対前年比でプラス7.8%を達成


「今年上半期で、販売新記録を達成することができました!」

 2025年1〜6月の登録台数は3099台となり、対前年比でプラス7.8%を達成セールス好調であることを壇上で、報道陣を前に報告したのは、BMWモトラッドジャパンの大隅 武ジャネラルマネージャーです。

 BMW GROUP Tokyo Bayホール(東京都江東区)にて、7月16日に開かれたニューモデル『R1300 RT』および『R12 G/S』国内発表・商品説明会での冒頭にて発表されました。

BMWモトラッドジャパン・ジャネラルマネージャー大隅 武氏。

▲BMW Motorrad Japan 国内発表商品説明会/BMW GROUP Tokyo Bayホール(7月16日。BMW Motorrad Japan ジャネラルマネージャー大隅 武氏。

 こんにちは、青木タカオです。BMWモトラッドの勢いを感じていましたが、大隅氏の発表によって「やっぱりな」と合点がいきます。

 BMWモトラッドは2025年上半期に、ニューモデルや特別仕様車、テクニカルアップデートなど計11モデルを市場に投入しました。

BMWモトラッドジャパン・ジャネラルマネージャー大隅 武氏。

▲BMWモトラッドジャパン・ジャネラルマネージャーの大隅 武氏。

大隅氏はさらに続けます。

「非常にいま強く(新製品にて)攻勢をかけている」と言い、「さらに新製品の導入だけでなく、その他大小さまざまな活動をやってきました」と、大隅氏は胸を張ります。

「今年の1月から“STOCK LOCATOR”(ストック・ロケーター)という販売の手法を取り入れています」

 これはユーザーが、公式ウェブサイトにアクセスすることで、日本国内にあるBMWモトラッドの新車在庫をリアルタイムで確認し、希望に沿った一台をいつでも選ぶことができる新車在庫検索システムです。

 予約金をオンラインで支払うことで、一定期間車両をキープ(購入予約)することができ、選んだモデルは希望のディーラーにて購入することができます。大隅氏は次のように教えてくれました。

「限定モデルや人気車種・カラーはオーダーが集中し、入手困難になるケースがあります。複数のディーラーをまわって探すなど、時間も労力もかかっていましたが、STOCK LOCATORを導入することで、お客様自身がオンラインで国内新車在庫からタイムリーに希望の車両を探すことができるようになりました。注文確定後は国内新車在庫倉庫から新品の車両を整備して指定のディーラーに配車します。お客様が購入した車両は、ディーラー・ショールームにて受け取っていただきます」

 ディーラーも販売車両の在庫を過度に抱えることなく、店頭における試乗車の充実や、よりブランドを体感できる魅力的なショールームづくりに注力することが可能となるといったメリットがあると、大隅氏は言います。

R12Sはたった5日で完売!!

 海外で先行発表していた新型「R12S」を国内200台限定で発売。わずか5日で完売したことを大隅氏は明かしました。

国内200台限定のヘリテイジカフェレーサーBMW R12S。

▲国内200台限定のヘリテイジカフェレーサーBMW R12S。

『R12 nineT』をベースに、細部にまでこだわったワークマンシップで、クラシックとモダンが同居するヘリテイジカフェレーサーに仕立てられています。


 シルバーアルマイト仕上げのスポークホイールやアウターフォークをブラックアウトした倒立式フロントフォーク、ライトカウル、シングルシートカウルなど専用装備を数多く採用。


 足回りも強化され、ラジアルマウント4ピストン・モノブロックブレーキキャリパーやスチール製フレックスブレーキライン、310mmフローティングディスクがおごられています。

 空油冷ボクサーツインエンジンは、最高出力80kW(109ps)/7000rpm、最大トルク115Nm/6500rpmを発揮。車両本体価格は297万7000円です。

イメージソースになった往年のR90S。

▲R12Sのイメージソースになった往年のR90S。

 イメージソースになったのは、1970年代に活躍したレーシングマシン『R90S』。鮮やかなラヴァオレンジメタリックのペイントが施され、生まれながらのプレミアムモデルとなったことは言うまでもありません。

パリダカで伝説に

 BMWモトラッドジャパンのマーケティングマネージャーの中根知彦氏は、今回正式に発表する『R12 G/S』について解説してくれました。

BMW Motorrad Japanマーケティングマネージャーの中根知彦氏。

▲BMW Motorrad Japanマーケティングマネージャーの中根知彦氏。

「車名にある“/”(スラッシュ)は何なのか? このモデルを語る上で、たかがスラッシュ、されどスラッシュなのです」と、BMWモトラッドの歴史的に見ても見逃せない強いこだわりがあると、力を込めます。

 そしてさらに中根氏は、こう続けます。

「今やBMWモトラッドといえばビッグオフであり、“GS”が代表モデルと言っても過言ではないのですけれども、このオフロードへの道は一体どこから始まったのか、紐解いていきましょう」

「まず、1970年代に登場した/5および/6シリーズが注目を浴びまして、特にオフロード走行が可能なエンデューロのバイクが人気を博しました」

1976年ヤマハXT500

▲ヤマハ XT500(1976年)

「1976年のヤマハXT500はこの新しいカテゴリーの代表的なモデルなんですけど、世の中的にこうしたエンデューロというジャンルが出てきたのが、この1970年代中頃です」

「1977年にBMWのラズロ・ペレスがGS800プロトタイプを製作しまして、翌78年にドイツ・オフロード選手権に750cc以上のクラスが導入され、BMWが再参入いたしました」

「このプロトタイプは124kgで優れた性能を発揮しまして、ラズロ・ペレスが準優勝を果たします。この成功がBMWのオフロード復帰の基盤となり、GS800プロトタイプが進化してGS80になっていきます」

「そして1979年に、ドイツ・オフロード選手権とシックスデイズ・レースでGS80が金メダルを獲得するのでした」

「1980年9月に伝説と言いますか、待望のR 80G/Sが登場します。このモデルがツアラーエンデューロとビッグエンデューロの基盤を築いていきます」

「GSの祖と言えるもので、世界初のマルチシリンダー・エンデューロ。モノレバー設計によって、リアホイールの迅速な取り外しと高いシャシー剛性を実現しました」

「Gはドイツ語でゲレンデ(オフロード)、Sはシュトラッセ(ストリート)を意味しておりまして、R 80G/Sはオンロードとオフロードの性能を融合したモデルということで、このネーミングがつけられているのです」

「このモデルを機に、1979年から開催されているパリ・ダカールラリー(パリダカ)に参戦していき、このG/Sのヒストリーがどんどんレジェンドになっていきます」


 パリダカでのBMWの活躍は、中根氏がいう通りファンの間では伝説的なもので、1981年の第3回大会にてユベール・オリオール選手が制すると、1984年にガストン・ライエがファクトリーチームに加入し、84年と85年に総合優勝を果たし、83年のオリオールと合わせてBMWの3連覇を達成します。

 中根氏は「BMWモトラッドのダカール物語は85年に一旦終了しますが、ここまでの大活躍、取り組みがGSのイメージに決定的な影響を与えました」と、確信を持っています。

ゲレンデ・シュポルトへ進化

 中根氏の解説はさらに続き、ボクは一語一句聞き逃すまいと耳を傾けました。


「1987年に『R 80GS』と『R 100GS』が登場します。パラレバーと呼ばれるダブルジョイントのスイングアームが搭載されましたし、トルクサポート、大容量タンク、今もBMWが特許を持つクロススポークホイールを装備。このセグメントで頭ひとつ抜け出てきたわけでございます」

「このモデルからスラッシュがとれまして、意味としてはゲレンデ・シュポルト、すなわちオフロード・スポーツとなりました」

「それまでは山も平地も、どっちも行けるよというマルチパーパスのモデルでしたが、オフロードもガンガン行けるよ、スポーツできるよというモデルに変わっていったのが、このモデルからだったのです」

「その後、『R 80GS』と『R 100GS』を基にいろいろなバリエーションモデルが出ますが、パリダカエディションは35Lの大容量燃料タンクやプロテクションバーを装備しまして、これがGSアドベンチャーの前身となります」

「1994年には『R 1100GS』が登場し、4バルブボクサーエンジンへ進化。このモデルからABSを搭載し、新燃料噴射システム(FI)を採用しました」

「1996年には特別限定モデルの『R 80GS ベーシック』が発売され、これにて2バルブエンジンと決別することに至ります」

たかがスラッシュ、されどスラッシュ

 
「今回の『R12 G/S』ですけれども、GとSの間にあえてスラッシュがついているのは、すなわちGとSがスラッシュで区切られていた時代へのオマージュであり、ですから、たかがスラッシュ、されどスラッシュなのです」

新登場のBMW R12 G/S。

▲新登場のBMW R12 G/S。

 中根氏は最後に「このスラッシュを見るたびにこの話を思い出してくださいね」と付け加えました。ボクはたいへん興味深く聞くことができました。皆さんはいかがでしょうか? 今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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