどき利用します。今回は宮城県の鳴子温泉郷にある自炊宿の温泉旅館「東五郎の湯 髙東旅館」をご紹介。これが格安で気楽、いい宿なのです。

鳴子温泉郷の川渡温泉

 髙東旅館は、奥州三名湯のひとつ鳴子温泉郷にあります。鳴子温泉郷は、鳴子温泉・東鳴子温泉・川渡(かわたび)温泉・中山平温泉・鬼首(おにこうべ)温泉の5つの温泉地の総称で、髙東旅館はこのうち最も歴史が古い川渡温泉にある宿。
 川渡温泉は江戸時代、脚気に効能があることから「かっけかわたび」と人気を集め大いに賑わったそうですが、今はとても静かな温泉地です。

髙東旅館

 これが髙東旅館(宮城県大崎市鳴子温泉字築沢23-1)。右手が本館で、左手が自炊棟に使われている別館。飾り気のない建物ですが、自炊宿はそれでいいんです。

髙東旅館

 館内は本館・別館ともに掃除が行き届き、清潔。スリッパも「ビシッ!」と揃えられ、気持ちいいぐらい。いい旅館じゃないですか。鳴子はこけしが有名ですから、本館ロビーにはたくさんのこけしが飾られていました。

髙東旅館

 こちらは別館の和室。筆者が宿泊した、自炊客用の部屋です。別館の部屋は全室南向き、昼間は木々の茂る中庭が眺められます。

 自炊宿というのは、長く湯治をするために宿泊料金はとにかく安く! というのがお決まりみたいなものですから、タオルや歯ブラシ、石鹸やシャンプーなどは基本的に用意されておらず、持参する必要があります。髙東旅館もそうです。
 でも、髙東旅館は設備が充実。壁掛けのテレビ、洗面台、やや大きめの2ドア冷蔵庫、ポットや湯飲み、浴衣が用意されています。
 おまけにWi-Fiも飛んでいます。これで1泊4,590円~(税込)。トイレが共同でも構いません。とにかく安く泊まれることが大事。自分は家族に留守番させてツーリングを楽しんでいる身なんですから、せめて宿泊費は安く済ませ、浮いたお金でお土産を奮発したい。そんな考えのツーリングライダーにとって、自炊宿はありがたい存在です。

髙東旅館

 宿泊費は安くとも、温泉は上等。高東旅館の浴槽を満たす湯は、源泉かけ流し、加温加水なしの含重曹芒硝-硫黄泉。疲れた身体にじわじわと染みてくる、いい温泉です。

メシ代も安く抑えられる

 食事つきの温泉旅館だと、豪華な夕食がいただけます。お造り、揚げ物、焼き物、煮物、酢の物……。でも、本当にそれ、食べたいですか? しかも結果的に、いいお値段になりますよ?
 自炊宿なら、その日の気分で、食べたいものが食べられます。地元のスーパーで食材を買い込んで、調理室を借りればいいんです。安く済ませたければ、安いものを買えばいい。
 旅先のスーパーって、その土地ならではの見慣れぬ食材なんかも売られていたりして、けっこう楽しいものです。

髙東旅館

 こちらは髙東旅館の別館の調理室。大小さまざまな鍋、食器類、電子レンジやトースターもあります。
 筆者はこういう場合、鍋料理を作ることが多いです。あれこれといろんな料理を作るのは面倒ですけど、鍋料理なら簡単。肉も野菜もバランスよく食べられるし、最後に茹でうどんでも投入すれば、お腹も満足。
 鍋料理だけじゃ飽きる、というのなら、お惣菜でも買ってくればいい。

髙東旅館

 鍋料理とお惣菜をつまみに、発泡酒や第3のビールで乾杯。
 話は本筋から飛びますが、ビールの税率を下げて第3のビールの税率は上げるって、ヒドイ話ですよね。企業努力を無駄にさせて、庶民のふところ事情を無視して、腹が立つったらありゃしません。
 話を戻します。自炊宿は、気楽でいいです。好きなものを好きにいただく。安く済ませられる。人目を気にせず、部屋でのんびり食べられる。
 しかも髙東旅館の場合、ごはんと温かい味噌汁だけはサービスで部屋まで持ってきてくれるんです。朝も夕も。
 朝なんか、ごはんと味噌汁があるんだったら、納豆や生卵だけ買っておけばいい。とてもラクです。
 というわけで自炊宿。川渡温泉の髙東旅館を例にご説明申し上げましたが、安くて気楽で、いいものです。みなさんも機会があれば、ぜひご利用を。

鳴子はもう錦秋の時期では!?

Z650RS

 今回のお話は2022年10月17日~20日の鳴子ツーリングをもとにお伝えしましたが、あのときはまだ紅葉には、ちょっと早かったです。
 10月下旬から11月上旬にかけてだったら、紅葉も見ごろなのではないでしょうか。
 上の画像は、県道63号・最上鬼首線。宮城・山形県境にそびえる禿岳(かむろだけ)や小柴山をバックに撮影。

鳴子峡

 こちらは東北屈指の紅葉の名所、鳴子峡。鉄橋の下は、深さ100mほどの大峡谷。鳴子の温泉街から国道47号線を西へ進んだ場所にあります。

潟沼

 これは、潟沼。鳴子温泉の南、ススキの穂が黄金色にたなびく山道を約3㎞ほど駆け上がると、鼻をつく硫黄の匂いの先に突如として現れます。
 周囲約1㎞、最大深度16mほどの潟沼は、鳴子火山の火口湖。湖底からは常に熱泉や水蒸気が湧出し、水面にはガスの小さな泡がポコポコと無数に浮かんでいました。

 紅葉にはまだ少し早かったけど、いいツーリングになりました。
 みなさんも紅葉狩りツーリング、楽しんでみてください。
 それではまた!

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